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告白的女優論


■公開:1971年
■制作:現代映画社、日本ATG(配給)
■監督:吉田喜重
■助監:岡村精
■脚本:吉田喜重、山田正弘
■原作:
■撮影:長谷川元吉
■美術:朝倉摂
■音楽:一柳慧
■主演:浅丘ルリ子、岡田茉莉子、有馬稲子
■備考:太地喜和子のホットパンツ姿はちょっとナイスです


 この映画はオムニバスのようで実は1つの映画作品に出演することになった三人の大物女優が、クランクインの二日前に失語症、セックス恐怖症、自殺願望に囚われてしまうという3つのエピソードが同時進行する映画です。

 女優、海堂あき・浅丘ルリ子は付き人で友人の京子・赤座美代子と一緒の家に住んでいます。あきは今撮影中の作品の監督・木村功とスキャンダルが噂されていて、自宅に監督の妻・稲野和子が濃硫酸持ってくるくらい鬼気迫ってましたが、実は監督の本当の不倫相手は京子でした。

 高校時代から親友だった京子とあきは夏休みのある日、高校教師・川津祐介の下宿へ遊びに行きました。そこで京子が教師にクロロフォルムをかがされて犯されたと学校へ密告したあきに対して、京子はいつかリベンジしようと狙っていたのでした。フリーのカメラマン・原田芳雄の追及に、あきは実は教師に犯されたのは自分だけだったと告白するのでした。

 女優、一森笙子・岡田茉莉子はマネージャーの南川・三國連太郎を呼んで、失語症になったから映画の出演を断るように、付き人の女優志願のリエ・太地喜和子に通訳させます。

 愛人の波多医師・菅貫太郎の紹介で催眠療法を受けた笙子は、失語症の原因が別居中の夫、亘理隼人・中野誠也とリエの抱擁シーンを目撃したことにあると知ります。笙子は夢に出てきた白いボールを思い出して、波多、リエ、南川を交えて夢の再現をやってみることにしました。南川は笙子を愛していましたが彼女がすでに手の届かない存在と知った彼は笙子の車を追う途中でトラックに轢かれます。

 女優、伊作万紀子・有馬稲子は信州のある雪深い村へ衣装デザイナーのノブ・久保まづるかを連れてやってきます。彼女はかつて母・月丘夢路が主催していた演劇サークルの男優・細川俊之と自殺未遂をして自分だけが助かったという過去をノブに話します。男優は実は母親の愛人であり自分の父親であったのだと万紀子は言います。

 そして彼女は次々と自殺未遂事件を起こしました。その中には女優の笙子と争った亘理隼人との恋愛も含まれています。万紀子は現在の婚約者である唐沢・伊藤豪とも別れようと考えていました。しかし、実は死んだはずの男優は生きており、自殺することすら演技の一つだという唐沢の言葉に万紀子は女優の業を自覚し、手首に当てていた裁断バサミを取り落としたのでした。

 いやあ凄いですねえ浅丘ルリ子。ベッドでヨガるんですけどなんかこうベッドと一体っていうか全然凹凸ないんでビックリしちゃいましたよ、ってそういう映画じゃないと思いますけど、比較的肉づきがいいはずの昭和の女優さんの中では、宝生舞もびっくり?なルリ子さんのスマートさであります。

 女優という種族を掘り下げるにはあまりにも高尚すぎるというか、薄っぺらというか、もっと女優の個性を生かした三人三様の映画にすりゃあ良かったと思うんですが、吉田喜重の吉田喜重による吉田喜重のための「女優論」ですから映画としてはさっぱり???です。

 つまり映画的なエンタテイメント性がゼロ、テーマに対する思い込みの強さが全然伝わってこないんで正直な話、どこ見ていいのか良くわかんないんですね。そのくせ長いんで困ります。ま、菅貫太郎が出てたから救われてんですけどね、私は。

 最近、テレビの通販ものでカリスマ人気の「微笑み仮面」こと伊藤豪がやったらシリアスなんで最初、誰だろうと思いましたけどね、こういう演劇キャリアあっての、あの貼り付いたような感動演技なのかと、大変に納得いたしました。

 三人の女優が過去を語る、ということなので女子高生姿の浅丘ルリ子、おかっぱ頭の有馬稲子、岡田茉莉子だけはさすがに小学生までタイムスリップすると「赤ん坊少女、タマミちゃん」になっちゃうんでパスでしたが、どれもみんな見事にコスプレしてて大笑いしてしまいました。「この子の七つのお祝いに」の岩下志麻と、勝負なんてしないでいいんですけど結果的にイイ勝負でした。、

 てなわけで、見所らしい見所は森英恵のゴーカな70年代の香りが充満している女優さんたちのファッションだった!というオチでどーもスイマセン。

2001年11月25日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16