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ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃


■公開:1969年
■制作:東宝
■製作:田中友幸
■監督:本多猪四郎
■助監:
■脚本:関沢新一
■原作:
■撮影:富岡素敬
■美術:北猛夫
■音楽:宮内国郎
■特撮:円谷英二
■主演:矢崎知紀
■備考:ブタ鼻ゴジラ、大集合! 東宝チャンピオン祭り第1号


 こういう昔の子供向け映画見てて何が面白いかっていうと、シンクロしていた大人はやたらと郷愁があるんですね。で、筆者は当時主役の子供とほぼ同時進行な人生だったんで、公害やら鍵っ子やらっていう風俗や社会問題はヒシヒシと実感できるわけです。そして子供に向けた製作者のね、やさしい気持ちがイタイんですよね。こういう「諭し」のほうがマッチする、というか共感しちゃいますね、「バトルロワイアル」もいいかもしれませんがそれならせめて「蝿の王」が限界ですね、筆者としては。

 国鉄の操車係のお父さん・佐原健二、パートに出ているお母さん・中真千子という典型的な鍵っ子の三木一郎・矢崎知紀は、鉄腕アトムを動かせる真空管を拾ってきて大喜び、さっそく発明狂のオジサン・天本英世も住んでる自宅アパートで謎の通信機(今で言えばパソコンね)で遊んじゃう鍵っ子の小学生です。

 一郎にはサチ子・伊藤ひでみというスカートからパンツが半分見えているようなイカす彼女(って言うか同級生)がいますが、彼はガバラというニックネームの、スネ夫みたいなタイプで仲間とつるんでばっかいるイジメっ子にいつも脅迫や犯罪教唆まがいのイジメに遭って逃げていました。

 一郎は通信機で遊んでいるうちに眠くなり夢を見ます。一郎がいたのはゴロザウルスやマンダやアンギラスやカマキラスやクモンガや海にはエビラなんかがうじゃうじゃいる怪獣島でした。一郎はゴジラの息子(でも声は女の人、変声期前?)ミニラと友達になります。ミニラは放射能が上手く吐けないのでいじめっ子怪獣のガバラにいつもからかわれています。からかうったって怪獣なのでそばにいる人間は大迷惑ですが一郎はそんなミニラに親近感を感じるのでした。

 夢からさめた一郎は、発明狂に晩飯をおごってもらいますが、オーナーの財政状況に気を遣ってスキヤキの肉を食べないような賢い子でした。アパートの近所に五千万円強奪犯人の二人組・堺左千夫鈴木和夫が逃げ込みます。偶然、犯人が落とした運転免許証を拾ってしまった一郎は彼らに誘拐されてしまいます。

 一郎が拉致された所は潰れた工場みたいなんですがよく見ると、「宣伝部」という表札が見えるので、撮影所のごみ箱ひっくりかえしたんでしょうかね?ステージ撮影の部分は。さて、そんなことはさておき、20世紀の強盗は「サザエさん」の泥棒なみに間抜けなので一郎のかく乱戦法に踊らされあっさりと逮捕されてしまいます。

 ここんところの現実でのおっかけシーンは、劇場に来ていた当時の子供の客としては、まるで高倉健の映画で背後から忍び寄るチンピラめがけて「健さん、あぶねえ!」ってスクリーンにミカン投げた酔っ払いの観客のように燃えまくったと推察されます。

 夢の中でも、ゴジラはミニラを厳しく指導。ついに立派な放射能が吐ける(のがいいのかどうかは別問題)ようになったミニラはゴジラと協力して見事にガバラを粉砕するのでした。

 勇気を持って困難に立ち向かうことを学んだ一郎は、ペンキ屋・中山豊にいたずらして塗料まみれにするという1歩間違えれば失明するかもしれない危険ないたずらに成功することで人間の子供のほうのガバラを見返し、ついには、たぶんワルガキたちのリーダーにのし上がったのでした。

 一人息子の世話をあんなアブナイおじさんに頼んだりする親の神経がよくわかりません。おもちゃの開発だけじゃなくて、下手すりゃ預かってる子供も改造しちゃうんじゃないかと思いますが、どうでしょう?(し、失礼な、、、)

 これが21世紀の子供の教育上よろしいかというと、パーファクトではありませんが製作当時の世間の常識みたいのが窺い知れてそれなりに意味のある内容であると言えましょう。もちろん、いたずらした後でちゃんと一郎が「ごめんなさい!」と言うところは時代を問わず高く評価されますが。

 本作品はいろんなゴジラ映画の格闘シーンのつぎはぎに新しくシーンを撮り足したものなので、それぞれ戦うシークエンスごとにゴジラの顔がまるっきり違っているのが楽しいです。ですがいずれも顔にメリハリありすぎで漫画っぽくなっておまけにブタ鼻になってしまった、筆者的には「無細工」な時代の着ぐるみなのが悲しいところです。

 犯人を逮捕してくれる頼れる大人の刑事役に、東宝の特撮映画では液体人間に食われたり、電送人間に殺されたり、モスラの卵で一儲けしようと企んだり(そん時の相棒は佐原健二)、と、ロクな大人じゃなかった田島義文。ところで犯人役の鈴木和夫ですが、「ウルトラQ」では「ちょっと足りない飼育係」だったし、その後たまたま見たテレビドラマでも「錯乱しているヤク中患者」という役どころだったのでこの映画ではじめて、まともに喋っているところを見ました。ウン、わりと普通だね、って感じでした(し、失礼な、、、)。

2001年12月16日

【追記】

※本文中敬称略


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file updated : 2003-05-16