「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


ハッピーピープル


■公開:1997年

■制作: バップ

■制作:近貞博

■監修:

■監督:鈴木浩介

■脚本:鈴木浩介

■原作:釋英勝「ハッピーピープル」(集英社ヤングジャンプ)

■撮影:篠田昇

■音楽:the☆STaRKEYS、ザ・茶番、PLANET 3、あおのいちろうwithリフラフ、Catch-UP

■美術:

■主演: 尾美としのり(あえて・・・)

■トピックス: 尾美としのりがどんどん変になっていく・・・

ネタバレあります。


 この作品は「R指定」ですから、いたいけなお子様は鑑賞できません。

 三話のオムニバス映画。公開当時は漫画のほうの人気に乗っかって、その「やりすぎ感」が人間のドロドロとした欲望を直球ど真ん中に描きつつも「ありえねえ・・」そんなもんだったと思いますが、世の中というのは恐ろしいもので、人間が「だったらいいな!(か?)」は悪いほうから順番に現実化してしまうものであります。21世紀のここ日本では「ふーん・・」程度の日常化してるほうが、よっぽど怖いのであります。

 第一話「いつからか僕は」

 ごくごく平凡な家庭人であり、サラリーマンである、主人公・緋田康人は、ゴミ出しの時に因縁つけてきたサラリーマン風の男・竹中直人を妄想の中でボコって殺してしまいます。このように、彼は日常のストレスを「暴力的な妄想」で解消していたのであります。全然フツーのOLのほんのささいな態度のムカついた彼は、妄想の中で女の顔面を血だらけにしたりします。そして、子供のお土産にケーキを買って帰る途中、交差点で歩きタバコの男・ピエール瀧が無意識に押し付けたタバコの火に激昂してしまい・・・。

 第二話「意味もなくみんなで笑おうハッピーに!!」

 博愛主義を掲げつつ実は「事なかれ至上主義」の学校に赴任してきた主人公・尾美としのりは、生徒の暴力になすがままにボコられても笑顔を絶やしません、血ゲロ吐いても笑っています。そんな先生はいつも「秘密手帳」に何事かを書き込んできました。その手帳を盗み見た同僚教師・河原さぶは、乱交パーティーでトリップしている馬鹿生徒の自宅で、主人公の壮絶なストレス解消法を目撃します。

 第三話「ピアスをはずせ!!」

 医者&めざせ代議士、という社会的なステータスの高さに固執する父親・平田満と、育児ノイローゼの母親・伊佐山ひろ子に育てられた、顔面ピアスのロクデナシ息子・柏原収史は、カップルの乗った車を仲間2名とともにバイクで襲撃し、綱引きの要領で男のほうを惨殺、輪姦した女が逃げたのでバイクで轢いてしまいます。証拠隠滅に成功したと喜んだのもつかの間、瀕死の女が父親の病院に担ぎ込まれます。事情を聞いた父親と母親は息子に協力し女を殺します。「人殺し」という共通の話題(か?)ができた一家は一致団結、父親の選挙活動に盛り上がります。しかし、殺したと思っていたカップルの男のほうが生きており・・・。

 そもそも人を殺すほど思いつめるには「よっぽどの事情」があるはずですが、最近は現実感のないままに、っていうか「なんとなく」人を殺してしまう人があまりにも多くて、本作品のように「動機が希薄なわりにはやることが濃厚」な人たちの心理は公開当時には理解されにくく、また、原作が漫画なので、その「行間」を描ききれていないことがマイナスに作用したかもしれませんが、21世紀の日本では全然オッケーです。

 映画「火の鳥」で主人公の熱血少年、「転校生」ではオカマ(じゃなくって!)高校生、このまま順調に青春スターから演技派に成長していくかと思いきや、大丈夫なのか? 尾美としのりは!とファンの人たちが腰を抜かしたかもしれない「漂流教室」の爬虫類的演技を経て、ついに本作品です、ってそれほどのことはないかもしれないですが。なんか、人柄の良さに付け込まれているような気がしないでもない、わりとファンなので心配です。

 それと、「白い指の戯れ」からン十年、ついに人の親ですか>伊佐山ひろ子。時の流れは速いものですなあ・・・。

 公開当時はともかく、今となっては現実のほうが映画よりも、よっぽど理不尽になってしまったので、本作品にはかえって物足りなさを感じてしまうかもしれません。ったくヤな世の中だぜ、まったく。

2004年05月09日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2004-05-10