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神火101 殺しの用心棒


■公開:1966年

■製作:松竹(大船)

■制作: 杉崎重美、斎藤次郎

■監督:石井輝男

■助監督:田中康義

■脚本:国弘威雄

■原作:蘆森葆

■撮影:平瀬静雄

■音楽:八木正生

■美術:森田郷平

■主演:竹脇無我


 「国際冒険家」って何なんでしょうね?チョモランマに無酸素で登るわけでもなし、この映画における竹脇無我の「職業」なんですけどね。ちなみに趣味で正義の味方をしてるキャラクターの代表って「旗本退屈男」ですけど、この映画の主人公もそういうマインドの人なんでしょうね。ま、いろいろ理由をこじつけてもね、石井輝男監督ですからね、無駄ですよね。

 国際的な偽札組織の本拠地は中国返還前の香港。某国の総領事、郭・大木実はひそかに神火というCIAみたいな組織のエージェントを偽札グループにもぐりこませますが、証拠の録音テープと写真を強奪されそうになり、当のエージェントは射殺。証拠品はめぐりめぐってバニーガールの阿蘭・吉村実子の元へ。

 阿蘭の恋人でプレイボーイのサン雷・竹脇無我はそこに国際的な陰謀を感じ取り果敢に事件の渦中に身を投じます。

 てなわけでペーパーコミックスのノリで危機また危機、冒険につぐ冒険というアクション映画。どこかしらに「ええとこのボン」という雰囲気が漂う竹脇無我が主演したフリーランスの和製ジェームス・ボンドですが、この主人公は無所属なのでどうもその、事件に絡んでいく動機が見当たりませんね。いっそ金目当てで集団強盗まがいのことまで平然とやってしまう正義の味方「ザ・ゴリラ7」(第1話の監督は石井輝男)のようなアナーキーな活躍にしてしまいたかったんでしょうけれど、どうも無理がありましたね、キャラクター的にも会社のカラーでも。

 竹脇無我はとても頑張ってるんですが、「神火(しんか)」という組織のナンバーワンエージェント、杜・吉田輝雄のほうがなんぼかプロっぽくてカッコよかったですし、サンパン(アバディーンにいっぱいいる木造船のこと)で水上生活をしている人たちの頭・嵐寛寿郎の存在感は、ただでさえ頼りなさげな、そこが甘いムードでいいんですけど、主役に対して大人の存在感を爆発させて食ってしまうという、いやはや「夜を狙え」といい本作品といい、竹脇無我としてはかなり割り食っちゃいましたね。

 ボンド映画なんだから(って勝手に決めてますが)もうちっと、その、モード・アダムス(筆者認定・ボンドガールのナンバーワン)みたいのなんて贅沢は言いませんけど美人女優を拝みたいものだなあと思いますよね。ヒロインの吉村実子はややチンパンジー系なので、ここでは某国の大木実の愛人、現地女優の林翠は美人でスタイルも良くて期待してみてましたけど吹替えの来宮良子さんがピッタンコでこっちのほうが真性ボンドガールでしたね、だってボンドガールって「寝返る」のがお約束ですから。

 偽札組織を追い詰める過程で敵のチンピラ・藤木孝が裏切りそうになったり、スナイパー・菅原文太がクールに活躍したり、とここでもやっぱり主役が目立たないんですね。サン雷とのくされ縁的な香港警察の警部・高松英郎は「ルパン三世」の銭形警部ソックリ。ほかには偽札組織の幹部でドラムスティックを武器に闘う悪役に「嵐を呼ぶ男」で裕次郎と対決した笈田敏夫、高英男先生と並んで石井監督とはお馴染みのミュージシャンが出演。

2002年06月08日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16