「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


蛇女


■公開:2000年

■製作:円谷映像

■企画:石川博、円谷粲

■監督:清水厚

■助監督:神園浩司、鈴木朋生、湯沢聡、柿田裕左

■脚本:小中千昭

■撮影:西久保維宏

■音楽:中川孝

■美術:吉田直哉

■主演:佐伯日菜子


 「蛇女」というタイトルを聞いてすぐに楳図かずおの「ママがこわい」を連想してしまうわけですが、ちなみに楳図かずおの原作では「蛇娘と白髪魔」(1968年・大映)という名作があります。「蛇女優」と言えば「青蛇風呂」「白蛇小町」に主演した毛利郁子、中川信夫監督の「怪談蛇女」、「縄と蛇」は団鬼六、とまあ蛇と映画というのは因縁浅からぬものがありますね。しかもいずれも「女」がキーワードでありますね、アダムとイヴの昔から。

 スーパー(のチラシ)モデルをしている文・佐伯日菜子は、ある日、彼女に興味を持っている大学の助教授、守宮一樹・石橋保の家に招かれます。そこにはいかにも怪しい若い女、助教授の妹と名乗る匡子・夏生ゆうながいました。途中で蛇に襲撃されて無様にコケた(本当に捻挫したそうですが)文はそのまま一樹の家に泊まる事になりました。

 あーやっぱ兄貴の恋人ってドキドキだよねー、などというスイートなラブコメを期待する人は、冒頭から薄暗い、まるで実相寺昭雄の映画みたいな、いつどこから清水宏治(アテ字でスイマセン)が出てくるんじゃないか?とドキドキ(別の意味で)する画面を見ていればまずいないでしょうが、夜中に目がさめた文が目撃したものは、そらもうえらいモン見てしもた!な光景でした。

 近親相姦ってヤツ?なわけで兄妹の禁断ワールドを目撃してしまった文はほうほうのていで一樹の家を脱出します。そんな男に「付き合ってくれ」って言われてもナー、ということで丁重に厳しくお断りした文ですが、一樹はそうは行かなくてとうとう家出してしまいます。匡子のジェラシーは当然、文に向けられます。

 佐伯日菜子の口からトンでもないものがゲロゲロと出てきたときはちょっと気持ち悪かったんですが、この映画、特殊メイクよりも女優の素の顔のほうがなんぼか怖いという極めて珍しい映画です。佐伯日菜子さんと菅野美穂さんはその道ではすでに大家と呼んでもいいくらいのような気がしますが「静かな生活」から何が彼女をここまでにしたのでしょう。「トリック」で血ゲロ吐いたのがヤバかったのか?なんて気もしますが、見ているほうとしては根っから好きなんだろうな?という前向きな姿勢がスクリーンから垣間見られるのが救いです、っていうか本当楽しそうですが、大丈夫なんでしょうか?別の意味で。

 恋のライヴァルになる夏生ゆうなさんのほうは、情の濃い顔なのでこれまたキレたら怖いを体現していてなかなか素敵です。もう21世紀の日本映画はアイドル→落ち目→ヌードなんて定型ルートではなく、アイドル→オカルトホラー→メロドラマとか、何でもアリですから別に心配要らないのかもしれませんが。

 先述しましたが実相寺っぽいワールドだというのは、この映画の監督が実相寺の一派なのでむべなるかな、ですがなにせ笑えたのは「題字:実相寺昭雄」というクレジットです。劇場版「ケイゾク」で「黄泉の国」という色紙の下手糞な字が竜雷太の手になるものだとエンドロールで知ったときはもう大爆笑しましたが、今回のソレもかなり近いものがあります。

 ジャパニーズホラー映画の浮遊霊、こと諏訪太郎は今回もわりと重要な、っていうかこのオチのない映画の狂言回しとして登場します。

 映画のクライマックスはとりとめのない本作品の全編を通じてオトスには意外性という点でもビジュアルでもパンチ力不足という感は否めません。「催眠」で天井から降ってきた菅野美穂さんクラスの「おどしのテク」くらいは見せて欲しいものです。血まみれ美少女ホラー映画はいつになったら「キャリー」を凌駕できるのでしょうね。しなくてもいいですけどね。

2002年06月08日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16