雨あがる |
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■公開:2000年 ■制作:「雨あがる」製作委員会 ■制作:原正人、黒澤久雄 ■監督:小泉堯史 ■脚本:黒澤明 ■原作:山本周五郎 ■撮影:上田正治(撮影協力:斎藤孝雄) ■音楽:佐藤勝 ■編集:阿賀英登 ■美術:村木与四郎 ■照明:佐野武治 ■録音:紅谷愃一 ■主演:寺尾聰 ■寸評:血飛沫シャワー! ネタバレあります。 |
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黒澤明の遺伝子というよりもむしろ三船敏郎のDNAに驚愕する映画。 三沢伊兵衛・寺尾聰は大雨で足止めをくらった安宿で、やさぐれた夜鷹のおきん・原田美枝子と説教節のジジイ・松村達雄がささいなことで争いをはじめたのを見かね、道場で賭試合をして金を工面し、酒と肴を調達して一夜の宴を開いた。三沢の妻、たよ・宮崎美子は武士にあるまじき夫の行為にいささか失望する。 ある日、伊兵衛は藩の若侍たちの喧嘩をいさめたところを藩主、和泉守重明・三船史郎に目撃され、藩の剣術指南役にスカウトされる。ところが伊兵衛はそのための大切な御前試合で藩士をばかすかやっつけてしまい、それを見て少々面白くなかった重明は自ら槍を持ち出して勝負するのだが、伊兵衛はついうっかり重明を池に突き落としてしまう。素直に相手を思いやる伊兵衛の言葉をもらった重明は負けん気の強さ故にさらに傷ついてしまった。 伊兵衛が自分の要領の悪さにつくづくガックリしていた試合の帰路、先日の賭試合に負けた道場の連中が逆恨みをして伊兵衛を襲ってきた。よそ者に指南役を取られるかもしれないというジェラシーもあいまってムキになっていた彼らは伊兵衛の強さに動揺したのか同士討ちをしてしまう有様。 雨が上がり川の水位が下がった。安宿にいた人々は皆、伊兵衛の心遣いに深く感謝して旅立って行った。出立の準備をするたよと伊兵衛のところへ藩の重臣、喜兵衛・井川比佐志と近習、権之丞・吉岡秀隆がやって来た。賭試合に負けた挙句に恥の上塗りをしたヘタレどもが腹いせにチクったのであった。喜兵衛は「武士のくせに金のために賭試合をするなんてサイテー」という理由で伊兵衛の指南役就任がパーになったと告げた。しょんぼりしていた伊兵衛に代わり、たよは二人に向かってこう言った。「何をやったかということよりも、何のためにやったのか。それを確かめもしないお前らのほうがサイテーよ」と。圧倒された二人はあっけにとられて帰って行った。 伊兵衛とたよは晴天の下、別れを惜しむ渡し人足たちと談笑しながら出発した。権之丞は重明にたよの言葉をそのまま伝えた。やさしい奥方・壇ふみからも諭されていた重明は二人を呼び戻すべく、すぐさま馬を駆って後を追いかけた。 無欲恬淡の人が最後に幸せになる話は山本周五郎モノのいいところである。特に、若者の素直さが炸裂する権之丞がいい。たよに一発食らって去る時の背中の具合がなんとも良いのだ。若者のたゆんだ背中のエネルギーが短気な殿様の心をも動かしたのだから。喜兵衛もガチガチに職能的な人物ではなく実は情のある善人だったわけだし。 いいなあっ、こういう話、救われるよなあ。 それと寺尾聰の殺陣。居合いの本物を筆者は大学の学園祭で至近距離で目撃(殺陣同士会っつーのがある大学なので)したことがあるけど、本当にあんな感じ。必要最小限の動きで自然、さあいくぞ!ってな風情は全然なくてまさに伊兵衛の「ひょい」という拍子抜けしそうなくらいの感じ。ニセモノだけどホンモノ以上、それが映画。 黒澤監督へのオマージュの一言で片付けちゃッちゃあモッタイナイ。その具体的なオマージュ加減は、正面切ったクスグリのレベルから、細かすぎて伝わらないちょっといい話までたくさん見つかるのであるが、ここではやはり貞淑な妻、たよのカウンターパンチ的な発言をあげておこう。普段そんなことを言いそうもない名もなき人のここ一発の決め台詞。他の事例として「生きる」の左卜全とか、これでもかなり細かいような気もするが。とことん反体制だった黒澤映画の地脈をふつふつと感じた瞬間である。 しかしながらの三船史郎は確信犯としか言いようのないくらいお父さん風の怒鳴り声である。いや、シルエットも似てる、特に横顔ね、反則なくらい。オールドタイマーズはアレだけで涙ちょちょぎれるものを感じるのではないか?んじゃ宮崎美子はやっぱ、その、原節子とか香川京子とかの黒澤ミューズの伝承なわけか?あ、こっちは異論が出そうかも。 (2005年12月31日 ) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2005-12-31