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うずまき


■公開:2000年

■製作:オメガコミット、スターマックス、小学館、スペースシャワーTV、TOKYO FM、東映ビデオ

■製作:黒澤満、横濱豊行

■監督:Higuchinsky

■助監:李相國

■脚本:新田隆男

■原作:伊藤潤二

■撮影:小林元

■音楽:鈴木慶一、かしぶち哲郎

■美術:林田裕至

■主演:初音映莉子

■トピックス:でんでんが勤務する駐在所の壁にでんでんのサインが掲示されているが「でんでん」が誰だかわかる人が少ないというのが玉にキズである。

ネタバレあります。


 この映画はホラー映画ではない、お笑いホラー映画である。

 黒渦町には不思議な言い伝えがある。物憂げな、というかちょっと足りないんじゃないか?と思わせる主人公、五島桐絵・初音映莉子のナレーションで映画は始まる。いわゆる「やおい系」というのが「熱血UFO馬鹿様、こと、矢追純一っぽい何か?」という意味ではなく「ヤマなし、オチなし、意味なし」ということだと知ったのはつい最近。

 が、しかし、この映画を見ていると「矢追純一っぽい何か?」を感じてしまうのはなぜだろう?

 桐絵はまだ高校生であるが同級生の斎藤秀一・フィーファンがほとんど「許婚」というポジションで登場する。秀一の父親は「うずまき」に魅入られてしまった斎藤敏夫・大杉漣、その妻である斎藤雪枝・高橋惠子は「うずまき」ノイローゼ。桐絵の父親、泰雄・諏訪太朗は陶芸家である。桐絵を追い回している高校生は自信過剰気味かつ実年齢では三十路の山口満・阿部サダヲ

 敏夫が自宅で不可解な死に方をした日から、黒渦町全体が巨大な「うずまき」に呑みこまれていく。奇妙な事件が続発し、その取材に訪れた新聞記者の田村一郎・堀内正美にも「うずまき」は容赦なく襲いかかる。巡査・でんでんも桐絵の父も、次々とおぞましい姿で死んでいく。桐絵の学校でブイブイいわせていた関野恭子・佐伯日菜子の頭にも巨大な「うずまき」が発生し、「ヒトマイマイ」なる不気味というより爆笑できる謎の生物が出現。桐絵と秀一は無事に黒渦町を脱出できるのだろうか?

 いくら原作が「やおい系コミックホラー」だとしても映画はそうはいかない。タイトルどおり徹底的に画面を占有する「うずまき」アイテムを探す楽しみもあるが、映画のはじめと終わりが繋がっていて実は映画全体が「ぐるぐる」するようになっているんだよ、というオチがある。また、ヤマ場として考えられるのはホラーの女王というか、日本映画史上屈指のモンスター系ヒロイン、佐伯日菜子の活躍。

 高橋惠子の顔にあんなブッサイクな悪戯をしてしまったのはオールドタイマーズに対して相当なインパクトがあったかと推察される、大杉漣がどんな死に様を晒しても別に珍しくはないのに比べて。それにしても、画面全体に漂うレトロな空気は「亡霊怪猫屋敷」か「花嫁吸血魔」における新東宝(大蔵貢社長在任時)の見世物小屋テイストである。

 共通点は低予算。しかしこうした状況であっても、きちんとオチをつけて映画として成り立たせた先達の作品とは違い、それが単なるビンボー臭さに見えてしまっては台無しである。

 文字や絵柄の世界と違い、行間というものが存在しない映画というメディアでは「やおい系」は成り立たないし、単なるツマンネー映画にしかならないという見本のような映画。

 しかしながら、堀内正美という飛び道具を使用した功績は褒められて良い。

2003年08月03日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-08-03