反逆の旅

■公開年度：1976

■制作会社：松竹大船

■監督：渡辺祐介

■脚本：長田紀生

■原作：藤原審爾「よるべなき男の仕事・殺し」

■撮影：小杉正雄

■音楽：鏑木創

■美術：重田重盛

■特撮：

■主演：原田芳雄

■寸評：志垣太郎の飲みっぷりがイイ（映画と関係ないけど）。

　「天国と地獄」でも実証済みですが、警察関係者の「執念」というのは実に恐ろしいものですね。こういう映画見てるともう少し警察官の給料アップしてやったほうがいいと思っちゃいますけどね。

　大物総会屋を恐喝していた河村勇造・河村弘二が乗ったエレベータが事故で落下、河村（ま、なんてお手軽な？役名）は死亡します。良く似た事件が事故死で処理されたことを思い出し、長年のカンで殺人事件の可能性を信じた八木刑事・田中邦衛は上司の言う事も聞かずに後輩の根来刑事・志垣太郎とともに捜査を開始。

　八木刑事は同じ団地に住んでいる自称・玩具の開発者、加倉井浩・原田芳雄という男をマークします。職業に不釣合いな生活をしているのもさることながら、自閉症気味の息子が加倉井になついているのも八木刑事としてはカチンと来るところだったので、彼は加倉井を身辺を徹底的に洗いはじめます。

　完璧な仕事をしていたはずの加倉井でしたが偶然、ビルから出てきた彼を目撃した少女、矢吹しのぶ・高橋洋子がイキナリ、殺人を依頼してきたのにはかなりビックリ。しのぶは、自分を強姦した男を殺して欲しいと加倉井に依頼しました。加倉井は殺しの仕事から足を洗おうとしていました。政界の黒幕、溝口・佐々木孝丸の暗殺を渋々引き受けた加倉井は、溝口によって一家離散に追いこまれた野上・尾藤イサオを利用して仕事を成功させます。

　瀬戸内海の小島に引っ込んだ加倉井のあとを、しのぶと八木が追います。八木は加倉井に決定的な証拠を残させるためにトンでもない手段に出るのでした。

　孤児になったところを拾われて、闇の世界の組織で「殺し」を生業とするようになった男が、心の平穏を子供の笑顔や離島での生活に求めていきます。加倉井をとりまく二人の女、一人は組織を男を肉欲で繋ぎとめる足利遠枝・麻生れい子、もう一人は自分を強姦した男を殺してくれるように無邪気に依頼してくる矢吹しのぶ。

　二人の愛を失った加倉井が決然と戦いを挑む相手は、巨大権力である警察。暗殺組織の影が意外なほど薄いのがちょっと引っかかりますけど、ここんところは田中邦衛さんのねっとりした波動が勝っていたのでヨシとしましょう。

　汗臭い男の魅力ってば平成の世では見事に流行りませんが、原田芳雄からジーパンと汗を取ったら何が残るのか？と思ったら最近は丹波哲郎のような大人の魅力で若者どもを叱りつけているようです。しかしタイトルに「反逆」ってついちゃうのは「反逆のメロディー」に便乗ということでしょうか？それとも主演のイメージを優先した、というとこでしょうか？両方ですかね。

　かつて田中邦衛の下宿に遊びに来た加山雄三が劣悪な生活環境を見て、数分で帰ったと言う話をきくにつけ、貧乏がかまぼこのように板についている田中邦衛が演じる刑事の正義感を隠れミノにしたジェラシーが生々しくて素晴らしいです。インテリジェンスが暴走する「天国と地獄」の仲代達矢とはまた違った「イっちゃってる刑事」が堪能できます。

　ほか、いいかげん加倉井に利用されてしまうダサい野上とともに射殺される恋人役に横山リエ。

（2002年09月08日）

【追記】

※本文中敬称略

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