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フランキーの宇宙人


■公開:1957年
■制作:日活
■製作:浅田健三
■監督:菅井一郎
■助監:
■脚本:棚田吾郎
■原案:キノトール
■撮影:中尾利太郎
■美術:小池一美
■音楽:仁木他喜雄
■ギャグ:永六輔、神吉拓郎
■主演:フランキー堺
■備考:目標はC・チャプリンの「モダンタイムス」?


 煙突掃除を業としている境田栄三・フランキー堺は天体観測が大好きな純情青年です。たまたま覗いていた望遠鏡にUFOらしきものを見た境田はビックらこいて物干し台から転落し頭部を強打します。

 科学者の木下博士・菅井一郎は娘の愛子・高友子とともに夢のエネルギー「ピカ1号(あ、あぶない名前ですね)」を搭載したロケットの打ち上げが予算不足で失敗し世間から相手にされていませんでしたが、博士の研究にマジで注目していたのは、地球人が勝手にトンでもない武器を開発されては困ると思っていた宇宙人と、軍拡競争に躍起になっている外国のスパイたちなのでした。

 宇宙人が作った人工衛星に住んでいる人、ってことで「人工衛星人」と呼ばれるエイリアンたちは、ジャズドラマーのフランキー堺の遺伝子によるクローンなので女だろうが男だろうがみーんなフランキー堺です。合計6人が地球に送り込まれていて、なんとか「ピカ1号」を強奪して安全なところへ保管しようとしています。

 たまたまフランキー堺にクリソツだった境田は人工衛星人の疑いをかけられ、新聞社の編集長・清水将夫、安部記者・安部徹、それにフランキー堺の愛人でダンサーの艶子・藤代鮎子の証言により、法廷で裁判にかけられて留置されますが、人工衛星人独占インタビューで一発あてたい安部と艶子の協力を得て釈放されます。

 外国人スパイに誘拐されそうになった木下博士親子は境田の活躍で救出され、人工衛星人たちの空飛ぶ円盤で彼らの住む星に招待されるのでした。

 人工衛星人ではないか?ということでわけもわからずに法廷に引っ張り出されるフランキー堺。目の前には裁判長・浜村純はともかくジョージ・ファーネスさんによく似た外国人裁判官がいたりして、これどっかで見たよな光景であるなあと思ったら「私は貝になりたい」でしたが、「フランキーの宇宙人」のほうがテレビも含めてあっちより先に作られているわけなのでちょっとデ・ジャ・ヴーでしたね。

 話は他愛も無いんですけど、当時人気者だったジャズドラマー兼コメディアンのフランキー堺に女装させたり最大6役させたりして、C・チャプリンの喜劇映画のようなテンポを漂わせつつ手堅くまとめたドタバタ喜劇ですが、当時の評価はともかく時を経て、その内容の無さと出演者の荒唐無稽ぶりがあらためて爆笑を誘います。

 いや、真面目に作ってるんだし、核開発をパロディにしたメッセージ性もあるのであながちバカにはしませんが、まだ悪役パワー全開前の安部徹が、役名がそのままなので電話に出るとき「はい、安部です」ってところがすでに大笑いですが、かなりこっぱずかしい全身タイツにスカートってのがもう見てるほうが赤面しちゃいます。おまけに高友子にモテモテってのもグー。

 フランキー堺はタイコたたけば日本一、ですから鮮やかな演奏シーンはもっと見たいんですけどなにせ宇宙人ですから、ギャグも宇宙的ってことでしょうか百面相以外はもう、いてもたってもいられません。文句は永六輔と神吉拓郎に言いましょう。

 監督の菅井一郎は吉村公三郎監督の「偽れる盛装」でアプレ芸者に身上をつぶされコケにされてブチキレる初老の男の役で鬼気迫る演技を披露した人ですが、絵画が趣味だったそうでその延長線上として?監督作品が2作品あり一つは本作品、もう一つは初監督作品の「泥だらけの青春」(「泥だらけの純情」じゃあないですよ)です。

 木下博士ってのはキノトールの本名が木下徹なんで、安部徹と同様のお手軽なネーミングですが、しょぼいロケットが案の定、ボテっと情けなく砂浜に落下したときに間髪いれずに「予算不足だ!」と叫ぶシーンは、国の威信をかけたH2ロケットがコケまくるのを目の当たりにしてきた21世紀に観客、およびH2ロケットの関係者には爆笑必至と思われますがいかがでしょうか?

 ナレーションは元NHKアナウンサーにして後にフリーとなり「初笑いウルトラ寄席」の司会やってた高橋圭三、名前は出てませんがたぶん、そう。

2001年12月10日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16