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右門捕物帖 まぼろし燈篭の女


■公開:1961年

■製作:東映京都

■製作:橋本慶一

■監督:工藤栄一

■脚本:鈴木兵吾

■原作:佐々木味津三

■撮影:吉田貞次

■音楽:鈴木静一

■美術:塚本隆治

■主演:大友柳太朗

■トピックス:

ネタバレあります。


 「むっつり右門」の四作目。

 ある夜、長屋住まいの浪人が頭をカチ割られて殺される。残されたのは妻・青山京子と、義理の妹・桜町弘子。凶器は石つぶてを手ぬぐいで包んだ、鈍器のようなもの。犯人を目撃したという易者・沢村宗之助によると「目元の涼しい男前」だった、とのこと。南町奉行所の近藤右門・大友柳太朗はおしゃべり伝六・堺駿二とともに捜査を開始。

 捜査線上に浮かんだのは被害者の妹の元彼、甲斐達也・平幹二朗。右門を勝手にライバル呼ばわりしている、あばたの敬四郎・進藤英太郎は奉行の神尾元勝・黒川弥太郎に、与力に取り立ててもらおうと見当違いの大活躍、やっぱ憎まれ役はこうでなくちゃ!さて、有力容疑者の甲斐は掛川藩の武士だったので、右門は江戸家老の平岩和泉・水島道太郎のところへ行く。

 後輩同心、笠井久平・里見浩太郎と許婚、ふみ・北条喜久(北条きく子)とのままごとのようなラブストーリーあり、右門のところへ「おしかけ女房作戦」をしかける女スリ・丘さとみのやんちゃありで、時代を完全にまちがったアチャラカ芸の苦しさを除けば、アクションも面白い及第点の一作。

 女房に見捨てられた男というのは気の毒なものであるが、本作品のように無残に殺されてしまう場合、犯罪の影に男あり、である。

 謎解きモノが面白くなるかイライラするかの差は、ネタバレ(オチが読める)のタイミングが登場人物と客とどっちが先になるか?ということ。ほぼ同時だと良いのだが、若干でも客がリードするとせっかくのヒーローが間抜けに見えてしまう。逆に最初からバレていると、ゴールに到達するプロセスを楽しめる。いずれにせよ、伏線やトロンプルイユでいかに「見えちゃってる」部分を隠すかが映画の場合は面白さの大部分と言える。

 本作品はまず真犯人は登場即判明。では実行犯は?これがなかなか「それらしい」のを持ってくるのでイイ感じだ。公開当時ならやはりすぐにバレたかもしれないが、ヒラミキの現在を知っている平成の時代のほうが犯人がわかりにくくなってるかもしれない。

 もっとも、長身痩躯できりりと二枚目しているヒラミキを見て、現在のように妖怪化した(ファンの人、ゴメン!誉めてる、つもり)本人だとわかる人がどれくらいいるのかは疑問であるが。

 さて右門、ほとんどヤマカンで事件を解決しているとしか思えないが、あまり物を考えてなさそうな体育会系キャラクターを得意とする大友さんに「名推理」というのはいかがなものか?にもかかわらず、まわりが騒々しい馬鹿の壁(芸達者とも言う)で囲まれているため相対的に「何もしてない」ことが賢いように見えてくるから不思議だ。アゴに手をあてるポーズも今見ると、見てるこっちが恥かしくなるくらいだがあまりにも堂々としているので許す。紋切り型は照れたらダメ、何も考えてないでやったほうがヨロシイ。

 さてそんな「むっつり」であるが苦手な女スリから逃げるときの逃げ足は、伝六をぶっちぎる。こういうギャップに大笑いできるのもひとえに何事にも全力投球な大友さんのおかげだ。二枚目でも、三枚目でも、色敵でも、馬鹿でも、おりこうさんでも、思いっきりなのが良、分かりやすいのが良い。

 なんか考えていそうで実は何にも考えていない、それが「むっつり右門」の魅力である。つまり大友さんそのもの。

2003年10月05日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-10-05