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籠女(KAGOME)


■公開:2000年
■制作:徳間ジャパン
■製作:永森裕二、八木欣也
■監督:佐々木浩久
■脚本:佐々木浩久
■原案:小沢和義
■音楽:ゲイリー芦屋
■美術:藤原慎二
■特撮:
■主演:吉村美紀


 石井輝男監督の「地獄」の冒頭、「女真珠王の復讐」でセクシーボムだった前田通子さんが出てきたときには腰抜かしましたが、いやあ元気で何よりですよ、「憲兵とバラバラ死美人」で鬼畜憲兵役だった江見俊太郎。

 さて、本題です。

 幼い頃に失踪した父親の所在を知らせる1通の手紙。大学で講師をしているレイコ・吉村美紀が婚約者とともに故郷を訪ねると、そこにはあきらかにイッちゃってる幼なじみと、謎の石碑。何かいわく因縁ありそうな寺の住職・江見俊太郎の警告を無視して石碑を調べる三人の前にイキナリ現れたレイコの父・下元史郎。「悪魔に憑かれている」幼なじみは父によって重症を負い、逮捕された父は精神病院送りに、、。

 早い展開です。そして顔面包帯女がレイコの夫を強姦して惨殺、謎のビデオとレイコの妊娠。刑事・小沢和義とともに再び故郷へ戻ったレイコを待ちうけていたものは!

 なんだかワクワクしてきませんか?祟りで発狂しちゃうとか、腹からなんか出てくるとか、鎌が刺さるとか。「美女の顔面包帯」と言えば「花嫁吸血魔」の池内淳子さんを思い出してしまいますが、このように新東宝の怪談映画をこなしている観客にとって、本作品はそこはかとなく鼻の奥がツーンとするような懐かしさがあります。それはもう郷愁と言ってもさしつかえないかもしれません(え?)。

 おどろおどろしくて安っぽいタイトルバックもイイ感じです。真っ赤な血飛沫に「KAGOME」と出たら普通はトマトジュースを想像してしまいますから、コレが狙いだとすると「坊ちゃん」のタイトルバックで「池に下駄落とした」くらいのクリーンヒットかと思われます。食品メーカーのKAGOMEからクレームが来るのではないか?という心配がなきにしもあらずですが。

 「発狂する唇」では石井輝男テイストを多方面で指摘された佐々木浩久監督ですが、新東宝エログロナンセンス路線はとどまるところを知りません。ところで新東宝映画といえば、英国ゴシック&ゲテモノ・ホラーの殿堂・ハマープロダクションのようなB級テイストが代名詞ですが、歴史は繰り返すと申しましょうか21世紀の作家によってこうもイキイキと復活させられるとは、さぞや大蔵貢社長も草葉の蔭で苦笑されていることと思います。大衆の娯楽、それが商業映画の原点であると、世紀末のデカダン&何様芸術映画を経てやっと俺たちの時代が来た!と浮かれている一部のヲタクな人々(筆者を含みます)にとって本作品はかなりオススメできる1本です。

 ただし筆者としてはやや不満と申しましょうか、「発狂する唇」の時には「平成の田宮二郎」(筆者推薦)こと阿部寛という鑑賞できる男前がいたのですが、本作品にはそれらしきモノがないのでやや物足りないものがあります。ところで、先に挙げた「花嫁吸血魔」はあきらかに池内淳子さんに対する何かドロドロとしたものを感じるのですが、こういう映画でトンでもないことをさせられる女優さんたちというのはどういうノリでやってるんでしょうね?

 案外さばさばと、と言うより「客が喜ぶなら何でもやる!」な心意気ならば大変に嬉しいものがありますが、何か必死な感じがしないでもありません。とまれ、浅草の見世物小屋にありがちな体を張った芸っぽい何かが映画に戻ってきたのは個人的にはとても嬉しいことなので、これに懲りずに、アナクロ&ナンセンスを意地になって続けていただきたいものです。

2002年04月30日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16