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押切 The strange story


■年度:2000年

■制作:オメガ・コミット

■製作:浜豊行、上松道夫

■監督:佐藤善木

■脚本:佐藤善木

■原作:伊藤潤二

■撮影:高瀬比呂志

■音楽:ZUNTATA

■美術:室岡秀信

■録音:本田孜

■照明:和栗一彦

■編集:斉藤和彦

■主演:徳山秀典

□一言批評:

ネタバレあります。


 高校生の押切トオル・徳山秀典の悪夢に登場するガスマスクのちびっ子殺人鬼。ある日、トオルは祖父・天本英世と一緒に暮らしていた、古い洋館へ向かう。

 おどろおどろしい導入部、NHKの少年ドラマシリーズ(「タイムトラベラー」「つぶやき岩の秘密」等)のような、っていうかその当時ガキだった製作者がおそらくはトラウマになっているであろう深夜ドラマのようなテイストが満載。

 トオルが学校へ行ってみると、クラスメートたちは彼を避けるだけでなく、トオルのことを殺気だって罵る輩までいる。素敵な恋人の未央・初音映莉子の態度も明らかにヘン。家に帰れば両親の視線が氷のように冷たい。追いつめられたトオルが見たものは夢の中に出てきた殺人鬼が大人になった姿であった。

 まっとうなホラー映画(テレビか)である。

 賢そうな人が超常現象に翻弄されるのは普通だが、あまりモノを考えたり感傷とは縁が薄いように見える、いわば鈍感な主人公が真剣に悩む姿ってわりと好きだったりする。ヒロインの初音映莉子は、筆者の中では「ラビリンス」でも「うずまき」の人でもなく、永谷園のCMで「お麩食べちゃおう〜」と緩く語っていた高校生の姿で印象が止まってしまっているので、本作品のように多少なりともアグレッシヴなところで活躍してくれるとなんとなく違和感が。

 「悪魔のいけにえ」「13日の金曜日」「スクリーム」そして「電送人間(はともかく)」に至るまで(順不同もいいところですが)殺人鬼がマスクをつけて、つまりは無表情に、無感情に、殺戮の限りを尽くす。何を考えてるんだかさっぱりわからない屈強な敵に命を狙われるというのは万人に共感を得るシチュエーション。

 どっかで見たことがある?これも一つの「リフレインの美学」ということで。

 先の「うずまき」が人を驚かせるホラー映画だとすれば、「押切」は人を怖がらせるホラー映画である。突飛な日常、ウルトラセブンの「あなたはだあれ?」のような不条理感。死に様で笑いをとる昨今のオカルト映画の手法も素直に踏襲。

 天本英世を「あやしい研究をしているおもちゃ発明家、ではなく科学者役」として引っ張り出しているのは飛び道具のような卑怯さも感じるが、オールドタイマーズにはそれだけでも見る価値があり。っていうかトオルは実はおじいさんに改造された何某にしたほうがよかったんじゃないのか?どうせなら。

 コメディとしてもう一押しするならば(する必要も無かろうが)、主人公がヒロインをスプラッシュマウンテンで仕留めていたら相当に面白かったと思うんだけど、どうだろうか?

2005年03月21日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2005-03-27