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源義経 総集編


■公開:1955年

■製作:東映京都

■製作:大川博

■企画:マキノ光雄、藤本真澄、大森康正

■監督:萩原遼

■脚本:八尋不二

■原作:村上元三

■撮影:吉田貞次

■音楽:小杉太一郎

■美術:塚本隆治

■主演:中村錦之助

■トピックス:「源義経」「続源義経」の2作の総集編、ちなみに「続〜」の静御前の登場シーンはカット。

ネタバレあります。


 なかなか豪華な出演者だなあと思っていたら「源義経」「続源義経」の総集編。なので90分弱の正味はかなり駆け足気味。

 鞍馬山に幽閉されていた牛若丸・中村錦之助は、平氏の刺客に狙われることもあったが、父亡き後、一条大蔵卿・中村時蔵(三世)と再婚している常盤御前・山田五十鈴のことを思って、里の娘うつぼ・中原ひとみと仲良く暮らしていた。

 ある日、牛若丸はうつぼに怪我をさせた能登守教経・片岡栄二郎を往来でやっつけてしまったために平清盛・小沢栄(小沢栄太郎)から追っ手をかけられそうになるが、助命を乞うた一条大蔵卿が若狭へ流されることになり牛若丸は助かる。母のいる京都では山法師達と平家一門が対立、その渦中、牛若丸は武蔵坊弁慶・月形龍之介とひょんなことから対決し、弁慶は牛若丸の家来になる。

 鞍馬山をおりることになった牛若丸は最後の一夜を母親とともに過ごす。奥州の藤原秀衡・宇佐美諄を頼って旅をつづけていた牛若丸は元服し、名を義経と改める。兄の頼朝・南原伸二(南原宏治)が挙兵したが、敗走中との報を受けた義経は出陣し、黄瀬川で頼朝と再会、続いて富士川の合戦で大勝利する。

 前半、お稚児さん時代は女形のスキルを生かしての丸みを帯びた姿に思わずカワイイ!と叫びたくなるが、後半、義経となってからは日本人形のような凛々しく初々しい少年の顔つきとなり、しぐさも堂々としていながら頼朝に冷たくあしらわれたときの落胆ぶりに悲しさがあって、一転、兄と心を通わせるシーンでは哀れさと切なさが出て、ようするにこの映画は錦之助を見るためにできている。蝦夷地の娘との恋愛とか、静・千原しのぶとのシーンとかが丸々カットされているらしく(資料にはそう書いてあるので)総集編ではそうなっている。

 恋人あづま・浦里はるみのために一度は牛若丸の命を狙うがあとで改心して、平氏の暗殺団相手に憤死する新宮源次正綱・三条雅也(大映の二枚目だった小柴幹治)のアダルトな恋。その正綱の死に様を見て義経の忠実な家来になる正門坊・原健策くらいしか脇役の見せ場を残していないので、たぶんもっとふくらみのある大河ドラマばりのドラマだったんだろうなあと、ここでは想像するしかない。

 頭巾をかぶってイメージとしては無骨な大男であるから、大仰な芝居を下手な役者がすれば間抜けなことこの上なかったと思われるが、月形龍之介の弁慶は造形がユーモラスでさすがサイレント時代の俳優はこういうところが上手い。

 錦之助の実父である中村時蔵は映画初出演、芝居がまるっきり歌舞伎である。ま、それでも錦之助としては父親と一緒に出れたんで感激したんじゃないだろうか。

 歌舞伎俳優と現代劇の俳優を時代劇で混在させると動きの違いですぐわかる。たとえば父の墓に詣でる錦之助のあとを竜崎一郎がついていくがどうみても現代劇の芝居である。後にクドくてテンションの高い悪役の印象があまりにも強い南原宏治が、いや本当は二枚目なんですけどね端正な顔した人が凄むから迫力あるんでね、錦之助と兄弟の再会を喜び合うところなんか、お互いに芝居っ気たっぷりなんで、現代劇の俳優と歌舞伎役者の対決!みたいな感じである意味シュールですらあったほど。

 筆者が見たのはフィルムのプリントがヘロヘロだったのが、はしょってるところを期待させるに十分な出来栄えでこれはぜひ本編を2本見てみたいと思わせた。どっかでやってくんないかなあ・・・。

2003年08月24日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-08-24