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忘れられぬ人々


■公開:2000年
■制作:ビターズ・エンド、タキコーポレーション、ベンチャーフィルム、東京テアトル
■製作: 定井勇二、甲斐真樹、澤井克一
■監督:篠崎誠
■脚本:篠崎誠、山村玲
■原案:篠崎誠
■音楽:リトル・クリーチャーズ
■美術:金勝浩一
■主演:三橋達也


 1999年テレビドラマ「救命病棟24時」に三橋達也さんが高田敏江さんと夫婦役で出演したとき、給食の牛乳臭い若手俳優の中で、「三橋達也、まだまだイケてるぜ!」と感動したのは記憶に新しいところです。亡くなった俳優の水島道太郎さん(と写真家でもあったサム・ショウ)にこの映画が捧げられているというのも、同じ東京の銀座(三橋達也)、浅草(水島道太郎)の出身で歳はちょっと違うのですが、日活〜東映のドンパチ映画ではよく共演されていたので、これまたいぶし銀のような映画ファンの皆様にはさらに琴線に触れることと思います。

 そうでない方々には「ふーん、昔の映画の俳優さんなの?誰だかわかんなーい」で、いいです。だってこれ、出てる俳優さんたちが見てるほうにとっての「忘れられぬ人々」なんじゃなくて、劇中、内海桂子師匠が言う「私たちが死んだら思い出もなくなっちゃうのかしらねえ」がテーマなわけで「戦時中の思い出を忘れられぬ人々」のことなんですから。

 従いまして、ラストの活劇シーンに三橋さんがライフルを持ってなくても「えーっ!」なんてガッカリする必要はありません。三橋さんが「芸能文化人ガンクラブの理事長」ってことはこの映画に関係ないんですから、ってそんなの期待してんのは東宝アクション映画ヲタク(筆者ですが)だけか、とは思いますが。

 太平洋戦争末期、南方の最前線を生き延びた木島・三橋達也、村田・大木実、伊藤・青木富夫の三人はそれぞれの戦後を歩んできました。家族を失い畑を耕して独り暮しをしている木島のところへいかにもうさんくさい電器屋が訪ねてきますが、裏街道を歩いて来た彼は一発で正体を見抜きます。木島は金山と言う戦友から預かったハーモニカを、ハーフの少年・ドミニク・ローズに教えています。伊藤には未亡人の小春・風見章子という恋人ができます。村田は末期ガンの妻・内海桂子を抱えています。

 金山の孫の百合子・真田麻垂美の恋人、仁・遠藤雅が霊感商法のセミナーに参加してからというもの、この穏やかな老人たちの暮らしはかき乱されます。盗聴、盗撮、泣き落とし、脅迫、なんでもありの現代社会で餌食となった彼らと彼女に待ちうけている結末は過酷です。唯一の救いは若い二人が立ち直りそうだというところで、戦争を「忘れられない人々」は、残された人たちにとっても「忘れられない人々」になったところで映画は終わります。

 「近頃なぜかチャールストン」では老人を演じた俳優がまだ若い人たちでしたから、それなりにパワーがあったのかと。やはり本物の人たちはこれが現実なんだということを付きつけられてしまったようで、見終わった後はどうにもやりきれない思いが残ってしまいました。

 もちろん筆者的には三橋さんをはじめこの映画が海外でも評価されて多くの賞を得たというのは喜ばしいことでありますが、それほどのもんか?という気がなきにしもあらずです。映画としてはもう少しのユーモアが欲しいところではありますが、そんなの無くても見るほうにとっての「忘れられない人々」が元気な姿を見れるだけで満足、という方々には本作品を強くオススメします

2002年04月30日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16