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座頭市地獄旅


■公開:1965年
■制作:大映京都
■企画:奥田久司
■監督:三隅研次
■助監:
■脚色:伊藤大輔
■原作:子母沢寛
■撮影:牧浦地志
■音楽:伊福部昭
■美術:内藤昭
■主演:勝新太郎
■寸評:成田三樹夫の指す将棋がサマになってるのは本物だから。


 座頭市シリーズは全26作品。徐々にエンタテイメント性が増幅していく過程に批判的な声もあるでしょうが大ハズレというのは無い、と断言してしまいましょう。

 盲目で剣豪の座頭市・勝新太郎は賞金目当てのやくざ5名・五味龍太郎戸浦六宏北城寿太郎らに重症を負わせます。江ノ島行きの船の中、市はイカサマ博打で江島一家の寸八・藤岡琢也、桃栗・須賀不二夫から多額の金をまきあげたので彼らから付け狙われます。市が船の中で知り合った浪人、十文字・成田三樹夫は将棋マニアで、棋譜を諳んじて勝負できるくらい強く、二人は一緒に旅することに。

 江島一家との喧嘩のとばっちりで怪我をした門付けのお種・岩崎加根子の連れの娘、ミキ・藤山直子の治療のために市と十文字は奔走します。箱根の湯治場についた一行は、敵討ち兄弟、佐川友之進・山本学、佐川粂・林千鶴(現・高林由紀子)に出会います。

 3つの復讐劇が徐々に緊迫感を高めて向かえるクライマックスまで、泣かせどころを心得たクラシカルな筋立て、それでも泣いちゃうってところは伊藤大輔の巧みな話術。盲が将棋を指すといえば「怪猫モノ」でも度々登場。それを実際にアマチュア将棋で実力者の成田三樹夫にやらせたのは偶然なのか、観客同意の仕掛けなのか、ちょっと不明ですけど結果的に生前、教育放送の正月特番でプロ棋士に挑戦しちゃった成田さんのその後を知っていると、オマケがついているようでちょっとオトクな気持ち。

 ゲーム感覚の殺人鬼というのは1歩間違うと完全にキワモノですけれど、こうした役どころを真摯に、いい気にならないで大人の雰囲気を創り出せるのが成田三樹夫さんの身上ですね。

 高価な薬を闇討ちのどさくさに落としてしまった市が絶望するその手のほんの先にブツがある。ああー!そこだ、そこ!気が付けえええ!とスクリーンめがけて叫んでしまいそうになる盛り上げ方がいいな、と思えるのは伏線の張り方にソツがないからで、クサミにならず、そのガチンコ予定調和に乗れる心地よさは勝新太郎のオーヴァーアクションと生きた劇画のようなビジュアルあればこそ。

 勝新太郎が太鼓判の大映美術チーム。湯治場の階層セットは黒光りする板の一枚一枚に時間を語らせるような、気合があります。ちゃんと見ておきましょう。

 成田三樹夫の熱烈信者の皆様には箱根のお湯で成田さんのセミヌードあり、でその方面に嗜好のある方もグーでしたが、戸浦さんと成田さんじゃネチっこさ(ルックスではなく性格が)において若干カブリ気味じゃないかとか、五味さんファンの筆者としてはイマイチだったとか個人的な評価はありますが成田さんがカッコ良かったんでとりあえず満足。

2002年01月11日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16