非常線の女 |
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■公開:1933年 |
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岡田時彦が主演した密室サスペンスの「その夜の妻」のバタ臭さにさらなる磨きをかけてスパークさせた小津安二郎監督のハリウッドかぶれ映画。原案のゼームス槇は小津安二郎のペンネームです。芸が細かいですね。 時子・田中絹代は昼間は真面目なタイピストで、勤めている会社の社長の息子・南條康雄にでっかいルビーの指輪なんかもらっちゃってモテモテですが、彼女はボクサーくずれの街の与太者、襄二・岡譲二の愛人でした。襄二はダンスホールで因縁をつけてきた若い衆をたった一人でボッコボコにしてしまうくらい強いのでボクシングジムのコーチはカムバックを薦めています。 ジムに通っていた中学生(高校生)の宏・三井秀夫(弘次)が襄二に憧れて手下になりたいと言い出します。宏の姉、和子・水久保澄子はレコード店の店員をして宏を養っています。姉弟に親はいません。和子は宏を仲間から外して欲しいと襄二に頼みに行きます。思いっきり素人娘の純粋さと弟思いのやさしさに憧れた襄二は和子のことが好きになってしまいます。 「どうせあたしはズベ公だよ!」という台詞を大柄な体育会系の大信田礼子が言うならまだしも小学生に毛の生えたような幼いルックスの田中絹代に言われても全然ピンと来ませんが、絹代さんはジェラシーのあまり水久保澄江にピストル突きつけたりしますので、することと顔のギャップが最後までなんだかとてもヘンテコです。 戦前の日本がいくらモダンな街だったってもここまでアメリカっぽいというのは凄いです。もちろんアメリカ人もビックリするくらい現代的な二枚目である岡譲二のハッタリ芝居はますますハリウッドのギャング映画っぽい雰囲気を盛り上げます。 岡譲二にモーションかけちゃう多情なホステス・逢初夢子が「張り倒すわよ!」という大和撫子にあるまじきお下品な台詞を吐くところも、アイルランド系の赤毛女の捨て台詞のようでムード出てます。襄二を取り戻すために和子のところへ行った時子が彼女の素晴らしさに感動してベーゼします。ここまで徹底的な西洋風だともはや天晴れとしか言いようがないです。 和子がレコード店の店員だということでやたらとビクターのマスコット人形、ニッパー君がクローズアップされますが、これは日本蓄音機商会(現・日本コロムビア)の部長職から俳優に転向したという異色のキャリアを持つ岡譲二としてはいかがなものか?という気がしますがどうでしょう。 ニッパー君が聞いているのは死んだご主人の声(His Master's Voice=HMV)なのですが、荒んだ生活をしていても音楽好きというハイセンスな趣味を持ち、肉親の情に飢えている襄二のキャラクターをアッピールする重要なキャラクターにも思えます。 堅気の生活に憧れた時子ですが襄二は意地になって受け入れません。宏が姉の勤めている店から大金をちょろまかしたと知った襄二は時子の説得を聞き入れ最後の大仕事をしに行きます。時子が勤めていた会社を襲撃して金を奪った襄二は逃げようとしますが、時子は襄二に自首をすすめるのでした。 愛する襄二の足をピストルでぶち抜いて逃亡阻止だなんてまるでアメリカ女みたいだわっ!ってことは田中絹代さんが最もハリウッドスタイルだったってことなんですね、ルックスは全然ですけど。 (2001年12月02日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16