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怪談五十三次


■公開:1960年

■制作:第二東映

■企画:

■監督:内出好吉

■助監:

■脚本:結束信二

■原作:

■撮影:

■美術:

■音楽:

■主演:高田浩吉

■備考:

ネタバレあります


 江戸で有名な飛脚の老舗「江戸屋」は京都所司代青葉藩江戸屋敷の御用達。ところが連続して配達途中の荷が強奪される事件が発生し、主人の善兵衛・渡辺篤は平謝りで最後のチャンスを懇願、その配達役を長男の浩太・里見浩太郎が引き受けることになった。若いギャルにモテモテのアイドル・浩太を心配したパンピーの娘ども・三原有美子舟橋圭子上津原鮎子水木淳子富士薫光美智子三井京子と、浩太の妹のお咲・花園ひろみは浩太に黙って後を追う。

 江戸屋に雇われた浩助・高田浩吉と、青葉藩の江戸屋敷用人の木村弥左衛門・有馬宏治のはからいでやってきたヒゲ面の豪傑、大熊・坂東好太郎を従えて出発した浩太だったが、途中、青葉藩乗っ取りを企む江戸家老、三原弾正・原健策の配下にたびたび襲撃される。弾正に雇われた女スリのおえん・雪代敬子、おえんとはスリ業界のライバルで結果的に善玉の半次・品川隆二らも狙う荷の手紙は弾正の不正を所司代に密告する訴状だった。

 京に着く直前、弾正の命を受けた暗殺団・小林重四郎月形哲之介らと直接対決した浩太と浩助は離ればなれになってしまう。大熊と一緒になんとか所司代に辿り着いた浩太だったが、訴状を吟味したのは弾正とその一味。せっかく守り抜いた訴状と証拠の連判状が握りつぶされそうになったその時、所司代で江戸北町奉行、花咲備前守が姿を現した。

 お化け屋敷に飛びこんじゃったり、質屋一家惨殺の現場に出くわしたり「怪談」的な演出はあるがタイトルとは違って全体的にはお気楽道中モノである。

 結末は言わんでもわかると思うが、要するに浩助は身分と月代を隠して隠密してたってオチ。品川隆二がもうちっと活躍するかと思ったがただの軽薄なスリだった。ただし、豪傑はハッタリだったがとても善人だった大熊がクモを毛嫌いしたり、品川隆二の役名が「半次」だったりするのは「焼津の半次(または「花山大吉」)フリーク」としてはちょっとくすぐられるもんがある。

 浩太と浩助のコンビはこの後「幽霊五十三次」でも活躍する「歌の上手な若い衆」だが、当時24歳の里見浩太郎はともかく、御歳49歳の高田浩吉とのカップリングは無茶するなあ、って思うでしょ?でもあんまり嫌味な感じがしないのね。だって相手は万年青年なんだから。気が若いって大切なことだよな。でも2人並ぶとどう見ても親子か、師匠と弟子、または親戚の叔父さんと甥っ子。

 あまり後先を考えない東映が、当時の邦画配給収入のシェア50%ゲットを目指して創立した第二東映(後ニュー東映、1960〜1961)のトップスタアだった里見浩太郎の出演映画本数はとんでもなく多い。本家の東映製作のも含め、総数でも約150本だが、記録によれば58年27本、59年19本、60年24本、61年25本、とある。いずれも年間出演本数なので当時の東映の娯楽時代劇が「量産映画」と呼ばれるに相応しいものだったということが良くわかる。

 日本映画が、戦後の時代劇が最も幸福だった頃に活躍した若手の俳優の一人、それが里見浩太郎なのだ。今では嫌みったらしいくらいに風格を出そうとして、結果的にいつまでも「中堅」の雰囲気が抜けない里見浩太郎であるが、若手の頃のひたむきなズッコケ姿には他の俳優では出せないような清涼感があってとても好感が持てる。お子様時代劇でスタートした里見浩太郎が「歳とったら馬鹿馬鹿しくてこういうのはできないなあ」とでも思ってるだとしたらモッタイナイ話だ。歳とっても軽く爽やかでいてそれを世間に認知させてしまう「凄さ」を往年の高田浩吉を見て気がついてくれたら尊敬するんだがなあ。

2001年07月15日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-06-12