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大東京誕生 大江戸の鐘


■公開:1958年
■制作:松竹(京都撮影所)
■監督:大曾根辰夫
■脚本:猪俣勝人、岸生朗、柴英三郎
■原作:
■撮影:石本秀雄
■美術:大角純一
■音楽:木下忠司
■主演:高田浩吉
備考:松竹時代劇映画35周年記念、松竹グランドスコープ。

ネタバレあります


 「大」東京誕生、で、「大」江戸の鐘、ですか。なんかしつこいですね、このタイトル。でも物量作戦のワイド映画だし、金かかってんですよね、セットもロケも道具も火薬も。そんで二部構成になってます。

 風雲篇。

 時は幕末。公武合体の理想が潰えたロマンチストの徳川慶喜・芥川比呂志は、薩長連合から朝敵と呼ばれていることをとても苦にしていました。おかげで皇女和宮・山田五十鈴との面会もあっさりと断られてしまいます。小栗上野介・松本幸四郎は大政奉還には賛成しますが、後の明治天皇・市川染五郎を担ぎ出して錦の御旗を自称しちゃってる薩摩の西郷隆盛・島田正吾の強引なやり口は許せないので海軍の榎本武揚・山形勲とともに徹底抗戦を主張します。

 小栗は英国公使パークス・ハロルド・S・コンウェイに「日本の内戦だから干渉しないで欲しい」と頼みに行きます。薩長連合は小栗が幕府軍への加勢を頼みに行ったんだろうと、あわててパークスに抗議しますが小栗が立派な人物だとわかっているパークスは「このバカタレ!(もちろん英語)」と、彼らを叱責します。

 江戸城を無血開城することを主張していた勝海舟・高田浩吉と小栗は表向きは対立していましたが、小栗は武士の社会に殉じる覚悟だったので、将軍に罷免されたのをシオに、一人息子の又一・森美樹の面倒を勝に頼んで上州の田舎へ引っ込んでしまいます。

 開花篇。

 小栗の愛人で、かつて薩摩人に親兄弟を皆殺しにされたことがトラウマになっているお竜・瑳峨三智子が江戸へ進駐してきた薩摩軍の幹部の中に仇を見つけて刺し殺します。勝はお竜を助けるように西郷に依頼します。

 同じ頃、上州に攻め込んだ執念深いイナカモノである薩摩は、元抗戦派だったことに因縁をつけて小栗にテロの汚名を着せ、斬首しました。勝はこっちも助けて欲しいと頼みましたがダメでした。幕府軍についた又一は五稜郭の戦で負傷しますが、婚約者のさい子・高千穂ひづるの看病で助かります。

 大政は無事に奉還され江戸は東京と名を改めました。

 幕末の動乱を一気にまとめあげるのでかなり駆け足です。メインフレームは武士道に殉じる小栗上野介とリベラルな勝海舟の対比です。これに狂言まわしとしての小栗又一とエピソードとしてのお竜が絡んでいきますが、お互いの必然性があまりなくとってつけたような展開なので全体に平板な印象です。

 筆者は映画に出てる時の松本幸四郎(白鸚=人間国宝)を上手いと思ったことが一度もないんです。歌舞伎の時はいざ知らず、この人、マスクに特徴ないしいつもノーマルっていうか、華がないっていうか。映画俳優には技術じゃまかないきれない魅力が必要だと思ってるんですが、この人からは全然感じられないんですね。人柄は良さそうですけどね。

 松竹所属の俳優総動員ということですが実際は松竹歌舞伎や新劇、他社からの参加多数の混成軍。とはいえ、大きい名前の俳優さんが目白押しと言うのは歌舞伎の顔見世公演みたいで楽しいです、それだけで。

 江戸町火消しの統領、新門辰五郎・近衛十四郎はチャンバラがないのが悔しいですがきりりとした男っぷりの良さはさすがです、が、ただ惜しいのは江戸弁には全然聞えなかったことですね、近衛先生は新潟産ですから。そのへんを上手くカヴァーしたのが東京産の魚屋・澤村國太郎です。長門裕之と津川雅彦のお父さんですが、なるほど両方によく似てて笑えます、て言うか息子二人がお父さんの特徴を半分こしてるんですけど。

 没落貴族的なムードがハマリまくる芥川比呂志。神経質そうな横顔はまるでヨーロッパ貴族のようですね、神経病みの。元薩摩の卸用盗で今では勝海舟に心酔している若い武士、益満休之助・名和宏が他社の作品ではまず見られないほど(て言うか東映のですが)驚くほど爽やかなのも新鮮です。東映ではその押し出しの良さとノリの良さを買われてやくざ映画の幹部から変態までなんでもアリだった名和宏ですが松竹では、行儀良く真っ当な時代劇俳優として活躍してたわけですね。

 この映画では二組の親子共演が見られます。一つは山田五十鈴と瑳峨三智子、もう一つは松本幸四郎(当時)と市川染五郎(当時)。どちらも直接対面はなかったんですが、世代を超えた息の長い会社なんだなあというアピールになってんですね、結果的に。

2001年09月16日

【追記】

 

※本文中敬称略


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file updated : 2003-06-15