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黒い家


■公開:1999年

■製作:アスミック・エース エンタテインメント

■製作:原正人

■監督:森田芳光

■脚本:大森寿美男

■原作:貴志祐介

■撮影:北信康

■音楽:山崎哲雄

■美術:山崎秀満

■主演:内野聖陽

■トピックス:

ネタバレあります。


 森田芳光は基本的に喜劇の人である。だから、どんなにグロい原作を相手にしても、いかに痛そうな場面を作っても、そこはかとなく見ているほうは脱力して笑ってしまうのである。

 演劇好きな友人様によれば「内野聖陽はいいッ!上手いッ!」とのことであるが、なんでいいのか筆者にはさっぱりわからんかったので「そもそも名前が読めん」などとほざいたところ「お、おまえ『ハル』を褒めてたじゃないか!」と言い返された。

 あ、そうだ、そう言えばあの彼氏がそうだった。あのときは潮哲也ばっか見てた筆者ではあったが、かように筆者の中では内野聖陽は影が薄い。たぶん、役どころにあまりにも入っていってしまうためどれが内野聖陽そのものなのか掴みにくいからではないか?役の印象は残っても役者の記憶が残らない。芝居が達者な人というのも困るぜまったく(筆者としては)。

 生命保険会社の社員、若槻・内野聖陽が、ある夫婦の継子の自殺という事件をきっかけに世にも恐ろしい目に遭ってしまうという話である。ベースとなっているのが、実際にあった無差別殺人事件&保険金詐欺事件ということもあって、ソレをイメージさせるシーンがフラッシュバックされるのだが、映画の中身はむしろその生々しい現実を消そうとして、サスペンス映画を飛び越し、ほとんどオカルト化していく。

 それもこれも、ホラー映画業界を菅野美穂とともに2分(してねーよ)する、サイコパス(情緒欠如)主婦を演じた幸子・大竹しのぶの爆走の賜物ということになろうか。たしかに後半、若槻の妄想と入り混じったビジュアルの中で、どこまでも追いかけてくる幸子は怖いのであるが、なんとなく間抜けである。いきなりオッパイ出してしまう唐突さ(吹替え、かい?)もあるにはあるのだが。

 そう、それはメンタルな怖さは感じるが、幸子が凶暴化したのもいいが、屈強化したところがどうも解せない。ボーリングの玉をどーやって飛ばしたんだろう、とか、大の男を引き回す力がこの女のユルい身体のどこにあるのだろう?という素直な疑問である。

 ま、包丁とか凶器を振り回してくれるとスンナリと理解できるので、そのへんはいい。しかし、そんなモンスターな主婦と格闘する男のほうはタイヘンである。モタモタしてんじゃねえっバカ野郎!頭カチ割れ!オラオラー!と画面見ながらエキサイトしている見てるほう(筆者である)もどうかと思うが。

 保険金詐欺やこれにまつわる殺人事件の犯人の分析を詳しく解説してくれる職能的な場面と、後半のケレン味たっぷりなところと比べると、おそらくは後半のほうがオマケなんだろうが、人間というのはあとから見せられたほうが印象に残ってしまうものであるから、ほとんど「お笑い」の域に達している殺人マシーンの熱演を思いっきり楽しもう。

 大竹しのぶに共鳴する謎の夫に西村雅彦、トンでもない事件にまきこまれる若槻の恋人に田中美里(この後、ゴジラと対決することになろうとは夢にも思うまいて)。

2003年10月26日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-10-26