0線の女狼群

■公開：1960年

■制作：新東宝

■制作：大蔵貢

■監督：三輪彰

■助監：

■脚本：三輪彰、織田清司

■原作：

■撮影：岡田公直

■音楽：渡辺宙明

■美術：宮沢計次

■主演：小畑絹子

■トピックス：

ネタバレあります。

　小畑絹子という女優さんは清楚で華のある人ですが、ここ新東宝ではもっぱら、っていうか特に悪漢どもに誘拐されて犯され開き直って立派な毒婦となった女性の一代記「毒蛇のお蘭」での艶姿が有名です。キレイな華は汚してみたいという、人間の心にあるある種のどす黒い願望のターゲットになってしまうような役どころが印象に残ります。扇情的な映画づくりを至上命令としていた当時の新東宝で一番輝いた女優さんの一人であったと言えるかもしれませんね。

　さて、本作品ではなんとなく田舎暮らしがイヤになって東京の上野駅（東京の裏玄関と評されております）に降り立った小夜子・小畑絹子が、いきなりトランクの置き引きに遭い、次から次へと悪い男に誘われ、誘拐されそうになり、売春宿にまで放り込まれてやっとこさ逃げ出します。単に小夜子がトロいだけだと思いますが、これでは東京の印象がめちゃくちゃです。

　大切なトランクを駅の手荷物預り所（ここんところが時代ですな、コインロッカーじゃありません）に預けたのはいいアイデアでしたが受取書を無くして困っていた小夜子は通りがかりのハンサムな学生、佐伯・寺島達夫に助けられます。

　ほっとしたのもつかの間、小夜子はニセ警官に騙され、表向きは商事会社を経営している長島・丹波哲郎が裏稼業としてやっているブルーフィルムに無理やり主演させられてしまいます。しかも主演男優は社長自身。売春組織のメンバーにさせられた小夜子は逃亡を試みますが、手下の斎藤・大原譲二、ニヤニヤ・鳴門洋二らに捕まり川原でボコられて断念します。「パピヨン」のように組織からの脱出に執念を燃やす小夜子は元女工の田舎娘を手入れの最中に逃したりしますが、逃亡先で彼女が殺されてしまい、小夜子の長島に対する憎悪の炎はますます燃え盛ります。

　「線（ライン）シリーズ」はいわゆる売春組織の悪玉がいて、そこに捕らわれているヒロインがいて、彼女を救い出すハンサムな青年がいて、裸があって、ドンパチがあって、とまあエロとバイオレンスとお笑い（大抵、その組織のチンピラたちは間抜けなので）があったりする観客サービスに徹した内容になっています。

　この映画ではなんと言っても、女郎＝女狼の人たちの向上心の欠片もないヴァイタリティーと、女の敵＝丹波哲郎の「どんな下衆な役どころをやってもにじみ出る育ちのよさ」、および小畑絹子の顔と身体、以上が見どころのすべてであります。

　さて、本来であれば丹波哲郎を倒すのは寺島達夫でなければなりません。しかし、この映画の寺島達夫はびっくりするほど弱いのです。たいして強そうに見えないチンピラに叩きのめされ、ガレージに監禁されてボディーブロー一発でのびてしまい、脱出するときも拳銃をぶっ放して助けてくれたのは小畑絹子です。寺島達夫は丹波哲郎の殺害に燃える小畑絹子に説教しかしません、なんというヘタレでしょうか。

　これといって何の活躍もしない寺島達夫にひきかえ、女郎の皆さんは集団で組織のちんぴらたちを襲撃し事務所を壊滅させ、逃亡を図った丹波哲郎をビルの外壁に追いつめ、投石攻撃で落下させ、あまつさえ、電線にひっかかって感電死という壮絶な末路へと導くのです。イタリア映画の女囚モノの先達のような作品でした。

（2004年06月13日 ）

【追記】

※本文中敬称略

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