旗本退屈男 |
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■公開:1958年 |
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市川右太衛門は映画界入りに際して「主役しかやらない」という条件をつけたというのが本当かどうかは別にしてもとうとう最期まで(ほぼ)主演だったというのはスゴイことですし、日本映画が一番シアワセだった時代を生きた俳優さんの一人だったと言えるでしょう。早世した阪東妻三郎、新東宝と結果的に心中したような嵐寛寿郎、現代劇と二束のわらじになった片岡千恵蔵、敗戦直後の規制の中で全盛期をすぎてしまい消えていった多くの戦前に活躍した時代劇スタアの何人かのうち、最も長く勧善懲悪の正統派チャンバラスタアでありつづけた人でもあります。 「旗本退屈男」シリーズ23作目にして映画出演300本記念、マンネリ上等、客は大船に乗った気分で楽しめる安心度200パーセントの時代劇です。 今回は伊達藩のお家騒動に乗り込む、ド派手な隠密、早乙女主水之介・市川右太衛門、その妹、菊路・桜町弘子、円太・横山エンタツ、弥八・杉狂児、揚羽の蝶次・中村錦之助の活躍。伊達正宗の嫡男、伊達忠宗・片岡千恵蔵が遊興に溺れているので代替わりさせてほしいと老中に願い出た一族の伊達兵庫・進藤英太郎が目付けの榊原監物・薄田研二と組んで、お世継ぎの鶴千代・植木千恵を毒殺しようとしますが、側についている浅岡・花柳小菊、浪乃・千原しのぶ、楓・丘さとみが御殿医・柳永二郎が処方した毒薬をこっそりすりかえて若君を守ります。 兵庫は幕府から派遣された忍者チーム、百々地三之丞・東千代之介と甲賀三郎兵衛・大友柳太朗を唆して忠宗の悪評アップを狙います。忠宗は、パーになる前はとても良い人だったので、家臣の角倉十太夫・月形龍之介をはじめ、松崎文之進・大河内傳次郎、美濃部新兵衛・大川橋蔵だけでなく女狩りされてきた娘のおたき・長谷川裕見子まで「お殿様は本当は悪くない」とかばってくれるのでした。 じれったくなった悪人一味のリーダー格、原口刑部・山形勲は大目付を通じ三郎兵衛に若君を直接手にかけるように命じますが、三郎兵衛は実は真面目なイイ人なので健気な若君の顔を見てたら殺せなくなっちゃうのでした。兵庫、刑部、大目付が実は老中と結託して伊達藩乗っ取りを企んでると知った蝶次が、主水之介に証拠の連判状を届けたので、三郎兵衛と百々地が率いる忍者チームも味方になってくれて、ついに兵庫一派は一掃されます。 片岡千恵蔵と市川右太衛門という2大重役俳優の共演ですから、使うほうは気も遣うわけですが、気がふれたフリをしている千恵蔵さんの癇癪ぶりが妙にハマってるんで笑ってしまいます。一応、譲ってるつもりなんですかね?やっぱ右太衛門さんのほうが大人の対応に見えるんですけども、どうでしょう?この当時ならまともにチャンバラやったら右太衛門さんの圧勝ですから、それにお殿様役なんで千恵蔵さんはチャンバラしません。 毎度の事ながら早乙女主水之介はクライマックスが近づくほど、物凄い派手な衣装になります。とにかく、いざ出陣っていうときに必ず「お着替え」するんですが、こっそり相手の寝首をかくような事は、このキャラクターの場合は絶対にありえないので、後にセガレの北大路欣也(本作品でも片岡千恵蔵の美男お小姓役でパパと共演)が旗本退屈男をやったとき「父の、なるべく地味な衣装から順に着てるんですがそれでも派手で」と萎縮するくらい目立ちまくりのド金ぴかのお着物で登場します。 「旗本退屈男」は基本的にミステリー仕立てで、綺麗なお姉さんが血まみれで殺されたり、人身売買組織や新興宗教が暗躍する、どっちかっつうとドロドロした話が多いんですけど本作品は一応「殿のご乱心で女狩り」というエピソードはありますが、わりと地味です。そのぶん出てる大スタアが多いんでソレ見てるだけでお腹いっぱいって感じです。 このほか、若手俳優から選抜された尾上鯉之助、里見浩太郎らが顔出しします。
(2002年01月08日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16