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帰って来た女必殺拳


■公開:1975年

■製作:東映

■企画:吉峰甲子夫

■監督:山口和彦

■脚本:金子武郎 、 掛札昌裕

■原作:

■撮影:飯村雅彦

■音楽:菊池俊輔

■美術:北川弘

■造形:

■主演:志穂美悦子

■トピックス:悪の軍団のウドの大木、こと土山登志幸さんはジャイアントロボの人。

ネタバレあります。


 「女必殺拳」シリーズの3作目。シリーズ映画の常としてネタ切れ、マンネリは避けられないものですが、本作品もそのセオリーを踏襲してしまったようです。そもそも「燃えよドラゴン」とアンジェラ・マオが活躍する香港のアクション映画の邦訳なので、アクションに次ぐアクションでなければならないわけですが肝心の部分が圧倒的に物足りません。

 香港警察の千葉治郎は、本作品のヒロインであり日本人と香港人のハーフである紅竜・志穂美悦子に、日本で行方不明になった幼友達の秀麗・川崎あかねを探してほしいと依頼します。秀麗の娘をともなって二人が話し合いをしていたところへ謎の一団(リーダー・日尾孝司)が襲いかかります。乱闘の最中、千葉治郎はナイフで刺されて死んでしまいます。手がかりは横浜にいる麗花・張美和。彼女を訪ねて紅竜は秀麗の娘と一緒に来日します。

 さっそく港で件の謎の一団に再度襲撃される紅竜たちですが、唐突に登場した元ジャッカー電撃隊のミッチー・ラブの加勢で次々に敵を横浜港にほぼ全員叩き込んでしまいます。

 化学博士でもある秀麗は元関東軍の将校で今は暗黒街の大物になっている王龍明・山本麟一に利用され、人間を溶かす謎のクスリを開発させられています。麗花は王の手下に麻薬中毒にさせられ悪事に加担させられているのでした。紅竜の抹殺をくわだてた王は育成していた武道家たちにデスマッチを課します。そんな強い相手なら手勢がたくさんいたほうがいいと思うのですが、映画の見せ場として得体の知れないキャラクターたちの対決は欠かせません。何が得意なのかさっぱりわからないウィリー・ドーシーなんざ牛若丸みたいなのに顔面キックされて腹パンチくらってノサれてしまいますし、土人の格好で槍をふりまわしていたきくち英一は額をバックリ割られて死にます。おなじみのデブ・佐藤晟也も血だるまにされます。で、生き残った4人が次々に紅竜を襲撃しますが、ばかすかやられてしまいます。

 大金投資して育成した武道家たちがこのザマですから、王龍明が怒るのも無理はありません。それどころか彼は秘密工場まで紅竜に襲撃されてしまうのです。部下に恵まれない王龍明が素性のあやしい黒崎・倉田保昭をついうっかり雇ってしまったのが彼にとってはケチのつきはじめでした。生き残った武道家の一人である爬虫類柄のジャケット着用の蛇倉・石橋雅史と黒崎はハナからソリがあいません。で、このシリーズを見慣れている人ならバレバレであるように、倉田保明は実は善玉です。

 この映画のもう一つの見どころは、特に悦っちゃんファンの皆様が期待されるのは、志穂美悦子のやられっぷりかと思われますが、せいぜい二番手の殺し屋に腹を殴られて呻くとか逆さづりにされて鞭でシバかれるという程度でたいしたことありません。それどころか、悦っちゃんの活躍シーンはことごとく倉田保明に横取りされてしまいます。石橋雅史を倒したのも、山本麟一を負かしたのも実際には志穂美悦子ではありませんでした。

 このように、志穂美悦子すら活躍しないのでこの映画のイマイチ度はかなりアップしてしまうわけですね。いつもは人一人殺傷するたびににバケツ一杯の血のりぶちまけるとか、内臓出すとかしてくれる山口和彦監督の演出もやや大人しいのでこれまた不完全燃焼気味。やはり対峙する悪役のほうにもっと腕の立つひとを置いとくとかしないとダメです。現場を取り仕切っている土山登志幸がジャンボな体躯を生かしきれてませんし、ナンバー2がちょっとオカマっぽいというのもいかがなものか?という気がします。特に山本麟一と常連・石橋雅史の死に様があっさりしすぎなのが致命的。

2004年04月19日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2004-04-19