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らしゃめん


■公開:1977年

■製作:東映京都

■企画:日下部五朗、今川行雄、奈村協

■監督:牧口雄二

■助監:野田和男

■脚本:志村正浩、牧口雄二

■原案:杉紀彦

■撮影:タッド若松、塚越堅二

■音楽:渡辺岳夫

■美術:園田一佳

■主演:鰐淵晴子

■トピックス:

ネタバレあります。


 没落士族の娘、お雪・鰐淵晴子が許婚の数馬・荻島真一のために血を吐く思いで(本当に血を吐いて)学資をかせいで送金し、ドイツ留学を果たして医者になって帰国した数馬に見取られて死ぬ。牧口雄二監督が鰐淵晴子をどうするのか?と期待していた観客の期待を裏切りまくった映画である。

 「らしゃめん」というのは居留地にいる外人専門の売娼。お雪の家族は、実弟はテロリストに、母親はお雪が売られた直後に病死、妹もまたもらわれていくという悲惨な運命。薄幸なヒロインが身体を張って生きていく、そんな超悲恋ものになるはずが、なぜかそうはならない。

 しょっぱな、死の商人である後藤顕蔵・藤村富美男(元阪神タイガース)の手下、谷村伝兵衛・遠藤太津朗によって売り飛ばされた先の外人、ロング公使・ジョン・マギーはお雪を他の売娼に比較してイキナリ押し倒したりせず、腫れ物に触るように大切にする。そのわりに、最初の一発が真昼間の青カンというのがアメリカ人のよくわからないところではあるが、とにかく最後は、帰国するとき(母国に妻子あり)は、むしろお雪に感謝されちゃったりするのである。

 遊郭へ流れたお雪はここでも超売れっ子になるので仲間の反感を買うのだが、かつての同僚がやってきてゴウツクなやり手婆などから守ってくれるし、無事に再会(とはいえ数馬はお雪に気がつかない)した恋人にも、これまた洋館の下男・常田富士男がサポートして、学資を届けてくれるし、大学の教務主任・成田三樹夫もお雪の意を汲んでくれるイイ人だし。

 具体的にどこが薄幸なんだか最後までよくわからないのだ。と、言うより、話だけ追えば相当に不幸なはずだがビジュアル的にはいつも化粧ばっちりで血色の良い顔をしているお雪を見ていると「で、どこがかわいそうなの?」と思ってしまう。

 旦那のタッド若松がそばにいるから遠慮したのか?牧口雄二は、というかそうとしか思われないっつーことだ。

 売娼なら当然、乳がバッチリだったかというとこれまた襦袢から肩がかろうじて露出するだけ、なのである。しかも、この映画は本人が出したレコードがもとになっているのだが、鰐淵晴子の歌がサッパリなのでさらにツライ。

 最後まで全然脱がない売春婦の映画なんてどこが面白いんだろう?と思ったが、遊郭の女たちからイジメにあうお雪、はともかく、ヒロインそっちのけで繰り広げられるキャットファイトは東映ならではの迫力。

 このままではイカン!と思った監督の窮余の一策といえるのが遊郭で馬鹿騒ぎする月亭可朝汐路章のお下劣な奮闘と、キャバレーで下品にさわぐ室田日出男とボーイ・川谷拓三のショートコント、ちなみにストーリーとはほとんど関係がない、いつものことである。

2003年08月24日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-08-24