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□公開年:1968

□製作会社:東宝

□制作:田中友幸

□監督:森谷司郎

□脚本:橋本忍

□原作:正木ひろし

□撮影:中井朝一

□音楽:佐藤勝

□美術:阿久根厳

□主演:小林桂樹

□トピックス:原作者=主役、小林桂樹がほっぺたブルブルさせて大熱演。


 昭和十八年、まだ戦争中の日本の炭坑で、鉱脈の見当をつける優秀な技術者でもあった工夫、奥村登・宇留木康二が賭博容疑で連行され取り調べの最中に脳溢血で死亡します。死因に疑問を抱いた同僚の工夫・小川安三や遺族、そして鉱山の持ち主、静江・南風洋子らは、印刷所の社長・今福正雄の紹介で、東京の弁護士、正木ひろし・小林桂樹に調査を依頼します。

 正木が調べていくと地元の警察は思いっきり非協力的であり、ライバルの鉱山主と県警幹部の癒着もあって、オマケに死体の解剖を求めると、田代検事・神山繁もなんか全然協力してくれなくて、どうやら警察による拷問死の可能性があるとにらんだ正木は東大教授・三津田健に法医学の権威を紹介してもらいます。ところが正木が現地に赴く情報が事前に漏れていたらしく、地元の医者・大滝秀治が死体を先に解剖、検死の結果を「脳溢血」と断定してしまったのでした。

 東大の法医学の権威・佐々木考丸のアドバイスで「もう埋葬されちゃったんなら、首だけでいいから持って来れない?」ってずいぶん無茶言うなあと思った正木ですが、先輩弁護士・清水将夫から死体損壊の罪と警察の妨害をも心配されてしまいます。正義のためにパワー全開となった正木は、遺体解剖のベテラン助手を共犯にしないように気を配りつつ、墓を暴いて首を切断、東京へ持ち帰ります。

 モノクロームって迫力ありますよね、なんかドキュメンタリーっ!て感じがします。色が無いから余計にアレコレ想像しちゃうんですよね、あの、ノコギリで首をゴリゴリっていうシーン、カラーだったらグロいだけでしたけど、作り物とは分かっていてもホルマリン漬けの首とか、随所の本物っぽさはさすが原作者=弁護士、が主役だけのことはあるなあ、と。

 それと周りもソレらしい人で固めてますからさらに「ソレ、らしい」です。佐々木考丸、清水将夫、三津田健、神山繁、加藤和夫といういかにもインテリゲンチャやプチ官僚な人たち。下川辰平、今福正雄、小川安三のプロレタリアートなムードも切々としていて適役です。

 映画ってこういういろんなキャラクターが出てくるところが面白さの一つですよね。同じようなキレイキレイな人たちをズラーっと並べた人気ドラマには(ま、それも好き嫌いですけどね)ちょっとこういう「味」っていうのが無いですから。

 青春ドラマあたりで落ち付くのかと思ったら、森谷司郎、やっぱ師匠(黒澤明)の弟子だったのかと、後の「日本沈没」における、骨太カラーを予感させる映画。

2002年07月07日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-06-21