「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


姿なき一〇八部隊


■公開:1956年

■製作:大映

■製作:望月利雄

■監督:佐藤武

■脚本:八木隆一郎、近江浩一、須崎勝弥、小林太平、長谷川公之

■原作:棟田博

■撮影:古泉勝男

■音楽:富永三郎

■美術:富樫辰春

■主演:笠智衆

■トピックス:八木沢敏(後:北城寿太郎)の若い頃ってちょっとだけ三船敏郎に似てるかも。

ネタバレあります。


  多チャンネル時代の到来により、テレビ放送局の古い日本映画の発掘(爆)にはめざましいものがあります。で、たまにはこんなテレビ向きの小さな、やさしい映画に出くわしたりするのであなどれませんな、CS放送は。

 真夜中の東京駅にサイパンで玉砕した将校さんや兵隊さんたちを乗せた幽霊列車がやって来ます。たった一晩限りのことですが、東京に身寄りのある者たちにとっては残してきた家族や恋人や知り合いがどうなったのか知れるわけですから、喜び半分の不安半分で夜の街へ散っていきます。

 隊を率いてた秋吉少将・笠智衆は、まず宮城へ行って玉砕のお詫びをします。そこへ警官に追われた男が駆け込んできます。なんとその男は自分の息子・和田孝でした。一旦は逮捕されますが逃亡しようとして息子は父親の目前で警官に射殺されてしまいます。幽霊になって会話が可能となった息子は、終戦と同時に近所から玉砕の責任を問われ、実家に投石され、家族も離散し、自分はグレてしまい、自動車強盗をして人を殺したのだと告白します。

 二枚目の那須中尉・中山昭二は、山でケガをさせてしまった恋人・矢島ひろ子からもらった最後の手紙で「すっかり元気になった」と思っていたのですが、実は恋人はケガがもとで足が不自由になっていました。それでも那須のことを忘れずに、病弱な那須の母親を支えて懸命に生きていました。

 風采の上がらない志水・藤原釜足はすっげー若くて美人の新妻・伏見和子を残して出征したので、どーせ他の男とくっついたんだろうとあきらめ、それでも一目逢いたいので、みなしごの町田一等兵・福岡正剛に実家までついてきてもらいます。新妻は二人の子供をかかえて内職をしながら、再婚もせずに暮らしていました。息子はお父さんの後を継いで列車の整備士になっていました。娘は片親なので就職が決まらないと、泣いてしまいます。志水は申し訳なくて、去りがたい思いです。

 新聞記者として従軍していた能勢・八木沢敏(北城寿太郎)は美人の奥さん・清水谷薫と一人娘を残して死んだのですが、住んでいたところが焼けちゃってたので勤務先へ行きます。元同僚で今は出世した松木・花布辰男は図々しくて、しょーもない男で奥さんから嫌われていたのですが、その松木が奥さんの再婚相手と知り能勢は驚きます。「気に入ったものは必ずゲットする」あつかましい松木でしたが「モノにしたらとても大事にする」という性格も能勢は良く知っていたので、継子の光子・山内敬子も、今夜生まれてくる実子もわけへだてなく大事にする松木の姿を見てすっかり安心します。

 サイパンへ帰る列車の出発時刻が近づきます。

 お母さんに逢えなかった河野中尉・早川雄二の耳に自分の名前を呼ぶお母さんの声が聞こえてきます。トロい志水が集合時間に間に合いません。仲間たちは協力して点呼を誤魔化します。列車がゆっくりとホームを離れます。志水が走ってきて、列車に飛び乗りました。

 死者を乗せた列車は海を渡ってサイパン島へ帰って行きました。

 死んだ人にもう一度会いたい、残した家族に会いたい、叶わないから「夢」ですが、こういう幽霊だったらいつでも、どこでも、大歓迎です。ただし出てくるのは「逢いたいと思っている知り合いの人」に限ります。「逢いたくない、知らない人」だったらヤです、ってか、単に怖いだけだし。

2004年08月13日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2004-08-15