婦系図 湯島の白梅 |
|
■公開:1955年 ■製作:大映東京 ■製作:藤井朝太 ■監督:衣笠貞之助 ■脚本:衣笠貞之助 ■原作:泉鏡花 ■撮影:渡辺公夫 ■音楽:斎藤一郎 ■美術:柴田篤二 ■主演:鶴田浩二 ■トピックス: ネタバレあります。 |
|
静岡出身の孤児でありながら独和辞典の編纂をしていた高名な酒井教授・森雅之に拾われて優秀な教師となり、辞典の制作に協力していた早瀬主税・鶴田浩二にはお世話になった教授にも言えない秘密がありました。それは元芸者の蔦吉(お蔦)・山本富士子と内縁関係にあるということ。これがもしバレたら一大スキャンダルになってしまいますので、お蔦はごく親しい女中や出入りの者にしか存在を明らかにしてません。 教授の娘・藤田佳子との仲を取り持つように主税にごり押しして挙句にフラれたお金持ちのボンボンがハライセに新聞記者に二人の関係をばらしたため、主税とお蔦の仲は世間の注目を集めてしまいます。当然ながら酒井教授は別離をすすめますが、そんな酒井もかつて芸者の小芳・杉村春子とデキてしまい、子供までデキてしまったのに、結局は分かれたという過去がありました。 いつかは正式な奥さんになれると張り切っていたお蔦が湯島天神で主税から唐突にコクられ、それで泣く泣く身を引いた後、ついに出版された独和辞典のお披露目式を会場の外から見つめる主税。恋人に去られた後は、髪結いの夫婦・加東大介、沢村貞子にやっかいになっていたお蔦は肺炎を患ってしまいます。 酒井は小芳に説得され深く反省し、お蔦が危篤であることを郷里の静岡へ帰っていた主税に電報で知らせます。 で、ここで涙の再会をして、メキメキお蔦が回復しちゃうと新派代悲劇なりませんし、やっぱ泉鏡花だから死んだお蔦の幽霊くらいは出てほしいよね、などという邪まな客(筆者)の期待を裏切らず、寝床の周囲を梅ノ木に囲まれた主税は、夢の中でお蔦との再会を果たします。 「私を主税と思え」とか、死ぬ間際になって謝っても遅いだろうが!酒井!と、現代の客(筆者)は思いますし、愛は根性で奪取せんかい!と当時の世相を完璧に無視してイライラする前半を我慢していると、むしろ注目は好きな男の前で、ウキウキしているお蔦のしぐさが妙に馬鹿で可愛くて「あーこんな可愛い女なら惚れちゃうよなー、馬鹿だけど」くらいに思えてくるので、妙に健康チックで死にそうには見えないけど重篤状態にあった山本富士子の衰弱死がジーンと来ます。 森雅之の頑迷な学者も上品でいい感じですが、お蔦をサポートする小芳が生き別れになった娘に「逢いたい!」と酒井に懇願するところは、サイドストーリーながら新劇パワー全開の泣ける場面でした。餅は餅屋というべきでしょうか。 当時はフリーだった鶴田浩二が演じた早瀬主税は、優男でありますが鼻持ちならない同級生からの依頼を毅然と断わったりする男らしさもあるので、柄にはピッタリ。ちょっとナルシストなところも、お蔦に別れ話を切り出すところのウルウルする瞳の演技でハマってました。 山本富士子はとても近代的な顔なので、お嬢様っつーよりはちょっと仇っぽい感じのほうがステキだし、細かい動きが絶妙なので観察力がすごいんだなあと思っていたら、この映画のお蔦の演技は元女形の衣笠監督が自ら演じて見せてたそうです。 ちなみに、映画の中では夫婦役だった加東大介と沢村貞子は本物の姉弟です。 新派といえば?というくらいの有名作品。多少かったるいですが、山本富士子の純情演技で高得点。 (2004年01月25日 ) 【追記】 |
|
※本文中敬称略 |
|
file updated : 2004-01-26