悪党 |
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■年度:1965年 ■制作:近代映画協会 ■制作:絲屋寿雄、能登節雄、湊保、桑原一雄 ■監督:新藤兼人 ■脚本:新藤兼人 ■原作:谷崎潤一郎「顔世」 ■撮影:黒田清巳 ■音楽:林光 ■美術:丸茂孝 ■録音:大橋鉄矢 ■照明:岡本健一 ■助監: ■特撮: ■主演:小沢栄太郎 □トピックス: ネタバレあります。 |
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南北朝時代、足利尊氏の執事として成り上がった高師直・小沢栄太郎は金と権力には恵まれていましたが、品格とかそういうものには全然無縁のスケベで下衆でハゲでブサイクな男でしたので当然ですが女にはさっぱりモテません。そこにつけこんで甘い汁を吸おうとした侍従・乙羽信子は、師直の部下の塩冶判官・木村功の妻の顔世・岸田今日子が絶世の美女だと師直に囁きます。女日照り(推測)の師直は話を聞いただけでいても立ってもいられなくなり、こともあろうに顔世が入力中の湯殿をノゾキ見してその顔と身体にぞっこん参ってしまいます。 何がなんでも顔世をゲットしたいと思った師直は「ルックスがダメダメなら知性で勝負!」と兼好法師・宇野重吉に頼んで恋文を代筆させるという「シラノ・ド・ベルジュラック作戦」を敢行しますが、顔世はラブレターを見もせずに突っ返します。ここで素直にあきらめるような淡白な性格だったら師直の今の立場はありませんから、大方の予想通りラブレター作戦を熱心に継続します。 師直のストーカー行為に困り果てた宗村・殿山泰司と判官の弟の六郎・加地健太郎は師直からのメッセンジャー役を務める侍従を家来・大木正司に命じて連れてこさせて、なんとか師直の片思いをあきらめさせようとします。血の気の多い六郎は高ビーな侍従の態度にキレてしまいますが、それを諌めたのは判官でした。 しかたなく顔世は返事を書いて侍従に預けました。侍従は師直に学が無いのを利用して「顔世様もラブラブよ!」といい加減な報告をします。モテない野郎が疑り深い性格なのは時代を問わずだったので、兼好法師に検証してもらおうとしますがラブレターにケチをつけたためへそを曲げた兼好法師は協力してくれません。 困った師直は、インテリ(かつ美男子)の次郎左衛門・高橋幸治に返事の手紙の内容を解説してもらったところ「人妻なんかに惚れるんじゃないよ!このアンポンタン!」と書いてあることをはっきり言われてしまいます。師直は桃井播磨守・森幹太を呼びつけて判官に出雲へ遠征するように命じさせます。亭主の留守中に顔世をモノにしようと言うわけですね、ったく懲りない野郎です。 師直の魂胆があからさまだったので顔世は判官に同行します。嫉妬に狂った師直は判官に謀反の濡れ衣を着せ、幕府をだまして追っ手を差し向け、顔世を強奪しようとします。命運つきた判官は顔世と最後の別れをして討ち死に、顔世は自害をします。師直の目の前に差し出された顔世の生首を見た侍従は「人の魂は何者にも奪えない」と叫びます。愕然とする師直の目には顔世の首が自分をあざ笑ったかのように見えたのでした。 映画の前半は師直の傍若無人な悪党のしたたかさやしぶとさが滑稽で面白かったのですが、後半は悪党に引き裂かれる美男美女の純愛物語になってしまい、映画の背骨がズレてしまったような印象ですが、時代考証によく配慮された時代劇の設えに見るべきものがありました。 仮名手本忠臣蔵の元のほうは全然知らなかったので大変に勉強にもなりました。 さてこの映画で一番の悪党は誰だったのでしょうか?中世の倫理観を無視してみると、男社会の話でありますが、生来愚直な男という生き物はやることは粗野でも所詮は根っからの悪党にはなれないものであります。女に迷って赤っ恥をかいた高師直はどうみても悪党には見えません。むしろ自らを辱めることを徹底的に固辞して亭主もろとも家まで潰した顔世のほうが悪党というか悪女であったと言えるのかも。そして狂言回しの役どころでありながら、最後に自ら犠牲にならない範囲で改心した侍女こそが結果的に一番の悪党だったような気がします。 (2005年01月15日 ) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2005-01-16