走れ!イチロー |
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■公開:2001年 |
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最近の若い衆は知らないかも?なのであらかじめ解説しておくと「走れタカハシ」の「タカハシ」は「高橋由伸」じゃなくて「高橋慶彦」という広島東洋カープにいた攻守走三拍子そろって特にスイッチヒッターで3割&盗塁王という巨人の柴田勲でもできなかった偉業を楽勝で達成した名選手。しかも自他ともに認める色男の柴田よりも女性ファンにモテモテだった人です。最後は阪神で現役生活を終えました。 ついでに、法政二校ご出身の柴田さんは現役時代、中日の暴れん坊こと星野仙一さんに対して「おい、セン公」と冗談半分に声をかけたところ「おまえ誰に口きいてるんだ」と激怒されて以来「星野さん」と呼ぶようになったというのを何かで読んだことがありますが、イイ人みたいですね柴田さんて。 さて、本題です。 イチローといえば鈴木一朗(本人)ですが、そのイチローが大リーグを目指そうっていうここ神戸で繰り広げられる3つの恋の物語です。 大手建設会社の社員として震災直後の神戸を訪れた石川市郎・中村雅俊はリストラの憂き目に遭い傷心のまま、家出同然で行方をくらました妻の鈴子・浅野ゆう子を追って一人娘のこよみ・笹岡莉紗を連れて神戸マリンスタジアムに来ています。鈴子はあのヒップサイズでは到底うそっぱちとしか思えませんが、高校生時代はソフトボールの名捕手だったそうで、今は元相棒で親友・浅田美代子の夫になった当時のコーチ、早川・川口和久(元広島東洋カープ)の要請で神戸にある女子高ソフトボールチームの臨時指導員になっています。 石川が神戸で知り合った靴職人の伊岡・加藤武は娘・南野陽子が経営するバイクショップとは別に復興なったアーケードで小さな靴屋をやっていて、たまたま手に入ったイチローのスパイクシューズとそっくりな新品を作り、いつかイチローに渡したいと願っていました。 こよみはグリーンスタジアムで売り子のバイトをしている、大学を「一浪」している望月・松田龍平と知り合います。彼には恋人・大谷みつほがいましたが、ひょんなことから恋人の父親が経営している劇場を常打ち小屋にしている大衆演劇の座長・姫京之介(本人)と花形女形・山本太郎に「イチロー選手を招待する」というトンでもない約束をしてしまいます。 そのころグリーンスタジアムでは野球解説のゲストに招かれていた小説家の奥手川伊知郎・石原良純を偽者だと言い張るキャバ女の睦美・木村佳乃が実況席に殴り込みをかけていました。彼女は奥手川の偽者・寺脇康文と恋愛関係にあったのでした。もともと女好きで女優・奥山佳恵と別れたばかりの奥手川はさっそく睦美にプロポーズしますが彼女はすでに妊娠していました。 阪神・淡路大震災から復興著しい神戸。芦屋に住んでいる大森一樹監督が、当時のことを忘れないで欲しいという願いと、街の復興とは異なる時間を要する人の心の復興を3つのラブストーリィにからめて手堅くまとめたラブコメディです。 走れイチローってくらいなんでイチロー本人が芝居するかと思ったら、立派に演技してたのは、現役時代は「負けず嫌いのきかん坊(達川捕手・談)」だった川口和久でした。ジャンボサイズの中村雅俊のライヴァルですから、川口くらいタッパがないとつりあいが取れませんわね。なかなかイイムードで、デビューしたころの夏木陽介みたいです。 で、肝心のイチローのところは全部、ニュースフィルムのつぎはぎなんでなんとか「フォレスト・ガンプ」みたいな力ずくの合成でもありゃあ別ですけど、なんてことなくて、出来映えとしては「ヘネシー怒りの日」(ロッド・スタイガー主演、1976年米国映画、英国女王暗殺未遂の映画で本国では上映禁止になったいわくつきの一品)って感じですかね、たとえが悪いかな?。一応、本作品ではオリックス・ブルーウェーブの協力アリなので仰木監督、藤井選手なんかがほぼ通行人レヴェルで登場します。 タイトルの「走れイチロー」は、いよいよ大リーグへ出発するイチロー選手の映像に、スパイクを届けようとダッシュする中村雅俊とそれをフォローする笹岡莉紗の親子リレーのことでした。 公開直後、あまりに意味不明なタイトルと宣伝不足からいきなり「バトルロワイヤル」と抱合せ販売されたりして一瞬のうちにロードショーが終了しましたが、さすが大森一樹の手になる作品なので、ぬるいながらもちゃんと映画になってます。最後に「ほろり」と来ますよ。 (2001年12月13日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16