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やくざ番外地


■公開年度:1969

■制作会社:日活

■監督:西村昭五郎

■脚本:永原秀一、浅井達也

■原作:

■撮影:安藤庄平

■音楽:真鍋理一郎

■美術:深民浩

■特撮:

■主演:丹波哲郎

■寸評:高宮敬二、元「歌う映画スタア」だけど踊りはイマイチ。


 丹波哲郎、最も出世した大部屋俳優。新東宝(まれに東宝映画もあり)では端役、脇役、敵役で活躍、怪談映画からサラリーマンものの喜劇までなんでもアリ。その多彩すぎるキャリアにおいてほぼ真面目に、地方やくざの大物とかそういうんじゃなくて中間管理職としての「職業やくざ」を演じた数少ない作品(てか本作品くらいなものかも?)が本作品。

 東京の多摩地区を縄張りにしている高瀬組を傘下にすべく、東京23区を牛耳る野見組の大幹部、村木・丹波哲郎とその片腕の殺し屋・高宮敬二は多摩の地元の愚連隊リーダー、沢地・永山一夫を唆して「血生会」というグループを組織させます。高瀬組の組長、高瀬伊作・清水将夫の息子、信司・長谷川明男が出所してくる前にケリをつけろ、と野見組、組長の野見幸次郎・柳永二郎が村木に厳命しているので、村木は血生会に大暴れさせて高瀬組の縄張りをあらしまくります。

 村木は高瀬組の幹部、塚田・佐藤慶と兄弟分なのであまり荒っぽい事はしたくないのですが、親分の命令なので高瀬組の組長を暗殺したり、幹部の堤・郷^治を射殺したり、やることはちゃんとやります。村木の妹の冴子・山本陽子はやくざは嫌いですがお兄さんは大好き。ところが冴子がひょんなことから高瀬組の信司と恋仲になってしまったため、嫌々ながらやくざの抗争にまきこまれてしまうのでした。

 友情と義理の板ばさみだなんて、正直な話、都会的なセンスの丹波哲郎にはまったく似合いませんし、そらまあ歳は上かもしれませんが柳永二郎に顎でこき使われたり、命令されて頭を下げるという姿にも、もともと任侠とは無縁のヌーボーとした大人のムードが炸裂しているヒトですから、見ているほうとしてなんとも違和感があります。佐藤慶が最後まで裏切らなかったという珍しさも手伝っているのかもしれませんが、とにかく東映のやくざ映画になれているとかなり目新しい映画。

 監督の西村昭五郎はロマンポルノで有名ですが、きらいな仕事を断りつづけたり、「残酷おんな情死」で正面切ってレズビアンを描いたりする曲者、のわりには娯楽映画をバカすか撮ったりもするわけで、ようするにスタア監督というのではなく低予算が身上。本作品も出演者がかなり地味です。しかしながら、東映の仁侠映画に見られるひたすら「男臭い」演出ではなく、堤の恋人があっさり敵方の幹部・深江章喜に寝返ったり、塚田の女房・小畑絹子が冴子をかばって憤死したり、若いもの同士のロミオとジュリエット的な恋物語など、女性を添え物にしないところや大人に反抗する若者、といった日活テイストが炸裂します。

 ま、予算のほうは会社全体がかなり右肩下がりですからいかんともしがたいところでしょうが。

 徹頭徹尾、佐藤慶が善玉の被害者だったり、体制側のイメージが強い丹波哲郎が妹のために正体なくしてしまうアットホームなキャラクターというのもこれまた珍しいと言えましょう。

 ところでこの映画で実は一番注目していたのは、丹波哲郎の側にピタと寄り添って一言も台詞がなく、長谷川明男恋しさに家出してしまった山本陽子を目立つタッパで尾行したりする高宮敬二です。元新東宝、つまり丹波哲郎および小畑絹子とは同窓生にあたります。で、その高宮さんですがスナイパーとしても一流、なのですが小畑絹子の店でジュークボックスから流れる楽曲にあわせて踊るその姿に一片のリズム感も感じられないところが大爆笑。新東宝時代、同じハンサムタワーズの菅原文太はわりと上手に踊ってたんですけどね。

 最後は身内や友人を殺されまくった丹波哲郎が、お金で縄張りを売り飛ばした親分衆を全滅させて幕。大勢にやられてしまう丹波哲郎ってもの、やっぱ珍しいかも。ちなみにシリーズの続編は「やくざ番外地・抹殺」こちらでは早々に親分へ出世した丹波哲郎、同じプロダクション(侍プロダクション・当時)の舎弟・中丸忠雄と日活の大スタア・渡哲也を従えて大暴れ。

2002年08月18日

【追記】

※おまけ…高宮敬二(と吉田輝雄の)関連情報

往年の映画スター「ハンサム・タワーズ」が復活
(2002年05月05日、サンスポ)

ハンサム・タワーズ、復活−。かつて菅原文太(68)らと「ハンサム・タワーズ」として映画界で活躍した俳優、吉田輝雄(66)と高宮敬二(69)がユニットを組み、新曲を発売することが4日、わかった。歌手、五木ひろし(54)が作曲した「おまえに逢えて」(徳間ジャパン)を6月26日に発売。7月7日に大阪・たかつき京都ホテルで新曲発表会を行うほか、老人ホームからホストクラブまで異色のキャンペーンも企画している。

また、カップリングの「親友(とも)よ」は“同期の桜”の友情を描いたもので、「敬ちゃん 輝ちゃん」と呼びかけるセリフも。かつての同僚、文太からも「2人合わせて135歳だが、がんばってくれ」と激励されたという。今後は、老人ホームから東京・新宿のホストクラブまで異色キャンペーンも企画。高宮は「ハンサム・タワーズじゃなく、シルバー・タワーズかもしれないけど、シルバー・パワーですよ」とヤル気満々だ。

★CD買ってね!けど、ホストクラブでキャンペーン、ってスゴすぎ、、(こたつさん・談)

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-06-22