超高層のあけぼの |
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■公開年:1969 ■製作会社:日本技術映画社(カジマビジョン)、東映 ■制作:岩佐氏寿 ■監督:関川秀雄 ■脚色:岩佐氏寿、工藤栄一 ■原作:菊島隆三 ■撮影:仲沢半次郎 ■音楽:伊福部昭 ■美術:中村修一郎 ■主演:池部良 ■トピックス: |
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かつて東洋一といわれた東京の霞ヶ関ビルもいまではわりとフツーのビルですが、建った当時は凄かったんですね。とにかく日本初「地震国の超高層ビル」東宝なんか(正確には宝塚映画ですけど)そのネタで「37階の男」なんて大人のお色気ドラマまで作っちゃいましたから、当事者の皆様の感激はいかほどであったかと察するわけです。 帝大の学生だった古川・山本豊三は関東大震災で倒れなかった上野の五重塔を見て感動し、耐震設計の権威となります。教授になった古川・中村伸郎は鹿島建設の会長・佐野周二から、過密する東京の都市問題を解決するために超高層ビルを建てて欲しいと依頼されます。 本作品は単なる記録映画かと思いきや、ゴージャスな出演者に驚かされます。 現場のリーダー・池部良、池部良の妻・新珠三千代、H鋼の開発に携わる若手研究者には木村功、池田俊介。三井不動産の社長・松本幸四郎、鹿島建設会長婦人・三宅邦子、大手企業重役・柳永二郎、三井不動産の工事部長・丹波哲郎。このほか二本柳寛、内田朝雄、鈴木瑞穂、根上淳、渡辺文雄、菅井一郎、花柳喜章。偉い人だけでなく現場のとび職人・伴淳三郎、小林昭二、小林稔侍。さらに相馬剛三、河合絃司、寺島達夫、南廣。歌舞伎から新派から東映東京の常駐俳優まで、なんでもアリって感じの(東映)オールスタア映画。 実物とシミュラーな世代の俳優を使っていることがさらなるリアリティを醸し出してヨシ。とってつけたような「昔の人」じゃないところがポイントですね、っていうか今のヒトが見たら「みんな本物ですか?」とか思うかも、知らんだろー今どきの若い衆は、柳永二郎とか先代の幸四郎とか、あまつさえ中村伸郎は。でも丹波さんみて一発ぶち壊しかもしれません、テレビって残酷。 ご祝儀色の強い映画ですから、悪く言われる人は全然いません。とにかく感動、感動の嵐です。もちろん現場の大変さとか、当時の霞ヶ関ビルのステータスを疑似体験するには正当な演出だと思いますが、どんな映画にも完璧というのはないわけで、どっかしらにツッコミがいのある人なりシーンなりというのは存在します。 そしてそのキーマンが後に出世してたりなんかすると、話題性もアップ。 高給につられて田舎のダム建設現場からクレーンオペレータとして来た若い衆・田村正和。ヘルメットに地下足袋姿がこれでもかとハマリまくる東映東京の屈強な俳優たちにまたもや馬鹿にされまくり、操作ミスで怪我人を出し、落雷におびえて半狂乱になるなど大活躍でした。それでも一応、任務を全うしイカす彼女をゲットできたのはさすが、二枚目俳優として伝説化されるだけのことはありますね。 もともと知性的なキャラクターの中村伸郎はともかく、現場監督が池部良というのが凄いですよね。だって全然、理系に見えません。彼の口から難解な技術用語がスラスラ出てくると「コイツ本当に分かってんのか?」と思わず不安になってしまいましたが、なにせあーゆー明るい人柄ですからなんとなく、この人のためならガンバローっていう気になって妙に説得力があるのがポイントです。人を動かすのは正論や技術論ではなく、人柄であるという、いやはや映画って本当に勉強になりますね。 しかもこの映画、2時間もあるんですよ。それでも飽きさせず最後まで見ちゃうのはやはり「事実」のもっている迫力のなせるわざと言うものでしょうか。企業でくすぶる中間管理職の煩悩を刺激する「プロジェクトX」(NHK)の原点と言えるのはこの作品?戦後日本経済の繁栄史を知る上でも、ある意味、とってもオトクでタメになる映画です。 (2002年07月07日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-06-21