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千姫と秀頼


■公開年度:1962年

■製作会社:東映京都

■制作:大川博

■監督:マキノ雅弘

■脚本:安田重夫、高橋稔

■原作:三上於菟吉

■撮影:山岸長樹

■音楽:斎藤一郎

■美術:鈴木孝俊

■特撮:

■主演:美空ひばり

■寸評:史実によれば千姫のほうが本多忠刻に惚れたらしい。


 まずはじめに言っておく。この映画のタイトルは内容を的確にあらわしているとは言えない。なぜならもう一人の主役である秀頼は映画開始後、約15分ほどで死んでしまうからである。「千姫(と秀頼)」くらいがちょうどいい。

 大阪城落城当日、千姫・美空ひばりは夫、秀頼・中村錦之助と一緒に自害しようとしていた。オッカナイ姑の淀殿・沢村貞子はすでに壊れてしまい、千姫をぶっ殺そうとする始末。そのころ、茶臼山に陣を張っていた徳川家康・東野英治郎は、孫可愛さにトチ狂ってしまい「助けてきた者には姫をプレゼントするぞおお!」と叫んでしまった。功名と姫を両方ゲットできると燃えた徳川方の若い衆の、中でも武闘派の坂崎出羽守・平幹二朗は顔半分ぶっ壊れるくらいの負傷もものかはで、千姫を救出した。

 家康の愛孫を嫁に貰い徳川の天下で羽振りをきかせたかった出羽守の望みは本多佐渡守・北龍二、平八郎・菅貫太郎、親子の頭脳プレーで阻止される。家康を唆した佐渡守の計略で出羽守の結婚話はなかったことにされ、ちゃっかり平八郎との縁談を進めてしまい、千姫輿入れの行列を出羽守の屋敷前へわざわざ迂回して通過させ、暴走猪状態の出羽守を誘い出して射殺する。

 本多親子の目論みを見破り、自分の運命をいいようにあしらわれた千姫は再婚相手に見向きもしなかったので、酒乱になった平八郎は病死する。江戸へ戻った千姫は、ますます徳川の顔に泥を塗りたいと思い、豊臣の重臣の居所をチンコロして褒美を貰った伊勢屋喜兵衛・明石潮や町人・南方英二(ちゃんトリのリーダー)を問答無用で斬り殺し、人気役者やイケメンの若い衆を次々に屋敷へひっぱりこんでは殺してしまった。もちろん実行犯は忠実な清水局・千原しのぶと家臣の上田栄之進・徳大寺伸だが被害者からすれば結果は同じ。

 「徳川の姫ご乱心・江戸のカマキリ夫人伝説」というスキャンダル事件に好々爺の家康もヤバさを感じるが相手は天下の美空ひばり、じゃなかった政略結婚の犠牲になったカワイイ孫なのでおいそれとは手が出せない。さらに怒り狂った千姫は長刀でおじいちゃんを直接脅迫、それを止めたは柳生但馬守・近衛十四郎だったが、そんな馬鹿姫なんか斬っちまえよ!近衛先生!という声が当時の客席からあがるはずもなく、両者ともによよと泣き崩れて、結局、千姫は出家して映画は終了。

 フィクションの世界で千姫といえばスキャンダルの女王という感じがなきにしもあらずだが、史実では、秀頼の死後、再婚した本多忠刻との仲はよかったみたいだし、再婚相手が早く死んでしまったのは気の毒だったけど、ようするに男運が悪かっただけなんだろうね。

 この映画では大スタアである錦之助の対抗馬が菅貫太郎と平幹二郎という新劇畑の長身&濃い系のどっちかというと悪役方面の人たちなので美空ひばりがいかに可哀相だったか?という映画にしようとしているのは明白、客も同意&賛成なのだ。当時のスタア映画なんてそんなもの、史実捻じ曲げるくらいお茶の子さいさいである。

 おまけ。豊臣の残党で浪人、片桐隼人・高倉健は、千姫が男狂いになったのではないかと思い徳川家の酒宴に乱入、千姫に無礼千万な言葉を投げつけて挑発するが、いまでも秀頼にラブラブな姫の本心を確認して自決する。当時、ひばりとユニットを組んでいた江利チエミの亭主だった健さんが美空ひばりに向かって「売女!」と叫ぶだけでもかなりのインパクトがあったのではないか?想像するに。

2002年11月17日

【追記】

2003年01月03日:修正。

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16