仄暗い水の底から |
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■公開:2002年 ■製作:「仄暗い水の底から」製作委員会、東宝(配給) ■プロデューサー:一瀬隆重 ■監督:中田秀夫 ■脚本:中村義洋、鈴木謙一 ■原作:鈴木光司 「浮遊する水」 ■撮影:林淳一郎 ■音楽:川井憲次 ■主題歌:スガシカオ 「青空」 ■美術:中澤克巳 ■特殊効果:岸浦秀一 ■主演:黒木瞳 ■トピックス: |
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水を小道具に使ったホラー邦画といえば「液体人間」ですが(え?そうなの?ああそうだよ!)。放射能によって体の組織が水っぽく変容した人間は次々に仲間を増やしていくのだが、オリジナルの意志が残っているのがミソ。 淑美・ 黒木瞳は一人娘の郁子・菅野莉央の親権をめぐって夫の邦夫・小日向文世と離婚調停中。子供が幼稚園の年長さんくらいの年頃なら母親の勝率が高い、と弁護士・小木茂光から聞かされていた淑美だが、幼い頃の両親の離婚がトラウマになっているので気が気じゃない。 やっと見つけた娘と二人暮らしをするための新居は、要領の悪そうな不動産屋・徳井優が仲介した築ウン十年のアパート。天井には雨漏りのシミ、夜中に出くわしたらかなりビックリしそうな怪しい管理人・谷津勲もいて、普通なら借りないんだろうけど、早く生活を安定させないとずる賢そうな(少なくとも淑美にはそう見える)元夫に娘を取られてしまうし、幼稚園も近所なのでやや渋々ながら契約完了。 引越し当日から異変は始まる。空き部屋から聞こえる子供の足音、シャレにならない雨漏り(て言うか、水漏れ)、何度捨ててもひょっこり現れる赤いバッグ、監視カメラに映る影。もともとテンション高めの淑美の神経は、こうした出来事の連続攻撃でますます昂ぶってしまい、調停委員の前で元夫をつかまえて大暴れ。何者かの意志によりアパートの屋上へ向かった淑美は、一連の「水」にまつわる怪奇現象の正体を知ることに・・・。 似たような実際の事件があったのでちょっと後味悪いんだが、映画そのものはホラー(びっくりハウス)映画ではなく、母子型怪談映画。狂言回しの黒木瞳はその任務を過剰に果たしたといえるし、多少無理があってもこの人ならではのキャラクターと言うコトで世間は納得(たぶん)、ふだんは人の良さそうな小日向文世も出場は少ないけれど、こういう人が実は・・・的な残忍さがあって黒木母子を追い詰めるには適役。 ファンタジーが武器のホラー映画じゃなくて、リアリティのある怪談映画なので仕掛は少なめ、そこんとこ期待しちゃうとガッカリするから止めましょう。ただし母親恋しさの幽霊の顔は最後まで出てきて欲しくなかったなあ、だって「もずく」みたいなんだもん、思いっきり引いちゃった、ってか爆笑。予告編で大活躍した「タワーリングインフェルノ」もビックリの激流シーンですが、ハラハラしましたねえ、いやホント、ちっちゃい子供に何するかっ!で、ちょっと激怒モード。 エピローグ。すっかり成長した郁子・水川あさみ、良い芝居が全然できないのが奏効、実に薄幸そうでイイ、っていうか何があっても取り乱したりせずボケてくれそうな感じがヨシ。廃屋になったかつての事件現場を訪れるシーン。プロットは「異人たちとの夏」さらに、その偉大なるルーツ(だと筆者が勝手に決めてるだけですが)溝口健二の「雨月物語」にまで遡るトリップ感は、先達が女の執念がテーマなのに対して、本作品が母の執念という違いはありますが、日本映画のオールドタイマーズならちょっと笑っちゃうかもしれません。筆者としては、素直でヨロシイと誉めておき、思いっきり泣いてみました。 最初に戻りますが、どこいらへんが「液体人間」っぽかったかと言うと、誰も訊いてませんか?溢れ出した水がゴボゴボになるところ。何が出るかな?何が出るかな?って期待してしまったのであります。そういう映画じゃないですが(たぶん)。 黒木瞳の叔母役で原知佐子が登場、東宝映画ファン大喜び。 (2003年03月16日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16