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赤穂浪士(1961)


■年度:1961年

■制作:東映

■制作:大川博

■監督:松田定次

■脚本:小国英雄

■原作:大佛次郎

■撮影:川崎新太郎

■音楽:富永三郎

■美術:川島泰三

■録音:東城絹児郎

■照明:山根秀一

■特撮:

■主演:片岡千恵蔵

□トピックス:(大)東映十周年記念超大作!DVDに当時の予告編収録、製作発表のシーンに素顔のスタア総出演。

ネタバレあります。


 本格時代劇というキャッチコピーをつけたテレビドラマを見るたびに、東映のオールスタア時代劇映画への郷愁がかきたてられるという人はきっと多い。ほとんどは年寄りだろうが、筆者もその一人。「昔はよかった」なんて思い出だけじゃなく、こうしてフィルムが残っていて目の当たりにできるからリアルだ。

 ジャ○ーズ系の大河ドラマを時代劇だと思って見ているから落胆する。アレはヅラを被っただけの現代劇なのである、しかもカレッジ物とか。いや、すでにバラエティーの段階にまで進化中と見た。「見た」って威張れるほどのものじゃないとは思うが。

 「映画俳優には技術がなくてもなれるが、舞台俳優には技術が必要だ」と某俳優が弟子に説教するのを聞いたことがある。しかしながら映画であっても様式美というのは、型を残してこそ型破りである。本作品のように型を守れる芸のある映画俳優がこれだけ揃うと奇跡としか言いようがない、しかもこういう映画がばかすか作られていた時代がかつて日本にあったという事実を忘れちゃいかん。

 そして当時はこういうリアリズムでない芝居的な時代劇映画は量産映画というポジションだったわけで、時を経てその価値が再認識されるというのも皮肉な話。

 昔の時代劇を見ていて感じるのは台詞が必要最小限だということ。考えていることを全部台詞にするのが昨今のドラマの風潮だが、それって学芸会って言うんだよ。本作品のように感情を顔や芝居に出すのは今ではクサミなのかもしれないが、いいんだよ絵になってんだから。しかし、この頃の市川右太衛門、今の北大路欣也に激似。でもお父さんのほうが上品。

 綺麗で可愛い浅野内匠頭・大川橋蔵は盟友の脇坂淡路守・中村錦之助に「柳沢出羽守・柳永二郎や吉良上野介・月形龍之介なんて野良犬みたいなヤツに噛み付かれないようにエサをあげときなさい」と助言されるが生来の一本気が災いし江戸城で刃傷に及ぶ。

 ストーリィは有名すぎるから割愛。いろんなところに重点を置いて描かれる忠臣蔵だが、本作品は重役俳優二名を登用しているのでもっぱら偉い人たちの大時代な芝居に集中傾向。

 いつもは悪役が多い山形勲(片岡源五右衛門)や進藤英太郎(多門伝八郎)が善玉にまわって見せ場を作る。普段は憎々しい面構えや押し出しが、味方につければ頼もしい、役柄に厚みを加えて素晴らしい。こういう大人の男の俳優が今の日本の芸能界においては絶滅状態なのが昭和の二枚目フェチの筆者としては悲しい。よく考えると二人とも当時、四十代、六十台、しっかりしろよ日本の男優!ふんっ、だ!

 大川橋蔵の浅野内匠頭はちょっと女形の癖が抜け切ってないのだが、途方も無い美男顔なためたたずまいからして同情ひきまくる。瑶泉院・大川恵子、おりく・花柳小菊の美人画から抜け出たような風情も素晴らしい。時代劇映画だけは科学と技術の進歩とは相容れないものらしい。

 大石内蔵助・片岡千恵蔵とは旧知の仲である干坂兵部・市川右太衛門は対立関係になることを嘆くが歳若い上杉綱憲・里見浩太朗の家臣として職務をまっとうする決意。幼い(精神的に、だけどさ)当主を守りきれなかった男と、守りきった男、二人の男の葛藤が本作品のメイン。ちなみに千坂兵部は病身なのであまり活躍しない、もっぱら解説役。

 ストーリィ上は敵役だが剣豪俳優の大活躍も「忠臣蔵」モノでは見どころの一つ。清水一角・近衛十四郎と小林平八郎・戸上城太郎、ニヒルがウリの二枚目キャラ、堀田隼人・大友柳太朗との対決→実力認知→仲間へ、というのもプロフェッショナル同士の凄みが漂っていてシビレる。チャンバラってさあ、ちゃんとやるとカッコいいんだぜ、ホント。あ、あと、勉強不足丸出しだけど山形勲の殺陣は凄い!本当に強そうだ!近衛さんとか大友さんとか戸上さん(なぜか「さん」付けちゃう気分)のフィルムはまださいわいにに残ってるんだから必死でマネして覚えよう!これから時代劇やる人は。

 赤穂ファンの江戸っ子、伝吉・中村賀津雄はちょっとお兄さん風、風って?似てるねやっぱ、兄弟だからねえ。いつもは介錯シーンで活躍する南方英二(ちゃんばらトリオ)は台詞ありの役、見てみ。錦之助、橋蔵とくれば千代之介、堀部安兵衛・東千代之介でちゃんと活躍。

2005年06月12日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2005-06-12