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女は夜化粧する


■公開:1961年

■制作:大映東京

■企画:

■監督:井上梅次

■助監:

■脚本:斎藤良輔

■原作:川口松太郎

■撮影:

■美術:

■音楽:

■主演:山本富士子

■備考:

ネタバレあります


 女郎が恋に身を焼けばあとは死ぬしかありません。

 赤貧の家庭で父親のこしらえた借金返済と、カワイイ弟・川畑愛光の進学費用を捻出するために、新劇女優の道をあきらめて「ギター芸者」つまり色物芸者として赤坂で売れっ子になった小峰登子・山本富士子は、建設会社の社長であり芸者の君太郎・岸正子という愛妾がいる橋田・森雅之に建設中のクラブの経営を任されます。

 当然、君太郎とその姐さん芸者の君代・村田知栄子は面白くないので、嫉妬の故に告げ口や悪口言いふらし作戦を展開しますが、登子はまったく相手にしません。しかも登子の商才は抜群で、フィリピン人バンドの生演奏とゴージャスなレビュー、そしてマダムである登子の華麗な衣装、と話題作りが上手かったので店は大繁盛します。

 そんなとき登子が女優だった頃に知り合った無名の作曲家、阿久津・川口浩が海外で作曲賞を受賞して凱旋帰国します。二人はかつて一晩だけお付き合いをしたことがあり、阿久津も登子もお互いに惹かれあっていたのですが生活のこともありなんとなく別れてしまったのでした。

 若い阿久津は一気にヒートアップしてしまい、クラシックの道を捨てて登子の店のジャズピアニストになります。阿久津の才能を惜しんだ、マネージャーの島村・多々良純や仲間の中井・田宮二郎は何度かチャンスを作って阿久津を呼び戻そうとしますが登子に夢中な阿久津はいつもすっぽかしてしまいます。

 しかし恩師の昌山先生・上原謙や、かつて女性のために音楽家の道を捨てた父親・清水将夫の説得に、阿久津の将来を心配した登子はついに別れを決心するのでした。

 山本富士子と森雅之が浮気するホテルの一室でスタンドライトつけたらイキナリ室内がピンク色になるという演出には気絶しそうになりましたが、さすがは分かりやすい演出が身上の井上梅次です。あと、派手なレビューシーンとか山本富士子にステージで歌謡曲を歌わせる(声がインチキ臭いんですがどうでしょうか?)ところもミュージカル大好きっ子の面目躍如でグー。

 赤坂と言えば「コパカバーナ」「コルドンブルー」「ニュー・ラテン・クォーター」「ミカド」など超高級レストランシアターのメッカです。「ミカド」と聞いてシリア・ポールがアシスタントをしていた「万国ビックリショー」を思い出す人は相当にキテる人です(歳バレますかね>筆者)あと「〜ラテン〜」で力道山を思い出す人も(ますます歳バレますね>筆者)。

 「夜に化粧するのは商売女」今時の能天気なテレビドラマ「お水の花道」の元祖、商売女とカタギ男のアンハッピーエンドなメロドラマです。

 で、この山本富士子のマダムがまたすごく良いんですね、本能剥き出しで。阿久津との仲が問題視されたときも「よってたかって私たちをイジメルなんて酷いわ!」とかなんとか自己陶酔していながらも、恋人の幼馴染のゆかり・叶順子の名前がちらっと出ると「ダレよ!その女!」と般若のような顔で睨みつけるのです。これだけやったら普通は腐れ縁の「ビッチ女」ですが、相手が山本富士子ですから、そんな失礼な事は絶対に言えません、思ってたって言わせない貫禄の勝利です。

 森雅之の俗物社用族も今、恋人と別れたばかりのヒロインに「嬉しいね(これで君をモノにできる)」とさり気に一言という、いかにもお子様厳禁の大人の世界のドラマだなあと思わせます。「女郎が恋に身を焼けばあとは死ぬしかない」というのは「歌麿・夢としりせば」における太夫の台詞ですが、この映画でも山本富士子は、万事ビジネスライクな人生を送るつもりで水商売の世界に入ったのに、恋で自分を見失いそうになります。

 川口浩のコンダクターぶりはちょっと難なので笑えますが、この人「スタジオはてんやわんや」で見せたマリンバ演奏を見る限り音楽の素養はあるんじゃないですかね。上原謙のソレがかなり決まってて「きゃあっ!レオポルド・ストコフスキーみたいっ!」と言うのはかなり贔屓ですけれども、上原謙は立教大学のオーケストラでトランペットやってたんですね、だから当然なんですけどね。

 このほかの出演者はホステスに水木麗子、現在はテレビタレントとして活躍している市田ひろみ目黒幸子

 山で遭難しかかる弟を探しに行く捜索隊の中にオリンピック選手で「ブルーバ」で和製ターザンだった浜口喜博がひょっこりと顔を出します。

2001年08月05日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-06-13