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源氏九郎颯爽記 白狐二刀流


■公開年度:1957年

■製作会社:東映

■制作:辻野公晴、小川貴也

■監督:加藤泰

■脚本:加藤泰

■原作:柴田錬三郎

■撮影:坪井誠

■音楽:高橋半

■美術:塚本隆治

■特撮:

■主演:中村錦之助(萬屋錦之介)

■寸評:「快傑ズバット」のルーツかもしれません。


 少年読本に連載された原作なので限りなくそのヒーローは漫画っぽい、て言うかほぼ東映テレビヒーローもののソレと言っていい。しかも何処とも無く現れて去るというコンセプトは後の「快傑ズバット」か、過剰にキザだしな。

 源義経の末裔、源氏九郎・中村錦之助は祖先が隠した財宝の正体を知る。薄暗い洞窟で秘剣をかざして太陽光を反射し在り処を探すところが「レイダース 失われたアーク」っぽいのだが、セットはちゃっちいので、時代を割り引いて見るように。

 その頃、大阪では尊皇攘夷がトレンドだった。世情の不安に乗じて一山あてようとする人たちがわんさといたのだが、貧乏貴族の今出川兼親・河野秋武と許婚の志津子・大川恵子は不逞浪人の新海一八郎・岡譲司、イカサマなリベラリストの犬山有隣斎・上田吉二郎に踊らされて、異人の娘、マリー・ヘレン・ヒギンスを襲撃、あやうく本物のテロリストになるところを突然現れた源氏九郎に救われる。

 そんでもって志津子が九郎の元彼女であったため事態はややこしい方向へ。豪商、播州屋・柳永二郎から賄賂取り放題でダメダメになった与力以上の上役に失望していた貧乏同心の幸田・里見浩太郎(現・里見浩太朗)が住む赤貧長屋へやっかいになることにした九郎は、借金のカタに売られる寸前のお鈴・丘さとみを助けるために、義経の遺産の一部を処分する。

 財宝ブームにイイトシこいた大人が目の色変えるのは時代を問わず。九郎を捕らえて痺れ薬を飲ませて財宝の在り処を吐かせようとした播州屋と、彼に踊らされた公家の桜小路忠房・中村歌昇は自ら仕掛けたトラップに転落死。甘い汁を吸いまくっていた伊藤紀伊守・明石潮とその一味をやっつけた九郎は志津子に別れを告げて悠然と去っていく。

 単なるキレイキレイな活劇かと思うと、湯殿に案内された錦之助のセミヌード(え?)とか、お付の女官の上半身がスケスケだったりするエロいシーンや、投げた小柄を頚動脈に受けて流血する柳永二郎なんてグロいシーンもあったりするので間違い無く本作品は大人向けと言える。

 ヒーローのテーマカラーといえば、白(戦隊モノは赤→仮面の忍者・赤影より)。白は汚れやすいので、洞窟で岡譲司とチャンバラしたりすると汚れちゃうんじゃないかと心配するのだが、カットが変わると全然乾いていて泥の一つもついていないところが凄い。いつお着替えしたんだろうか?それとも「魔法使いサリー」ちゃんのようにクローゼットに同じ衣装がズラリと並んでたりするんだろうか?

 てな具合にリアリズムとは対極にある、東映ヒーロー時代劇では変身しないのが不思議なくらいだが、お客サンは錦之助の目張りビシバシのマスクが目当てなのであまり問題ない。中村錦之助も「笛吹き童子」のヤング版という感じで照れもせず颯爽と演じているのが良い。演るほうが照れてると見てるほうはもっと恥ずかしいので、あれくらい堂々としててちょうど良い。

 第一作「源氏九郎颯爽記 濡れ髪二刀流」の続編。前作はモノクロだったが本作は堂々総天然色。河野秋武が演じる馬鹿公家に「柳生一族の陰謀」に見る馬鹿公家のツールがある(かもしれない)。

 このほか、悪の手先になる与力に巨漢がトレードマークの山口勇が扮する。「与太者と小町娘」でみみっちい鉱山主を演じた姿が懐かしい、何やってもどっか間抜けで憎めない。万事、おめでたく終わるかと思ったら善人の杉狂児があっさりと悪者たちに射殺されたのは可哀相。コメディリリーフの南利明由利徹の華麗なギャグ合戦のオマケ付。

2002年11月04日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16