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御用牙 鬼の半蔵やわ肌小判


■公開年度:1974

■制作会社:勝プロダクション

■監督:井上芳夫

■脚本:増村保造

■原作:小池一夫、神田たけ志

■撮影:牧浦地志

■音楽:桜井英顕

■美術:下石坂茂典

■特撮:

■主演:勝新太郎

■寸評:按摩が集団で借金取立てにくるシーンが物凄い。


 北町奉行所の隠密廻り同心、かみそり半蔵・勝新太郎は、島抜けしてきた弱みを握られて酷使されるある意味、気の毒な手下、鬼火・草野大悟とマムシ・蟹江敬三が目撃した女の幽霊を捕らえます。もちろんそれは偽者の幽霊、かつ、生身の女性。そして発見場所は公儀御用金蔵の目と鼻の先。おまけに小判が詰まった竹筒まで発見してしまった半蔵は、偽幽霊を尋問することにしました。

 偽幽霊は金庫番をしていた下級武士、加藤・戸浦六宏の妻でした。薄給の加藤は何者かに唆され、仲間と一緒に御金蔵から金を盗み、竹筒に隠して河へ投げ込み、その見張り役を妻にさせていました。加藤は半蔵に犯された(っていうか尋問された)妻を殺し、仲間とともに半蔵を暗殺しようとします。しかし半蔵のカラクリ屋敷のトラップに暗殺団は全滅、一人残った加藤が事件の全貌を自供しそうになったところを、さらに黒幕に近い凄腕の男・成田三樹夫がその口を封じてしまいます。

 盗まれたお金の使い道と黒幕を探っていた半蔵はオハイソな有閑マダム、つまり幕府の高給役人たちの妻が検校・小池朝雄の邸宅で開催される乱交パーティーに参加していることを知ります。半蔵は老中、堀田備中守・名和宏の妻、弓・緑摩子を脅迫して、検校と備中守の悪企みの証拠をつかみます。

 盲目の検校の目の前で弓を犯す半蔵の大胆かつアイデアの勝利、名より実をとるドライなセンス。この映画シリーズの見所は、やってることはトンでもないけど正義の味方である性豪ヒーローのキャラクターの魅力に尽きます。

 半蔵の武器は男性自身、叩いたりヒヤしたり、米俵に穴あけたりと、「子連れ狼シリーズ」っていうか小池一夫の劇画世界をそのままスクリーンに焼きつけんとする関係者の並々ならぬ意欲が感じ取られてアッパレです。

 いきなり半蔵にクルクル回されてしまう女性容疑者の悲鳴が「やめてやめて」後「続けて、、」に変化してしまうのはお約束です。戸浦六宏さんの奥さんとして出てきたのが、森雅之の娘(と言われている)で「愛のコリーダ」で活躍した中島葵、以下、坊主と乱交しちゃう奥様たちが司美智子、水城マコというロマンポルノ系の女優さんで固めているので、相変わらずヤリ放題な半蔵ですが、本当に突っ込んじゃったのは緑摩子だけでした。

 シリーズ3作目ともなればマンネリになりそうなものですが、先述した「子連れ狼シリーズ」然り「座頭市シリーズ」然り、映画の天才児・勝新太郎の手にかかればその旺盛なサーヴィス精神とアイデアによってエスカレートすることはあっても、ハズレはありません。

 今回は貧乏浪人の悲哀にサラリーマンの共感を得、また、命を賭けた西洋かぶれの医者・高橋悦史の大砲製作に協力したり、実直な友達・山内明の敵討ちをしたりと、エロとバイオレンスとカタルシスがてんこ盛りです。

 いつも思いますが、勝さんは共演者の使い方が素晴らしいです。嫌味な上司、へびの孫兵衛・西村晃、草野大悟や蟹江敬三、そして悪役の小池朝雄、名和宏にもちゃんと見せ場を作ってあげます。特に、あの石井輝男監督の手になる史上最強の空手映画「地獄拳」で物凄い殺され方をして場内を爆笑の渦に引きこんだ名和さんは今回も相当に間抜けなヤラレ方です。名和さんってホント、大人(感心)。

 にしても、実行犯以外はほとんど人を殺さないで事件を解決してしまう半蔵のやる事は強請りタカリに強姦魔のソレですが、悪人どもに善人を殺させまくり罪を重くしてからノコノコ出て行く水戸黄門に比べれば、よほどまっとうな正義の味方であると申せましょう。結果的に死人の山を作ってもやり口が綺麗なら正義の味方と呼べるのか?やはりディティールよりも結果が大事なのでは?

 検校の悪辣な高利貸しの業務をサポートするのは古川ロック(古川緑波の実子)をリーダーとする按摩軍団。哀れなメクラの金を返せ!と集団で取り立てにくる姿が凄いです。思わず「不知火検校」を思い出してしまいました。

2002年08月11日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-06-22