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海底大戦争


■年度:1966年

■制作:東映

■企画:亀田耕司、吉野誠一

■監督:佐藤肇

■脚本:大津皓一

■原案:福島正実

■撮影:下村和夫

■音楽:菊池俊輔

■美術:江野慎一

■録音:岩田広一

■照明:森沢淑明

■助監:

■特撮:矢島信男

■水中撮影:館石昭

■主演:フランツ・グルーバー(フランツ・グルーベル)

□トピックス:「素晴らしい頭脳だ」(千葉ちゃんの脳をスキャンしたムーア博士の台詞)

ネタバレあります。


 本作品はアメリカのテレフィーチャー(テレビで先行放送される劇場公開用映画)用に制作されたそうです。輸出を意識しているので出演者のほとんどは当時の在日外国人タレント、日本人は数名(半漁人のカブリモノは除きます)しか出演しておらず、日本公開用は吹替えです。

 そんなインターナショナルな映画に主演をしているのは、後年、ハリウッド進出を果たした千葉真一ですが、この映画ではペギー・ニールとともに狂言回し的な役どころで、どちらかというと、米軍の熱血将校を演じたフランツ・グルーバーのほうがヒーローっぽく見えます。外国人受けするのはどちらかというと、英語が喋れるフランツ・グルーバーなので。

 米国海軍の最新鋭潜水艦による演習実験の最中、深海にもかかわらずカメラ前を人間が横切ったのを目撃した新聞記者の安部・千葉真一は、担当将校のブラウン中佐・フランツ・グルーバー(「ウルトラセブン」のボガード参謀)を問い詰めますが「軍事機密」をタテにかわされてしまいます。あきらめの悪い安部は金髪美人カメラマンのジェニー・ペギー・ニールとともに海底に潜ります。するとジェニーのムチムチのお尻に(なぜかキャメラがどーんとアップ)吸い寄せられるように、全身銀色のサイボーグ半漁人が現れました。驚いたジェニーはプロ根性でシャッターを切りますがカメラを叩き落されてしまいます。

 安部とジェニーは世界征服をたくらむマッドサイエンティストのムーア博士・エリック・ニールセンに拉致され、海底基地で人間改造の実験を見学します。人間の身体が溶けてグズグズになった皮膚に粘っこいラバーがプツップツッと(ここエグイっすよ!)泡のように沸いてきてその上にウロコが被さり、あっというまにサイボーグ半漁人のできあがり。人間だった頃の意志も記憶も取っ払われて、ダイヤルひとつで自由自在に操られる半漁人。ムーア博士はこの人体改造を推し進めるべく、高名な科学者のハワード教授・アンドリュー・ヒューズを誘拐します。

 今ではムーア博士の相棒に成り下がった、かつてハワード教授とも親交のあったハイム博士・マイク・ダニーンが安部とジェニーを人質にハワード教授に協力を迫りますが、教授はこれを拒否。するとペギーと安部は半漁人製造機に放り込まれてしまいます。「ノー!ノー!あべー!」ととにかくうるさいジェニー、なすすべのない安部の目の前でジェニーは半漁人に改造され始めます。

 その頃、行方不明になった同国人一名と同盟国の民間人二名を救出すべく海底を捜索していた米軍の潜水艦が海底基地に迫っていました。音波探知機に気取られぬよう、ムーア博士の指示で活動を停止するサイボーグたち。しかし優秀な米国海軍は海底基地をついに発見します。徐々に半漁人化していく安部とジェニー、溶け始めた皮膚(いや、もう、マジで気色悪いです)を見て絶叫する二人。

 米国潜水艦の艦長・ブラウン・ガンサーはこともあろうに海底基地の破壊を決断、強力なミサイルの使用を命じます。これに対し、教授と安部とジェニーの安否を気遣うブラウン中佐が猛抗議、軍法会議も辞さない熱血ブラウンが破壊力の弱いミサイルへと勝手に変更してしまいます。命中したミサイルの衝撃でコントロールを失ったサイボーグたちがムーア博士の助手・三重街恒二、ハイム博士らを次々に襲撃。

 皆が止めるのも聞かず身を挺して三人を救おうとするブラウン中佐、かっこいいぞ!自爆装置が作動し始めた基地内でムーア博士と助手・室田日出男を倒した三人はからくも脱出に成功、基地は木っ端微塵になりました。半漁人化が進行していた安部とジェニーは教授の手によってすっかり元通り。命の恩人である安部や教授をほったらかして「すごいスクープが取れたわ!」と仲間に電話して大喜びのジェニー嬢なのでした。

 あっぱれジェニー嬢!化け物に襲われてもカメラを放しませんでした(いや、落っことしたんですけど)。おかげで、寄り目の半漁人の存在が知られたのですから世界征服阻止の功労者の一人です。

 改造人間を戦闘員にして世界征服をたくらむというのは「仮面ライダー」におけるショッカーの戦略ですが、よく考えるとそんな面倒くさいことをしているヒマがあったらもっと効率的なやり方がありそうな気がします。第一、改造人間たちは確かに海の底でも生きていけますし、多少はタフですが頭も悪いし、ピストルでわりと簡単に倒されてしまいます。やはりダイヤル一丁でいろんなコントロールをしようという発想に無理があるのでしょう。

 本作品の営業上の主役は千葉真一のはずですが、二枚目で頭脳明晰、正義感に溢れ、融通が利かず、自己犠牲も厭わないという特撮ヒーローのスペックをほぼ備えているのはTVアクションドラマ「キイハンター」で外人悪役のボスなどをよくやっていたフランツ・グルーバー(「ガメラ対大魔獣ジャイガー」ではやさしいお父さんを日本語で熱演)でした。外人タレントに囲まれてオーヴァーアクションになっている千葉真一がやや間抜けに見えてしまうのがさらに気の毒でしたが、輸出戦略に則ったものであれば致し方なしというところでしょうか。

 狂気の科学者、ムーア博士の助手を演じている三重街恒二、室田日出男が「ジャイアントロボ」でレッドコブラとブラックダイアを演じるのはこの映画よりも後です。

2005年01月25日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2005-01-30