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喜劇 駅前競馬


■公開:1966年
■制作:東宝、東京映画
■製作:佐藤一郎、金原文雄
■監督:佐伯幸三
■脚本:藤本義一
■撮影:村井博
■音楽:松井八郎
■美術:小島基司
■主演:森繁久彌
■寸評:全24作品の長寿シリーズ第17作品目は関西風味。


 ヒマな大人がすることといったら「飲む・打つ・買う」。これだけをコンセプトに森繁、伴淳、フランキー、のり平が繰り広げる大衆喜劇。もともとの「駅前旅館」(シリーズ第一作)は井伏鱒二の原作、八住利雄の脚本、豊田四郎の監督による笑いと涙のペーソスあふるる人情喜劇の風情だったがシリーズもここまで来ると「おやくそく」以外の何者でもなくなる。

 にもかかわらず毎回、淡島千景、淡路恵子、乙羽信子という「少女歌劇団系」および、新東宝のアイドル大空真弓、そして非歌劇団系列だから?だけでなく同じ新東宝出の大空真弓に比べても悪役が多い(ような気がする)池内淳子に頭の上がらない、ふがいない男たちの、情けない行動の一つ一つが映画館に来る男性客のハートをがっちりゲットしていたのは間違いなのではないか。本作品の監督、佐伯幸三は第7作から連続12作品を死ぬまで担当した「ミスター駅前シリーズ」。

 漢方料理屋の主人、主人とは言っても実質の経営者は女房の景子・淡島千景であるが、徳之助・森繁久彌は、売れない競馬新聞を自主発行している弟の次郎・フランキー堺とともに三度の飯より競馬好き。予想屋の久造・山茶花究には小料理屋を経営する傍らモグリの質屋をお色気店員・北あけみとともに切り盛りしているしっかり者の女房、染子・池内淳子がいる。風呂屋の三平・三木のり平は不妊症を疑う女房の駒江・乙羽信子に毎日尻をたたかれている。

 町にやってきた風来坊の馬太郎・藤田まことは相棒のボルネオ・マヤ、じゃなくて鹿子・野川由美子と組んで馬主を探していた。馬太郎は実父の孫作・伴淳三郎が手塩にかけた農耕馬の義経号(女の子)を競走馬だと偽って売り飛ばそうとしていた。まんまと馬太郎にだまされた徳之助、三平、久造らは競馬場に頼み込んで先導馬として義経を飼育することにした。ある日、後続の競走馬に興奮した義経号は騎乗していた三平の制止を振り切ってレースに参戦、男馬をぶっちぎって一着ゴールインしてしまう。

 一躍注目された義経を一流の競走馬にしようと悪戦苦闘する、レギュラーメンバーの馬鹿馬鹿しくも涙ぐましい努力の結果、義経号(登録名・ヨシツネヒカリ)は重賞レースに優勝して故郷へ帰って行く。

 本作品には競馬を少し知ってる人なら「はあ?」なところが結構ある、のだがそれはたぶん作り手のイタズラなので目くじら立てちゃいけない。馬に無線機つけるとか、血統が不明な馬が競走馬になるとか(競馬場は立派だけど草競馬ってことならだいじょうぶなのかな?)。にしてもこの映画に出てくる馬は大人しい、そういうの選ぶんだろうけどね。ラストシーンでお婿さん候補の男馬(ってことは牡馬)とご対面するんだけど、タマ付きの馬と女の子馬は接近させるとエライこと(オスのほうが後ろ足で立って襲いかかってくるのさ)になるので、よい子はマネしちゃ駄目だぞ。乗馬の競技場なんかではよく、興奮した牡馬が乗り手を振り落として牝馬めがけて大暴れするんである。そらもう牝馬のほうは逃げる、逃げる!乗ってると見えないんだもん、タマなんて(経験者>筆者)。

 競馬中継の解説席にいる安藤孝子は当時、大人のお色気番組「11PM」で本作品の脚本を担当している藤本義一のホステスをやってた人。筆者、「11PM」では真理アンヌ(イレブン・ガールズの)が好きでした、予断ですが。知らない人には「誰?」な人だが、風俗映画って共感するの難しいよなあ。

 今回のドタバタシーンで秀逸なのは、義経号に見こみなしと早々に馬主の権利を手放した山茶花究に鼻っ柱の強い池内淳子がくってかかるシーン。北あけみ、野川由美子も参戦して豆腐や箸のぶっつけあいを延々とやる。最後なんかもう全員、半笑いまでになるのでお見逃しなく。

2002年01月27日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16