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日本の黒幕(フィクサー)


■公開:1979年

■製作:東映

■製作:日下部五朗、本田達男

■監督:降旗康男

■脚本:高田宏治

■原作:

■撮影:中島徹

■音楽:鏑木創

■美術:井川徳道

■主演:佐分利信

■トピックス:

ネタバレあります。


 「不毛地帯」がロッキード事件をビジネス・パワーゲームの視点で描いたのに対して、本作品は「日本の首領」シリーズの外伝的な位置づけなので右翼とやくざが大活躍します。主役は「地震列島」では大地震も黙らせる内閣総理大臣を演じた佐分利信。いや、佐分利信のキャリアを説明するに「地震列島」ってのは難ですが、めずらしかったもので。

 戦後、キングメーカーとして君臨していた右翼の大物、山岡邦盟・佐分利信が、航空機選定に関する汚職で自らが作った総裁の平山・金田龍之介とともに関西フィクサー勢力に追いつめられます。関西系の大物、小河内・曽我廼家明蝶、森島・成田三樹夫ら山岡の対抗勢力サイドに与した企業の副社長、朝倉・内藤武敏から、ある重要書類を預かっていた取締役が投身自殺します。その書類には山岡から平山に渡った裏金の授受について克明に記録されており、取締役は責任を取ったのでした。ところがその書類には、あまつさえ、反山岡勢力の首相経験者・佐々木孝丸の汚職の証拠まで残っていました。

 いざとなったら闇から闇に葬ることができる大物政治家やフィクサーの人たちに比べて吹けば飛ぶような民間企業の重役が保険代わりに用意していたブツがとんだ事態を招いたわけです。山岡サイドの小栗・梅宮辰夫と行動隊長の団・中尾彬が証拠の書類を強奪しますが、森島の指示により朝倉もホテルの高層階の窓からポイされてしまいます。大事な証人を消されてしまった山岡の形勢はますます不利に。

 これを契機として山岡サイドから造反者が続出。ネチっこい検事・仲谷昇の取調べにぐらついたマネーロンダーの竜崎・田中邦衛がケツを割りそうになると見るや行動隊長の団が竜崎を惨殺。血で血を洗う状況の中で、山岡は国会の証人喚問を受諾し、事態は一気にクライマックスへ突入。山岡の一人娘・松尾嘉代は近親相姦に絶望して事実上の自殺、それにショックを受けた山岡の愛弟子・田村正和は女房を虫けらのように殺された山岡の元門下生・尾藤イサオと相打ち、元テロリストのお稚児さん・狩場勉は辞職した平山総裁を刺殺し後援者にボコられて絶命。

 純粋な若い衆と小者はバカスカ死ぬのに、巨悪はしっかり生き延びるという、現実にほぼ忠実な映画です。

 「俺が間違っているのではない、一億人が間違っておるのだ!」一度でいいからこういう台詞を吐いてみたいものであります。ここまで頑迷なジジイにリアリティなんか感じませんが、佐分利信が言うとなんとなく納得できてしまうところが、キャスティングの勝利であります。

 「男に男が惚れる」というのはちょっとアブナイ香りがありまして、この映画、やたらと「男が男の髪の毛や肌をまさぐる」映画であります。かつて山岡が大陸で世話をした名もなき老人・有島一郎が病床の山岡をたずねて来たときなんざ、いきなり佐分利信が胸をはだけて、七十を超えたわりにはピッチピチな胸板を有島一郎がわしづかんで感激のあまり泣くという、絵柄的には相当にキテたりなんかします。田村正和なんかモロに「お稚児さん」とか呼ばれてるし、上半身裸で水浴びする狩場勉を見て佐分利信が「美しい」なんて言っちゃうし。

 インテリや思想家=ホモ、というのは東映らしい路線と申せましょうが、そういう映画には欠かせない美少年キラーの林彰太郎の姿を門下生のなかに発見したときは思いっきり笑ってしまいました。佐分利信や滝沢修が黒幕として登場するような、ジジイがフルスロットルで活躍する群像劇に欠かせない高橋悦史は山岡の秘書的なポジションで、興奮して泣く田村正和をシッカリとその胸にだきとめて髪をまさぐっておりました。

 右翼団体なんて全寮制の男子校みたいなものでしょうから(少なくともこの映画では)そういう事態も無きにしも非ずなんでしょうが、主題と全然違う方向であなどれない映画であります。

2004年01月25日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2004-01-26