「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


暴動島根刑務所


■公開年度:1975

■制作会社:東映

■監督:中島貞夫

■脚本:野上龍雄

■原作:

■撮影:増田敏雄

■音楽:広瀬健次郎

■美術:佐野義和

■特撮:

■主演:松方弘樹

■寸評:懲りない人々がさらにパワーアップ。


 松方弘樹が脱獄マニアに扮し、本人の牧歌的なナレーション(または独り言)で進行する「脱獄広島死刑囚」に続くある意味、シリーズ第二作。今回は刑務所における囚人の待遇改善要求に端を発した暴動事件がメインフレーム。

 戦後の混乱期。街の愚連隊だった沢本・松方弘樹はやくざの幹部・名和宏をぶち殺して工事現場に埋めましたがあっさりパクられて懲役刑になり島根刑務所へ送られます。生意気な先輩囚人の吉成・金子信夫の態度が気に入らなかった沢本は作業中に吉成を撲殺、懲罰房へ入れられた挙句に刑期は加算。冷酷な看守長・佐藤慶やそのほかの看守は気分で懲罰を実行するトンでもないヤツらなので沢本は超ブルーな気持ちになり脱獄を決意します。

 敵対する組織の親分を殺した囚人の川村・北大路欣也は仮出所した当日、命を狙ってきたちんぴらたち・川谷拓三ほか、を射殺してしまい刑務所へ逆戻りします。

 沢本は無期懲役の囚人、皆川・田中邦衛と親しくなります。ある日、絞首刑場の掃除をしている最中に死ぬのが無性に怖くなった沢本は使役に出される途中で警官の制服を強奪して脱走。沢本は犬屋をしている江口・川地民夫と妹・賀川雪絵のところへ転がり込み、犬の交尾を見て興奮し妹を犯してモノにしてしまいます。江口から金を奪って逃走した妹と沢本はたまたま潜伏先で人命救助をしたことから身元がばれ、刑務所へ連れ戻されます。当然、刑期はまたも加算されるのでした。

 刑務所の中で尊敬されはじめた沢本は囚人たちのリーダーになっていきます。豚の飼育だけが生きがいだった皆川は、看守に飼育を禁止されて絶望し投身自殺。これをきっかけに囚人たちのしめつけを図った所長の三宅・伊吹吾郎は食事抜きの懲罰を与えます。食事だけが生きがいの他の囚人たちのストレスはピークに達してしまうのでした。

 釘を飲みこんで病院へ行こうとした作戦は芋を馬鹿食いさせられて失敗、そのほか相変わらず学習能力のない看守たちに徹底抗戦を挑む松方弘樹、という設定は「脱獄広島死刑囚」と同様です。

 刑務所ものには不可欠の「かんかん踊り」(素っ裸になり両手を挙げて、タバコや諸々の持ちこみ禁止物がないかどうか看守の前で飛び上がってアピールする行為)を実際にやらされる俳優さんたちも大変でしょうが、そんな男の裸は本作品では大盤振る舞いです。とにかく男だらけの画面にぼかしが入りまくるわけなので、こんなの見てて何が面白いんだかわかりませんが、今回はさらに裸の大群衆がうさぎ跳びの罰ゲームまであります。

 今回の見所は、東映城のプリンス、松方弘樹と北大路欣也の対決。動物並の知能程度と行動力の松方弘樹に対して、恋女房とのカタギの生活にあこがれる理性派の北大路欣也。なんとなく囚人服も欣也さんだけアイロンあててるような気がして、好対照です。そんな二人でしたが結局は体制側のペテンにはまり網走に送られてしまいます。

 しかし本作品は「脱獄シリーズ」ですからもちろん、二人ともそうは問屋が下さない、というオチがついています。

 二人のスタアが対決するシーンも面白いですが、脇のほうも目が離せません。最初は囚人イジメをエンジョイしていた現場の看守たちが、ようするに大学出のキャリアである所長の出世の道具にされるのが気に入らず、暴徒と化した囚人たちに同情というかシンパシーを抱くところも興味深いです。それを知性派の佐藤慶がやっているので説得力倍増です。

 このほか、戸浦六宏が前所長役で出演。脱走した松方弘樹が逃げ込んだ映画館(前作同様)の便所で「大」をもよおし個室の前で耐えきれずに大暴れする酔客に小松方正。どうも大島渚の一派はあんまり良い扱われ方してませんね。やっぱ東映のテイストからすると嫌いなんですかね「左翼(アカ)」は(「県警対組織暴力」の汐路章・参照)。

2002年09月01日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-06-22