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反逆のメロディー


■公開:1970年
■制作:日活
■企画:水の江滝子
■監督:澤田幸弘
■原作:
■脚本:佐治乾、蘇武路夫
■撮影:山崎善弘
■音楽:玉木宏
■美術:千葉和彦
■主演:原田芳雄
■寸評:原田芳雄はこれが映画主演2作目、すでに大物、て言うか最初から超新人級。


 茨城県鹿島市。現在ではJリーグ、鹿島アントラーズのホームタウンであるが1970年当時は地元ヤクザと新興ヤクザがバトる町であったらしい、ただし映画の話だが。

 立花組の組長の服役中、若い衆は広域暴力団の矢東会に預けられていて、何かとフラストレーションが溜まっている。組を任されているのは色っぽい姐さんのお滝・冨士真奈美、NHK専属女優だった頃は可憐な乙女だったんだけどなあ、と、それはともかく。その義弟、つまり組長の異母兄弟である哲・原田芳雄がフラリと故郷へ舞い戻ってくるところからこの映画は始まる。

 哲の育ての親は解散した暴力団の淡野組・組長である淡野・須賀不二男。もちろん解散ったって偽装解散で今じゃ立派な企業ヤクザ。哲は立花組の若い衆・二瓶正也らを引き連れて淡野組のフロント企業である建設会社のあこぎな手口を暴いて立花組再建を目指す。淡野は昔気質の立花組を解散させて縄張りを乗っ取ろうとする。

 政次・藤竜也は淡野に潰された組の生き残り。「広域暴力団・流血の縄張」のときも似たような役でペットは子猫だったが、今回は子犬。星野・地井武男は淡野にコケにされた矢東組の幹部。この二人にゲバ作・佐藤蛾次郎という住所と年齢不詳のフーテンとして参加し、淡野組を壊滅させる。

 その後の原田芳雄のアイデンティティを確立した映画。

 哲の行動が独善的な正義感や、組織に殉ずるナルシズムでないところがこの映画のパワーの源であり、時代性である。素肌にGジャン、長髪にサングラスに途方も無いモミアゲ。中途ハンパに古いので、カルチャーショックで大笑いできるが、こうした映画に心を熱くさせるサムシングを感じられる世代(いわゆるゲバ棒世代)には、蛾次郎の「ぶっこわせ、やっつけろ」の遺言は生々しく懐かしいのかも。

 日活が青春キラキラ映画から、東映タッチの大人のやくざ映画を経てその後、アナーキーな若者文化を描いたニューアクション路線で突っ走ってた頃。今ではNHKのクイズ番組でオトボケ回答者になった地井武男や、バケモノのように若い初老の暴れん坊を演じている原田芳雄や、「寅さん」シリーズの地縛霊と化した蛾次郎の若気の至り的映画。しかしなんだね、こうして見ると藤竜也ってあまり変わらんな、て言うか変われないというほうが適切。

 大人対子供の対決という構図は日活の十八番。この映画ではハッキリ言ってアンタのほうが本職でしょ?たとえ刑事だったとしてもヤクザだったとしても(いや実際、青木さんって町で現役のやくざがビビリながら声かけてきたらしいから)っていう感じの青木義朗が演じる刑事の、魂の底から湧き出すような悪辣ぶりは怖すぎ。いかなる場面であっても青木さんが出てきただけで画面に男臭さや凄みが充満するというのが凄い。なんせ「特別機動捜査隊」の主任役を波島進から引き継いだときには腰を抜かしたものさ。刑事ドラマでここまでリアリズムを追及せんでもいいのでは?ってね。

 矢東組の手先として乗りこんでくる幹部に曽根晴美永山一夫(ブーフーウーの狼さん)。永山一夫と刺し違える立花組の若い衆に沖雅也。地井武男の女房役で梶芽衣子、あまり目立った出番がなかったのがちょっと残念かも。

 ラストで警察の狙撃隊に射殺される原田芳雄の姿にジャリジャリと砂を噛むような寂寥感がある。この映画が公開された翌年、1971年に日活は映画制作の一時中止に追い込まれた。

2002年04月14日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16