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ドッペルゲンガー


■年度:2003年

■制作:「ドッペルゲンガー」製作委員会

■企画:奥田誠治、中嶋哲也、泉英次、堀込祐輔

■監督:黒沢清

■脚本:黒沢清、吉澤健

■原作:

■撮影:水口智之

■音楽:林祐介

■美術:新田隆之

■録音:郡弘道

■照明:豊見山明長

■編集:大永昌弘

■主演:役所広司

□一言批評:あとは野となれ山となれ

ネタバレあります。


 映画は所詮つくりごとですから概ね喜劇的なものでありますが、本作品はまさに「ホラーの仮面をかぶった人情喜劇」だと申せましょう。ルイ・マルの「影を殺した男(世にも怪奇な物語)」におけるアラン・ドロンのビジュアル化された二重人格は、分身を殺したと思ったら本体が死んだ(あるいは最初から逆であった)わけですが、本来いないはずの分身が本体と同様にイキイキと生きちゃったらどうなるか?

 おまけにこのドッペル君は他のドッペル君を殺害したりするのです。一人称で描かれる(本体にしか見えないとか)のではなくちゃんと独立した個人でもあったりするのです。本体が苦悩すればするほどドッペル君の色と欲はエスカレートします。

 自殺した弟のドッペルゲンガー(分身)を見てしまった由佳・永作博美はそのドッペルゲンガーと同居しています。同じ頃、人工人体の開発者である早崎・役所広司はノイローゼ状態になっていました。研究が全然うまくいかないからです。その早崎の前にもドッペルゲンガー・役所広司@2役(当たり前ですが)が現れます。早崎@ドッペルは、根が真面目な早崎@本体とは違って奔放で不道徳でお気楽な奴です。会社をクビになり追いつめられた早崎@本体のために早崎@ドッペルは強盗までして資金を調達してくれたり、分身を見ても「大して驚かない適当な馬鹿(評:早崎@ドッペル)」の元工員、君島・ユースケ・サンタマリアを助手としてリクルートしてきてくれたり、と大変に協力的です。

 早崎@本体は自分の研究を商品化するために早崎@ドッペルにライバル企業の情報を盗んでくるよう依頼するまでになります。弟@ドッペルを早崎@ドッペルに始末してもらった由佳も早崎@本体の研究に協力を申し出ます。新潟にある企業に完成した人工人体を売り込むことにした早崎@本体と君島は、早崎@ドッペルをタコ殴りにして殺してしまいます。

 人工人体を追ってきた早崎@本体の元同僚の村上・柄本明、人工人体を横取りしようとした君島、メディコム産業の部長・ダンカン、色と欲とにまみれた人たちに最後っ屁をくらわせた早崎と由佳の目の前で人工人体は崖からダイブするのでした。

 分身と本体を徐々に接近させ接触させ、そしてまた分離させ・・・映像の妙手と役所のハッタリの効いた演技が奏功ですが嫌いな人には単なる雑な映画に見えるかもしれません。まず、早崎がとうてい開発者とは思われないからです。自分の研究成果に対する愛着も責任も相当にないがしろであり「とってつけた」感が最後まで拭えません。映画の主題じゃないから、と言ってしまえばそれまでなので観客の度量の広さが試される映画であるとも申せましょう。

 「もうどうでもいいや」の一言でケリをつけてしまう強引さも露骨でありますが、作り手は「唐突な死、あるいは突拍子もない日常」という持ち芸をパロディ化する域にまで高めているようです。

 映画「レイダース」のパロディのおまけつき。そして「馬鹿は死ななきゃなおらない」という教訓つき。

2005年02月19日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2005-02-26