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よるべなき男の仕事 殺し


■公開年度:1991

■制作会社:ニューウェーブ

■監督:村川透

■脚本:永原秀一、満友敬司

■原作:藤原審爾「よるべなき男の仕事・殺し」

■撮影:高橋達美

■音楽:ボブ佐久間

■美術:沢路和範

■特撮:

■主演:加藤雅也

■寸評:つのだ☆ひろの主題歌が聴かせる。


 ルキノ・ヴィスコンティとヘルムート・バーガー、村川透監督と松田優作。ホモの話じゃありません、最強のパートナーを失った後、「獣たちの熱い眠り」でふっくらほっぺの三浦友和で無理を犯し、もうダメかと(そんなたいそうな)思われましたが、加藤雅也というスマートでストイックなルックスの役者を得て、村川監督、往年の演出カンが蘇った(ような)感じ?

 優秀な殺人マシーンの加倉井・加藤雅也は八木刑事・根津甚八と根来刑事・須藤正裕の追求が身辺に及んできたため、そろそろ足を洗おうと考えています。加倉井はある組織の所属しており、仕事の依頼は足利まゆみ・村上里佳子から受けています。加倉井はまゆみを愛していましたが、組織を裏切れば命の保証はありません。

 加倉井の次のターゲットは元アラブの石油王のボンボンで、以前に日本へ来たときは若い女を犯しまくったにもかかわらず外交的な圧力でまんまと帰国。被害者の中には自殺者まで出ていました。その男が今度は国賓待遇で再来日するらしく、まずは京都でゲイシャ・ガールを食いまくろうというのでした。しかし加倉井としてはそんなのどうでも良くて、自殺した女の弟でチンピラの野上・サブを唆して警察の注意をそらせた上で暗殺を実行しました。

 本作品は1976年松竹が制作した「反逆の旅」と同じ原作です。時代、ということもあるのでしょうが、昭和の高度経済成長の裏側というテイストだった全作品に比較すると、モダンでアーバンな雰囲気に現代語訳されています。特に、貧乏ヒマ無しを体現してかなり屈折した八木刑事のキャラクターが、犯罪者を追い詰める動物的な感性を持つ人物へ変化しているのが面白いです。ま、屈折してんのは同じかもしれませんが、追うほうも追われるほうも「マニアック」というのが村上透監督の十八番なので。

 いぶし銀のようなギャグのオンパレード「蘇る金狼」ほどでなくとも、凶悪の飛び道具、今井健二が蜂の巣にされる「殺人遊戯」のようにハードボイルドな主人公を盛り上げるにはそれなりの強烈な個性を持った悪玉が必要です。本作品における最大の不幸は、悪玉のキャラクターがあまりにも弱すぎた、ということでしょう。

 そも、なんで阿藤海が刑事役というのはいかがなものか?全然知らない外人さん、しかも人の良さそうな顔してるし、が喉首掻っ切られて死ぬなんて、きゃっ!残酷!むしろカワイソー、ってなっちゃうわけですね。

 ほら、もう、台無し!

 したがって、せっかくの殺しのテクニックや道具立ての派手さも、焦点がボケまくるわけですよ。で、結果としてはあの凡作「獣たちの熱い眠り」で奇跡と言われた石橋蓮司の「障害者ネタ」に勝とも劣らないギャグを期待していた観客(いたのかどうか)にとって、せいぜい組織の手先を装った根津甚八が自動小銃をイキナリ持ち出したくらいじゃ納得いかないものが大アリです。

 それを救ったのが根津甚八の不死身デカ、大爆笑できましたけどね。

 村川監督の場合、濡れ場の演出において女性が見ても上質のハードコアとして高く評価されることが多いと思われるのですが、今回のソレは何?瞬間的にドキリとはさせられるものの下半身のガードは重厚(え?)でプールで戯れてこれがホントの「濡れ場」でーす、って言われてもナー。

 と、そんなこんなも平成の村川透モノっていうことなのか?と自分で勝手にオチました。

2002年09月08日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-06-22