にっぽん泥棒物語 |
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■公開:1965年 |
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土蔵破りの名人、林田義助・三國連太郎は1948年、出所するとすぐに故郷に戻り、呉服商のかめや主人・吉田義夫と結託して仲間の川上・潮健児らとともに早速、土蔵を襲撃し米や布地を盗み出しましたが、妻の桃子・市原悦子が盗品とは知らずに売りさばいたために足がつき、義助は逮捕されてしまいます。 顔は怖いですが若手の刑事・今井健二の取調べを受けた義助は追求をのらくらとかわしていましたが、威圧感ありすぎの大ベテラン、安東警部補・伊藤雄之助にはかなわずついに送検されてしまいます。 高齢の母親・北林谷栄と、兄の前科で破談続きの妹・緑魔子のために裁判開始前に拘置所で知り合った馬場庫吉・江原真二郎と一緒に、庫吉の地元の土蔵を狙った義助はビギナー庫吉のドジで未遂に終わります。夜更けの田舎道を逃亡途中、義助と庫吉は線路を歩く不信な9人の屈強な男たちに出会いました。 その日の明け方、杉山駅で列車転覆事故が発生します。これは線路をあらかじめ取り外しておいたテロ事件であると報道されます。 当時、下山事件、三鷹事件で日本が不安な時代でしたが、いつも泥棒ばっかして落ち付く暇のない義助にとってはどうでもいいことでしたし、うっかり目撃したことを証言すれば未遂事件もオマケについて刑期が延びてしまうので義助はだんまりを決め込むことにしました。 4年の実刑判決を受けた義助は、刑務所で偶然、杉山事件の実行犯として逮捕された共産党員の木村信・鈴木瑞穂と一緒になります。木村はどう見ても、あの夜の男たちではありませんでした。 やがて出所した義助はモグリ歯医者の腕を生かして真面目な人生を歩もうとします。ダムの工事現場でたまたま乱暴ものの作業員・山本麟一の虫歯を治してやったことから、義助は皆に慕われるようになります。自殺未遂をやらかした娘、高橋はな・佐久間良子と結婚して子供まで授かった義助の前に、あの顔がデカくて怖い、安東警部補が現れました。 戦後の冤罪事件の一つといわれる、松川事件(1948年)の実話に取材した映画です。手柄をフイにされたくない伊藤雄之助が、三國連太郎の証言を、前科をばらすと脅迫して封じ込めようとするのですが、刑務所で容疑者たちから親切にしてもらったことが忘れられず、おまけに弁護団の団長・加藤嘉や、熱血弁護士・千葉真一の説得を受け、さらに実行犯のけなげな息子の姿を見て、義助はついに証言を決意するのです。 しかし最後の難敵は、目の前のシアワセにすがり付いてしまう田舎者=妻の佐久間良子でした。「オラはどうでもええ!だけど子供が可哀相だ!」なんて卑怯な女でしょうか。子供だしにして保身を図るというのは最も汚い手口だと思いますが、そんな彼女も、法廷で堂々と証言し正義を貫いた夫に送られる支援者たちの暖かい声援に思わず感動してしまうのでした。 事実に取材しているだけあって、フィクションでありながらも随所にリアリティがあり完成度と説得力にユーモアもあって、と見ごたえ十分の映画です。2時間の間、全然退屈しませんでした。 元刑事で盗品売買にかかわっている質屋・沢彰謙が解説する公安捜査のセオリーや、古式ゆかしい泥棒のテク、裁判長・永井智雄、検事・加藤武、大村文武と弁護団の駆け引きなどは、三國連太郎の人間味溢れすぎのややオーバーなキャラクターと相乗効果で、裁判の勝利を確信させるエンディングを、涙と感動で締めくくります。 なにせ三國連太郎と伊藤雄之助の対決ですから最後までどんなどんでん返しがあるのかと、ハラハラします。特に、とても事務職で東映入社を果たしたとは思えない今井健二でさえ十分に迫力あるのに「お前じゃあ荷が重いだろう」と入れ替わりで伊藤雄之助が出てきたときには、今度はトゥーマッチ・へヴィーじゃねえの?と爆笑してしまいましたが、もっと驚いたのは優秀な弁護団に千葉真一、そして正義の新聞記者が室田日出男だったことです。 東映(東京)ならではと言えばそれまでですが、裁判所でとうとうと尋問をする千葉ちゃんとか、不安でいっぱいの義助の心に優しくアプローチする室田とかが、見るほうの都合ではありますが途方もなくミスマッチ、だけどなんだかいい感じ、ってことでとても新鮮な驚きでした。 戦後日本の混乱期、冤罪という重いテーマでありながら、随所に適役を得て名作になった、山本薩夫監督のヒューマンコメディ。まるでハリウッド映画のソレのようなさわやかな余韻です。 (2001年11月25日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16