「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


にっぽんGメン二話 難船崎の血闘


■公開:1950年

■制作:東横京都、東映

■企画:

■監督:松田定次

■助監:

■脚本:比佐芳武

■原作:

■撮影:

■美術:

■音楽:

■主演:片岡千恵蔵

■備考:

ネタバレあります


 「にっぽんGメン」シリーズの第二作。タイトルに第二話とあるんだけど、第一作とは状況が全然違う。主演の片岡千恵蔵と市川右太衛門は大映から東映へ移籍、製作体制も東映は大映と縁切りして自社配給となっている。

 第一作はシリアス路線のちゃんとした現代劇だったが、片岡千恵蔵、市川右太衛門、大友柳太朗、月形龍之介、進藤英太郎、原健策という戦後東映娯楽時代劇の俳優がぞろぞろ出てきたもんだから、現代アクションの仮面を被った時代劇映画ってな感じになった。

 本作品の後援は海上保安庁。

 頻発する密輸事件に悩まされていた海保の重藤・市川右太衛門は、密輸組織の取引の手がかりをつかむために傍受された怪電波を頼りにスクランブルかける。

 密輸組織の実力者で、アル中気味だが凄腕の彌太郎・月形龍之介はフリーランスの海賊の仙三・進藤英太郎らに品物を横取りされて慌てたところを海保の巡視艇に発見される。あと一歩のところまで追い詰めた重藤だったが、身投げしたと思われる女を発見してしまい、そっちを救助している間に逃亡されてしまう。助けた女の名前はマリ・市川春代といい、バーのマダムをやっていたのだが、人身売買されそうになって必死で逃げて来たと言う。

 マリは軟弱な実業家、都筑・大友柳太郎(当時、後・大友柳太朗)の情婦だったが、最近、都筑はホステスのかおる・朝雲照代にご執心なのが面白くない。イキオイ、助けてくれた重藤にアタックしたくなったマリは偶然にも重藤とマリが兄妹だと知ってしまう。

 風来坊の政・片岡千恵蔵は密輸組織に用心棒として雇われた。彌太郎が商売のジャマをした仙三を殺してすぐその手下に刺殺されると、政は後釜を任せられた。密輸組織のボスは都筑だった。マリのチクリにより、かおるの正体を知った都筑が、政に命じて始末させようとしたその時、重藤の説得に折れて都筑の正体をバラそうとして撃たれたマリの証言でかけつけた警視庁と海保の一団が突入してくる。政は警視庁のGメンだった。

 無線技師の沼田曜一が突然「怪電波です!」と叫ぶのだが、それってアンタが発信してんじゃないの?とツッコミたくなるのは私だけ?

 第一作よりも娯楽性が超パワーアップした第二作。市川右太衛門と大友柳太朗が加わってその時代劇っぽさは全開だ。月形龍之介も「ジャコ万と鉄」を彷彿とさせる狂暴演技が凄すぎで不気味でいい感じ。

 ジオラマの特撮もあって金もかかってるし、大映の永田社長が娯楽映画と大スタアを軽視する発言をしたためにブチ切れて退社した両御大の移籍後の映画だから東映の力が入るのも当然か。

 映画の品質なんかこの際とやかく言わないが、この後の大映と東映のカラーの差が「Gメン」シリーズ二作を見れば一発で分かっちゃうってのは皮肉な話かも。

 市川右太衛門の満月のような目線の迫力と、きびきびとした動作の最中にほんのり漂うはんなりとした京都弁のギャップが象徴するように、この人の現代劇はあきらかに無理っぽい。それでも一生懸命やってるのがよく分かるし、ハンドガンを刀のように振り下ろして発射するその素人っぽさは腹立つというよりむしろ微笑ましいと感じられてしまう、そこいらへんが人徳ってことね。

 当時の大友柳太朗は脇役、敵役が多かったとはいえ、両御大や月形龍之介にならともかく、たかがそのへんのチンピラごときにすごまれて逃げ出すような男に見えるわけがなく、いくら眼鏡かけておとなしくしてても「刑事さん、こいつが黒幕です」って出たとたんに丸わかり。しかし悪役にもかかわらずその男っぷりの良さはどうよ?ボルサリーノ風の帽子が似合いまくりで、ペンシルストライプのスーツで悠然とソファに座って悪企みする姿を見てたら、このままハリウッドに殴り込んじゃえば?と思ったほど。

 前作では善玉だった加東大介がはしっこい悪の手先で、にこやかそうな顔立ちを逆手に取った曲者ぶりを発揮して上手い。同じく前作で悪玉だった原健策が今度は凛々しい海保の職員役で出演。密輸団が入り浸る地下の酒場のバーテンに日守新一、警視庁の刑事に徳大寺伸。カラミはなかったが「按摩とおんな」の名コンビが何気に再会しててちょっと楽しい。このほか、またまた悪役チームだったのは戸上城太郎

2001年07月15日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-06-12