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夢で逢いましょう


■公開:1984年
■製作:一瀬隆重、植岡喜晴
■監督:植岡喜晴
■脚本:植岡喜晴
■撮影:植岡喜晴
■美術:和賀健夫
■音楽:向井千恵
■主演:紀秋桜


 実兄(たぶん)である本町杢太郎・辰己琢朗によれば彼の妹、より子・紀秋桜は「パーだけど元気なので全然心配いらない(そうか?)」女の子です。杢太郎は「うたかたの花」を探すために生活を捨てて(つまり妹を捨てて)当て所ない旅に出ます。より子は兄を追って天国へ行きます。

 このあたりから、現実ともなんともつかないヘンな神様たち・槍魔栗三助(生瀬勝久)、夢の倫理委員会(略して夢倫)の人たち・はりけーん・ばんび(川下大洋)、上海太郎、より子を愛する村上・神戸浩、そして夢の見過ぎで死んだ人たち、宮沢賢治・あがた森魚、サン・ディグジュペリが次々に登場してきます。

 8ミリの眠たい画面が2時間も続くのでどうしたものかと思いますが、最後のオチはわかっていてもなぜかホッとしました。アナログ映像のノイズに心休まる2時間、やっぱ光学フィルムって好きだな。

 この映画に登場するのは「劇団そとばこまち」。筆者がこの劇団を知ったのは「テレビ広辞苑」(この頃の団長は上海太郎)という関西限定(半年くらい遅れてCATV、さらに3ヶ月遅れて関東でも地上波の深夜枠で放送)のテレビ番組でした。この後、「現代用語の基礎体力」「ムイミダス」「未確認飛行ぶっとい」と続いていくのですが(少なくとも関東在住の筆者にはこの順番でした)ここで関東人の多くが関西系の劇団の人とサブカルチャー系の文化人を知ることになります。

 で、つまり本作品のことは話に聞いていた程度、で、今回やっとこさ見たのですが、いやあコレって公開当時見てたら絶対に誰が誰だかわからなかったと思います。あ、大学の先輩、かつ、本作品ではオカマの悪魔を演じる手塚真利重剛、あたが森魚は知ってましたけど、きっと途中退場したかもしれません。やっぱ知ってる顔がいないとわけわかんない映画じゃないかと思うんですね。と言うか、知ってるとさらに面白い。大阪の演劇事情に詳しい方ならば語り倒しちゃうくらいじゃないかと推察されますが。

 1ロール2分強の8ミリで2時間、編集作業を想像するに頭がくらくらしてしまいますが。

 メーテルリンクの「青い鳥」の正体を知った杢太郎がより子のために買ったプレゼントがホタル。ホタルは人の霊魂を象徴しているのですが、実態は足の裏からにゅるるーんと出る青い塊に過ぎない、そんな死生感がチープなんだけどどうにも心に残る、わかりやすい表現で繰り返し登場します。

 他人の哲学を聞かされるくらいダルいものはありませんが、しかし関西弁って偉大ですね、エラソなこと言ってても尊大に聞こえませんもんね。

 哲学的なギャグ満載の中で、悪魔が杢太郎に見せる「夢に溺れて死んだ男たち(なぜか男だけなんですけどね)」の霊魂、「ニジンスキー、チャーリー・パーカー、、、」と次々に出てきてイキナリ「岸田森」ってのは爆笑でした。やはり演劇人としてはその名前、出さずにはおれないってところでしょうか?それともファンなの?なら、もっと素敵。

 見終わってからちょっと(※ネタバレ気味なので伏せ字にします)[天国への階段:昏睡状態になった軍人=デビット・ニヴンが天国と現実界を行き来する夢の中の出来事]を思い出してしまいましたが、下級天使・ひさうちみちおのマッタリとした笑顔が魅力です。

2002年05月15日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16