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狸の大将


■公開:1965年

■製作:東宝

■製作:菅英人

■監督:山本嘉次郎

■脚本:山本嘉次郎

■原作:

■撮影:斎藤孝雄

■音楽:広瀬健次郎

■美術:村木与四郎

■主演:小林桂樹

■トピックス:


 喜劇映画には面白い喜劇映画と面白くない喜劇映画が存在する。

 面白いほうは、芸人の芸が面白いか、または、俳優が芸をするのが面白いのである。面白くないほうは芸人の芸が面白くないか、または、俳優が芸をしないのである。では、本来、芸人ではない俳優の芸とはなにか?それは、喜劇にのみこまれる事なく、まったく普段どおり、つまり持ち役に徹していることで結果的に、概ね映画の中で浮きまくることである。

 俳優の芸とは持ち役=持ち芸を、意識的にあるいは無意識にパロディー化することである。

 本作品は、コソ泥の秋山宇佐吉・小林桂樹と赤貧刑事の寿亀助・伴淳三郎を「ウサギとカメ」の寓話になぞらえた山本嘉次郎監督の喜劇シリーズ。警察署で女コソ泥の浪野ナミ・淡路恵子と臨時にコンビを組んだ宇佐吉が、偶然、かっぱらったスーツケースに拳銃が入っていたことから密輸団に拉致され、結果的に寿亀助を助けて拳銃密輸団逮捕に協力する話。

 すばしっこくていいかげんな宇佐吉、ドンくさいのが身上の亀助のコンビネーションだが、他社の事例を参照すると大映の「犬シリーズ」における、ウルトラキザ&長身の鴨井(田宮二郎)としょぼくれ&小柄な刑事(天知茂)の凸凹コンビがあるわけだが、基本的に「サラリーマン」的な東宝のオヤジコンビはどこか泥臭い、良くいえば庶民的。

 亀助の上司である警部補・藤木悠、警部・田島義文というのも通常、間抜けとコワモテのキャラクターなので持ち芸じゃないんだが、伴淳三郎を「間抜け」呼ばわりする藤木悠というのは面白い、つまり、最後までボケてくれない藤木悠ってかなり新鮮。宇佐吉が下宿しているワケあり(ってほどのこともないけど)の洋食屋の主人・有島一郎が放つ超テキトーなあちゃらかも今見るとツライものがあるが、あんまり面白くないを連発しててもなんなので面白かった個所を書く。

 クライマックスにひょいと出てくる若手ギャングの親分、森川・中丸忠雄。この頃になると「お、出た!」っていう感じ、出世したよなあーっつーか「こんなところで何やってんの?」って感じ。さて、その中丸さんですが本作品の直前に公開された「太平洋奇跡の作戦 キスカ」とはうってかわった(っていうかお馴染みの)ギャング(死語)役、つまり持ち芸。このほか周辺を固めるのが、寺田・伊吹徹、と神岡・桐野洋雄、さらに森川が経営しているアミューズメントビルの用心棒、刑事・田中浩という思いっきりなバタ臭い&見場の良い面々なので、東宝喜劇的でない雰囲気がムンムンしてて笑える。

 つまり、悪役っぽい俳優がゴロゴロ出てきてその中に刑事が紛れ込んでたりする意外性があったり、ギャング一味がまったく喜劇のノリにそぐわず持ち芸を披露してくれるんで、そういうところを期待していた筆者としては、ここが見所になったわけ。

 モンキースパナで中丸忠雄を襲撃したちんぴら・渚健二(後にテレビドラマとかで活躍)、イイ度胸だっ!、もちろん一撃をかわされて思いっきりな取っ組み合いになってましたが、立ちまわりの最中、微妙にタイミングがズレたんだと思うけど、中丸さんがマジ投げした凶器が渚さんの頭部スレスレに通過したときはちょっとビックリ。投げたほうが「ヤバっ!」と一瞬止まって見えた。いやーNGかと思っちゃいましたけど、擬斗で思いっきりセットぶっ壊した後だったんでそのままゴーだったかと、そういうところばっか見ててスイマセン。

2003年04月11日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16