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新選組


■公開:1958年

■製作:東映

■企画:辻野公晴、玉木潤一郎

■監督:佐々木康

■脚本:高岩肇

■原作:

■撮影:三木滋人

■音楽:万城目正

■美術:鈴木孝俊

■主演:片岡千恵蔵

■トピックス:

ネタバレあります。


 会津小鉄と言えば、平成のここ日本では指定暴力団の名称であるがこの映画に登場する里見浩太郎が演じている仙吉の異名である。さて、新選組映画は概ね実在した人がほぼ史実に基づいて行動することが多い。しかしながら、本作品は虚実入り乱れである。月形半平太と鞍馬天狗がこともあろうに近藤勇を勤皇サイドへスカウトしようとする場面まである。いくらなんてもやりすぎな気もするが、近藤勇が片岡千恵蔵であることですべてにおいて観客の同意を得られる、という前提でこの映画は観るようにしたい。

 じゃないとツライぞ。

 この映画の新選組は、隊長の近藤勇・片岡千恵蔵以外の隊士は副長の土方歳三・山形勲以下、みな徹底的に 武闘派の猛者で構成されている。ある日、下級の隊士が見世物小屋でささいなことから町人を斬り殺し、このことから近藤と対立していた副長の関兵庫・月形龍之介一派の分離に発展する。長州藩との連合を強く訴えていた藤堂平助・徳大寺伸もこれに同調する。

 勤皇派の月形半平太・大友柳太朗と鞍馬天狗・東千代之介が、長州藩の過激分子の動向を心配していた頃、近藤勇は闇討ちされそうになり、たまたまそこを通りかかった仙吉(会津の小鉄)・里見浩太郎はデートの途中で、長州藩と関一派が手を組んで、祇園祭を狙った大規模なテロ活動の計画を知る。

 池田屋に踏み込んだ近藤勇と新選組は、祇園祭りの賑わいを背に、凄惨な斬りあいをして勤皇派を皆殺しにした。祝勝会の夜、近藤勇を薩長連合へスカウトしようと訪ねてきた月形半平太であったが、互いの主張を確認しあって静かな物別れに終わる。いったんは関に追従しようとしたがテロに反対した藤堂平助は自害した。大政奉還を経て、倒幕の命が下り、鞍馬天狗をリーダーにした薩摩軍が大阪を目指し、近藤勇と新選組は仙吉らに見送られて旅立つ。

 この映画に登場する近藤勇は、主義主張の別よりも混乱に乗じて私利私欲に走る輩の存在をのみ許さず、武士道をつらぬき幕府と心中する決意を固めた人物として描かれており、血の気の多い(この映画ではそういうことになっている)土方歳三をいさめたり、鞍馬天狗の相方である杉作少年を一度は捕らえながらもわざと逃がしてやったり、申し分の無い良い人である。

 いわば新選組の「もしも近藤勇が人格者だったら」というアイデア勝負の映画と言って良い。

 かようにストーリー的には如何物であるが、池田屋襲撃のシーンはセットもよく作ってあり(今時のに比べれば、ですが)、階段落ちから、ドリーで移動、屋根づたいに逃げる勤皇派の狼狽ぶりなど迫力満点であり、雑駁な印象の本作品の唯一にして最大の見せ場。祇園囃子のみが遠くから聞こえてくる、その中に惨殺される大勢の悲鳴が聞こえ、憤然と立ち尽くす(逆光で表情が微妙に見えない、そこがいい)片岡千恵蔵のやりきれない思いが伝わる、いいシーン。

 原健策は 監察の山崎丞に扮しスパイ活動に従事、大友柳太朗の月形半平太と丁々発止の掛け合いを演じる。大友柳太郎も芸者の千原しのぶとともに「春雨じゃ濡れていこう」の台詞を一片の照れもなく堂々と放つ。双方とも新国劇のご出身、時代がかった芝居は十八番。

2004年03月14日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2004-03-14