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嗤う伊右衛門


■年度:2004年

■制作:「嗤う伊右衛門」製作委員会(角川書店、ジャパン・デジタル・コンテンツ、他)、東宝(配給)

■制作:江川信也(企画)、中川好久、道祖土健、椿宜和、前田茂司

■協力:松竹京都映画

■監督:蜷川幸雄

■脚本:筒井ともみ

■原作:京極夏彦

■撮影:藤石修

■音楽:宇崎竜童

■美術:中澤克巳

■録音:中村淳

■照明:渡辺三雄

■特撮:

■主演:唐沢寿明

□トピックス:

ネタバレあります。


 野良犬にかまれるのと、強姦されるのは大違いであるがこういうのが慰めになると誰が思いついたのだろうか?昔からその等価交換システムには異論があるのだが、ま、それはさておき。

 ひきこもりをしている伊右衛門・唐沢寿明は実の父親の介錯を務めたことがトラウマになっていて笑ったことがない。疱瘡の痕が醜悪な民谷家の一人娘である岩・小雪は男勝りの性格。御行の又一・香川照之の紹介で岩の家に婿養子に入った伊右衛門に生活力と精力が足りないのを気の強い岩は気に入らない。筆頭与力の伊藤喜兵衛・椎名桔平はかつて岩に気があった。伊藤は岩をそそのかし伊右衛門と離別させ、自分の子供をはらんだ梅・松尾玲央を伊右衛門の後妻にする。

 岩は誠実で家庭的な伊右衛門が好きだった。民谷の家を守るために、そして伊右衛門のために身を引いた岩だったが直助・池内博之、乞食坊主の宅悦・六平直政から真相を聞かされた岩はぶちきれてしまい宅悦と直助の頭をカチ割って家を飛び出した。

 メンツを潰され、女房を奪われ、子供を殺され、後妻までクルクルパーにされた伊右衛門は、返り討ちに遭った直助の代りに伊藤を斬った。そして民谷の家は絶えた。確かに今、伊右衛門と岩は幸せそうに笑っている、意地に囚われて何かを見失っている現代を嗤いながら。

 ちなみに本作品においては、伊右衛門よりもお岩さんのほうが長身である。だからかもしれないが、どうもこの稀代の色悪キャラクターが「イイ人」に見えてしまう。そういうのって役得っていうんだろうか?

 過去、一体いくつの四谷怪談映画が作られたのか。原典と先達の四谷怪談から「祟り」をすっぱりと取り去り、小道具とキャラクターと筋立てを頂いて、気持ちのすれ違いが徐々にエスカレートし、人の心の奥に棲む魔物がついに火を噴くまで。前半の静的な画面がクライマックスでドロドロになるのは舞台構成の都合上、作り手の身に染み付いた常道か。

 とりあえず片っ端から女が発狂しまくる映画である。男を取られたと言っては狂い、子供に身体を売るところを見られたと言っては狂い(あげくに自殺)、狂った結果にガキを殺して死体遺棄。きっとモテない野郎が作ったにちがいあるまい、言いがかりだけど。

 時代考証もめちゃくちゃな時代劇が氾濫している今日この頃、かつての熟練された時代劇のエロキューションは木っ端微塵。映像としてのダイナミズムが無く、語りもなかったが、俳優にそれぞれ見せ場を作って個性を生かしたところは見るほうが混乱しないので親切だ。

 台詞で絵をつないでいく演劇的な映画だったと思うが、数少ない映画的な何がしはエロ爆弾のお梅が乳首を斬られてその傷口から母乳が噴出するシーンくらいなもんか。あと、腹圧で飛び出す腸とか。エログロでウケをとるのは石井輝男の十八番。石井監督で四谷怪談っつーのも見てみたい、きっと胴体ちぎれたりとかしそうだ、そういうところ見る映画じゃないんだが。

2005年05月15日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2005-05-15