大日本スリ集団

■公開：1969年
■制作：東宝
■監督：福田純
■脚本：藤本義一
■原作：藤本義一
■撮影：逢沢譲
■美術：育野重一
■音楽：佐藤勝
■主演：小林桂樹
■備考：高橋紀子の熱烈信者には眼福＆目の毒と思われます。

ネタバレあります

　大阪で活躍するスリ集団のリーダー、平平平平（ひらだいら　へっぺい）・三木のり平と彼の戦前からの宿敵、スリ捜査科の刑事、船越富蔵・小林桂樹は大陸で生死をともにした戦友でもあります。平平には一人息子の一郎・寺田農がいますが彼はやくざの手先になっていて極度の素行不良です。スリ組合のリーダーである平平の後妻の紙江・高橋紀子は元ストリッパー、さらに彼は刑務所に入っている子分夫婦の子供二人、ベソコ（泣きべそなので）・北村佳子とカンタロー・吉原直樹まで引き取っているのでした。

　船越は少年時代・五十嵐健司に行商をしていた母親・菅井きんが何度もスリ被害に遭って苦労した経験がトラウマになっているので、スリに対してはとにかく容赦がありません。

　ある日、戦友会に呼ばれた船越はいっしょに来た平平に余興をやれと命令します。元部隊長の山辺・菅原謙次の手前、断れなかった平平は、同業のフランス（ニックネーム）・平田昭彦（様）を呼んで手品をやらせますが警察嫌いのフランスは船越の警察手帳を盗んで赤っ恥をかかせます。ムカついた船越は紙江にストリップを踊らせました。

　船越は一人娘の昭子・酒井和歌子が隠し持っている茶封筒の中身を知りたくて平平に盗ませます。そこには昭子が昔別れた妻子持ちの城山・波多野憲との婚姻届がありました。船越は城山に会って彼を問い詰めますが城山に「昭子さんはこのことを知っているのか？」と切り返されてしまいます。

　船越はフランスを街中で追い掛け回している間に交通事故で死なせてしまいます。平平は怒って、昭子に婚姻届を親父が盗ませたことをバラしてしまいます。カンカンに怒った船越は平平と取っ組み合いの大喧嘩をします。昭子は船越の後輩刑事、金貝・田中邦衛のことがちょっと好きでしたが、過去を吹っ切るために家を出てブラジルへ移民することにしました。

　腹の虫が収まらなかった船越は、一郎が足を洗おうとしていた暴力団の組長・清水将夫と幹部・大滝秀治をそそのかして親の平平に指を詰めさせようとします。事実を知った平平は警察に怒鳴り込みますがそこで脳卒中を起こして再起不能になります。一郎は紙江とともに出て行きました。平平が不自由な体でスリをしている現場を押さえた船越は、保証人を引き受けて平平を養老院へ入れてやります。

　船越が駆けつけた時には、昭子を乗せた船はすでに岸壁を離れた後でした。

　小林桂樹も三木のり平も見事な五厘刈りのくりくり坊主です。福田純監督によると、二人とも大いに乗ってくれて自分たちで役づくりを工夫して頭刈って来たそうです。

　福田監督と言えば、派手でわかりやすい演出、過剰なサーヴィス精神、マニアックなカメラワーク、「だけ」だと思っていましたが、トンでもない誤解でした（深謝）。二人の男親が背負った気苦労、子供の気持ちが理解できずに戸惑う様が、なんとも言えない深みを持っているこういう作品が実は真骨頂だったんですね。戦中派と戦後派のジェネレーションギャップを痛感していたのは監督自身でしょうから、実感こもってるんでね。まあ相変わらず、女は描けない人ですけど。

　原作の藤本義一も監督も娘の昭子が突如ブラジルへ行ってしまう経緯がよくわからない、という感想だそうですが、見てるほうとしてはなにせ、あの、「次の一瞬が読めないワッコちゃん」なのでブラジル移民くらい当然じゃないの？と思います。なんなら「シリウス星と交信したらエイリアンと友達になれそうなの！」とかクソまじめに、かつじっと目を見つめられて直後にＮＡＳＡへ行ってしまったとしても全然オッケーです。ワッコちゃんなら！

　さて、そんな男性ファンの皆様には超眼福なのが高橋紀子の「お座敷ストリップ」です。しかしながら、この映画がおそらくはきっかけとなって寺田農とくっついて、あまつさせ引退して結婚してしまったという事実を踏まえると、スクリーンを見ながら嫉妬の炎がメラメラしちゃうかもしれません。惜しい人を亡くしましたねえ（死んでませんが）。

　しかしねえ、フランスっていう名前のスリが平田昭彦（様）ですかあ。それって「１００発１００中」のオタカ（宝田明）のキャラじゃん！関西弁がまったく板についてないのも笑えました。小林桂樹と三木のり平は「いいかげんな関西弁を無理するより関東風の関西弁にしよう」と言う事でやってたらしいですね。ネイティブが聞いたらぶっ飛びそうだけど。

　わずか三時間しかない祇園祭のハイライトで、数十人のエキストラを従え右往左往して撮りあげたロケーションも効いている辛口人情ドラマです。

　この他の出演者は、スリ仲間のレンコン・古今亭志ん朝、ものすごいサングラスのファッションセンスがグーなガキチ・砂塚秀夫、フクロー・草野大悟、フランスの女房・吉行和子、レンコンの女房・稲野和子。

（2001年10月08日）

【追記】

※本文中敬称略

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